インプラントが腫れるピークは?いつまで続くか、対策などを解説

インプラント治療を受けたいと思っていても、あごに人工物を埋めるとなると腫れるのでは?と不安に感じる人も少なくないのではないでしょうか。確かに腫れるリスクはあります。ただし手術直後の腫れはほとんどが自然な反応であり、徐々に治まります。悪化することはありません。
この記事では、インプラント治療における腫れについて解説します。そのほか、腫れを予防する方法などについてもまとめます。インプラントを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
- 手術直後に腫れる場合は、多くが正常な反応だが骨のやけどの可能性もある
- 治療完了後に腫れる場合は細菌による感染の可能性がある
- 腫れのピークは手術の翌日から2~3日で、1週間程度は続く
- 腫れを抑えるセルフケアとしては、処方通りに薬を飲む、血行を促進させすぎない、食べ物・飲み物に注意する、傷口を刺激しない、患部を適切に冷やす、口内を清潔に保つ
- 受診した方がよいケースは、熱・寒気・だるさがある、患部の違和感が強い、傷口が広がって見える、膿や口臭がある、腫れが引かない、痛みが消えない
インプラント手術後に腫れても異常とは限らない
インプラントの手術後に腫れたとしても、それは必ず異常のサインであるとは限りません。むしろほとんどの場合は正常な反応の場合だと言えます。まずは必ずしも異常とは言い切れない理由について解説します。
手術直後に腫れる理由
手術直後に腫れるのは多くの場合正常な反応です。傷口ができたときと同じように、手術で切開した部分を体が治そうとして腫れが起こります。傷ついた組織を修復するために白血球などが集まって血管が拡張することが、手術後に起こる腫れの原因です。
ただし、そのほか骨のやけど「オーバーヒート」のケースもあります。インプラント埋入時に使用するドリルの熱が骨に伝わりやけどを起こす場合です。その場合は速やかな対処が必要です。
治療完了後に腫れる理由
一定期間が過ぎてから腫れる場合は、細菌による感染が疑われます。細菌が組織に侵入すると、患部に血液を送るため血管が広がり血液の成分が周囲にあふれ出します。これが熱を持ち腫れにつながるのです。
くわしくは順に解説していきますが、細菌による感染は放置していても治ることはありません。場合によってはインプラントが脱落したり、全身が感染したりするリスクがあります。感染の可能性がある場合は、早急に受診することが求められます。
インプラントの腫れの期間は?
次に、手術のあとインプラントが腫れる期間やピークについて解説します。
腫れのピーク
腫れのピークは、手術後翌日から2~3日です。2~3日というのは、上で解説した治癒反応が起きる期間に該当します。ピークを過ぎると、腫れは徐々に引いていくのが一般的です。
なお手術の直後は腫れを自覚しづらいこともあります。直後は麻酔の効果が残っているためです。そのほか炎症もそれほどではないため、そもそもそれほど腫れないことも多くあります。
いつまで腫れるか
ピークを過ぎたあとも、目安として1週間程度は腫れが残ります。1週間ぐらいの腫れは正常だということです。心配する必要はありません。ただし体質による個人差や処置の内容などにより、期間にはある程度幅が生じます。
持病がある、高齢であるといったケースは長引く傾向があります。そのほか腫れの期間に影響する体質として挙げられるのは、アレルギー体質、冷え性などです。
処置の内容については、処置した本数が多い、骨造成を行ったなど、手術が大がかりになるほど腫れの期間も長くなる傾向があります。切開する場所が多くなったり手術の時間が長くなったりして、ダメージを受けやすくなるためです。
腫れが引かない場合
2週間以上腫れが引かない場合は、感染症が疑われます。速やかに受診することをおすすめします。放置しておくとトラブルが悪化するかもしれません。最悪の場合はインプラントが脱落することもあります。
とくに、痛みや熱、あるいは膿や異臭といった症状がある場合は医師に相談しましょう。くわしくは後述します。
腫れと痛み・内出血
腫れと同時に起こることが多いのが、痛みと内出血です。ここではその2つの症状について、腫れとの関連などを1つずつ解説します。
痛みの原因と期間
まず痛みから見ていきましょう。細菌に感染すると、体を守るため損傷した細胞から「炎症性メディエーター」と呼ばれる物質が放出されます。これが血管を拡張させ腫れの原因となるとともに、神経を刺激することで痛みを感じるのです。
痛みは腫れよりやや早くピークを迎えて治まっていきます。ピークは1~2日後、消えるのは3~7日が目安です。
痛みはその場所に注意を向け危険を知らせる信号として機能します。そのため、腫れ同様必ずしも悪いものではありません。ただし日常生活に支障をきたすこともあり、処方に従って痛み止めを飲んで対処しましょう。
内出血の原因と期間
ほほやあごなどの皮膚が内出血してあざができることもあります。手術中に切開したときに周囲の毛細血管や小血管を損傷すると、漏れた血液が皮膚の下に溜まってできるのがあざです。下あごの治療の場合や女性の場合に起こりやすい傾向があります。
赤紫→青紫→黄緑→黄色と変化しながら、そのままにしていても2~3週間で消えるのが一般的です。基本的には心配する必要はありません。
ただし強い痛みがある、治まらずむしろ大きくなっていくといった場合は、何らかのトラブルの可能性があります。痛みのほかにも何らかの不調を伴う場合は、歯科医に相談しましょう。
腫れ・痛み・内出血の関係
腫れと痛みは炎症反応が原因となって連動して生じるものですが、内出血が発生するのは血管の損傷が原因であり腫れとは別系統です。つまり腫れと内出血に直接の関係はありません。
ただしどれも大がかりな手術ほど出やすくなるといった共通点があるほか、お互いに関連し合う点もあります。内出血の血液が多いと腫れの原因になること、内出血の部位が圧迫されて痛みを感じることなどです。
腫れを抑えるためのセルフケア
次に、腫れを抑えるために自分でできるケア方法について解説します。主に、手術直後の腫れやすい時期に行うべきセルフケアです。
処方通りに薬を飲む
まず、薬は処方通りに飲みましょう。術前から処方されることもありますが、それは予防の意味を含んでいます。処方された薬の種類や飲むタイミング・回数には意味があります。腫れが出ている場合はもちろん、痛みや腫れがなくても処方通りに飲むことが大切です。結果的に後々の腫れの予防や軽減につながります。
逆に薬をきちんと飲まないと、抗菌剤は感染のリスクが高まる原因に、鎮痛剤は炎症や痛みにより治癒の妨げになる可能性があります。
血行を促進させすぎない
また、血行を促進させすぎないことも大切です。血行が良くなりすぎると、腫れや出血が悪化する可能性があるためです。手術後2~3日は、激しい運動、長時間の入浴やサウナ、飲酒などは避けるようにしましょう。
ただし血行が悪くなることも骨の結合や治癒に悪影響となります。喫煙や患部の冷やしすぎなど、血の巡りが悪くなる行為も避ける必要があります。
食べ物・飲み物に注意する
食べ物や飲み物にも注意が必要です。傷口を刺激しないようにすることが大切ですが、食べ物や飲み物によっては傷口を刺激する可能性があるためです。硬い食べ物、辛い食べ物、熱すぎる食べ物や飲み物、酸味の強すぎる食べ物や飲み物などは控えましょう。
冷たい食べ物や飲み物は手術直後に熱を冷ますのに適していますが、翌日以降は血行を悪くする可能性もあります。直後だけにとどめ、それ以降は常温か温かい温度のものを口にするようにしましょう。
傷口を刺激しない
物理的に傷口を刺激することも避けましょう。傷口がふさがるのを阻害してしまうためです。傷口の治癒が遅れると、細菌に感染したり骨の結合がうまく行かなくなるリスクが高まります。最悪の場合はインプラントの脱落につながります。
気になるかもしれませんが、舌や指で触る、強くうがい・歯磨きする、患部側で咀嚼するなどの行為はしないようにしましょう。1週間~10日程度は注意を続けるようにしてください。
患部を適切に冷やす
患部を適切に冷やすことも腫れが悪化するのを予防するのに有効です。患部の外側から濡れタオルを軽く押し当てて冷やします。1回につき10~15分程度、30分から1時間の間隔をあけて行います。連続して長時間冷やしすぎないようにしてください。
氷を使うのは口の中だけでなく外からでも避けた方がよいでしょう。冷やしすぎにつながり、結合を妨げる恐れがあるためです。どうしても使いたい場合は、直接肌に当てずタオルに包みましょう。
期間については、炎症の反応が強い2日目ぐらいまでが目安です。ピークが治まった後に冷やすと、むしろ血流が悪くなり治癒にマイナスとなり逆効果です。
口内を清潔に保つ
腫れを防ぐためには口内を清潔に保つことも重要です。細菌を増やさないことで、感染による腫れのリスクを減らすことができるためです。
ただし口内を清潔にする行為であっても、傷口がふさがる妨げとなってはいけません。うがいを中心に、患部を刺激しないよう注意しながら洗浄しましょう。手術部位以外は歯磨きも問題ありません。ただし患部やその周辺は避けるようにしてください。
受診した方がよいケース
多くの場合、腫れは正常な反応ですが、受診した方がよいケースもあります。ここではトラブルが疑われる受診すべきケースについて見ていきましょう。以下のケースに当てはまる場合、術後感染やインプラント周囲炎のほか、傷口のトラブル、拒絶反応、神経損傷などの可能性があります。
熱・寒気・だるさがある
まず、熱・寒気・だるさがある場合です。これらの症状があるときは、術後感染している可能性があります。感染により免疫細胞が反応すると、防御反応として熱が出ます。免疫が機能しているということで正常な反応ではありますが、感染していること自体が原因です。その点で大きな問題だと言えます。
37.5度〜38度以上の発熱や寒気・体のだるさがある場合、あるいは口が開かないなど違和感・異常がある場合は歯科医に相談しましょう。これらは全身が感染している可能性があり、早急な対応が必要です。場合によっては歯科医ではなく内科や感染症内科を受診しなければならないこともあります。
患部の違和感が強い、傷口が広がって見える
患部の違和感が強い、傷口が広がって見える場合も受診するようにしましょう。縫合部分が開いてしまっている恐れがあるためです。正常なら縫合部分は糸できれいに寄せられており、かさぶた状の固まりができています。正常な免疫反応として、歯肉に赤みや軽い腫れもあります。しかし縫合糸が切れたり外れたりしている、縫合部にすき間ができているといった場合は要注意です。
傷口が開いてしまったまま放置すると、細菌感染のリスクが高まるほか食べかすなどによる炎症、治癒の遅れなどのリスクもあります。さらに、インプラント体が露出してしまうとインプラント体が汚染されてしまい骨結合を阻害することもあります。
膿や口臭がある
膿や口臭がある場合も速やかに受診してください。術後感染、インプラント周囲炎の可能性があります。
膿は白血球が細菌を分解している最中や分解し終えたときに生じます。免疫が機能している表れではありますが、膿が感染源になることもあります。感染すると自然に治ることはありません。早急に受診することが求められます。
腫れが引かない
腫れが引かない場合も受診が必要です。術後感染のほか、体がインプラントを異物と認識して拒絶反応が起きている可能性もあります。拒絶反応の場合、インプラントが脱落するおそれもあります。
すでに解説した通り、個人差があるものの一般的には1週間程度で腫れは引きます。2週間を過ぎても腫れが引かないなら歯科医に連絡しましょう。
痛みが消えない
痛みが消えない場合も受診しましょう。感染のほか、神経損傷のおそれがあります。神経損傷は時間が経つほど回復が困難になってしまいます。早急に受診することが求められます。
3~4日経っているのに痛み止めを飲んでも効かない、痛みが強くなる、しびれや麻痺を伴うといった場合は、すぐに歯科医に連絡してください。感染などのトラブルが原因だと考えられます。軽い痛みでも10日~2週間以上続く場合は同様です。何らかのトラブルがあるかもしれません。
腫れの程度が強くなるケース
次に、腫れの程度が強くなりやすいケースについてまとめます。腫れやすいケースを理解しておくことで、不安感を感じずに済むでしょう。すでに解説したセルフケアを意識的に行い、腫れを抑えるようとくに注意することをお勧めします。
埋入した本数が多い
まず、埋入した本数が多い場合が挙げられます。埋入する本数が多いと、切開する部分も面積が広くなります。そのぶん回復のため多くの血液が送り込まれ、腫れやすくなるのです。また内出血が広い範囲に出やすい傾向もあります。
インプラントの本数が多いと配慮すべき場所も多くなり、歯磨きなど口内の衛生を保つのがとくに難しくなります。傷口に触れない範囲は歯磨きを使用しつつ、うがい薬を活用しましょう。
骨造成などを行った
骨造成などを行った場合も腫れがひどくなりやすい傾向があります。切開する範囲や歯肉を骨から剥離する範囲が広くなり、体の負担となる侵襲が大きくなるためです。そのほか手術時間の長さが原因となったり、骨補填材などへの異物反応が起こったりして腫れることもあります。
上あごに骨造成を行った場合は、とくに余計な圧力をかけないよう意識することが大切です。くしゃみは口を開けて行う、強く鼻をかまない、ストローを使わないなど意識しましょう。また上あごに限らず、骨造成を行った場合は喫煙は厳禁です。骨結合の成功率を著しく下げてしまうためです。
持病が影響している
持病が影響して腫れがひどくなることもあります。具体的には、糖尿病や高血圧、血友病などの持病がある場合です。それぞれ腫れやすくなる原因としては、糖尿病は免疫が低下しやすいこと、高血圧は術中・術後の血液量が増えやすいこと、血友病は内出血すると止まりにくいことが挙げられます。
後ほど解説するように、持病は治療を受ける前に申告することが大切です。
そのほか体質による個人差により腫れがひどくなることもあります。
術後感染してしまった
手術中や手術後に細菌感染してしまった場合も腫れが悪化します。傷口から細菌が侵入して感染したケースです。
手術中に細菌感染することもありますが、術後ケア不足や喫煙が原因になることもあります。いずれにせよ、受診すべきケースで解説したような症状があり術後感染が疑われる場合は、早急に歯科医に連絡しましょう。
インプラント周囲炎になっている
インプラント周囲炎になっている場合も腫れがひどくなります。口腔内の歯周病菌に感染すると、炎症を起こしてしまいます。
不十分なブラッシング、喫煙、糖尿病、過去の歯周病の既往などが主な原因です。原因からもわかるように、手術直後というよりも治療が終わってからリスクが存在し続けます。予防のためには、日常的なセルフケアや定期的なメンテナンスが重要です。
術前にできる腫れ予防の準備
腫れ予防となる準備の中には、術前にできるものがあります。ここではそういった術前にできる方法を解説します。どれも自分で行うことのできる方法です。順に見ていきましょう。
体調管理と十分な睡眠
まず1つめの方法は、体調管理を行いじゅうぶんに睡眠を取ることです。睡眠中は免疫細胞の働きが活性化して病原体を攻撃する準備が整います。免疫機能が高まるということです。免疫機能を高めることで感染を防げるようになり、腫れ・炎症の悪化を抑制できます。そのほか、休息による早期回復も期待できます。
逆に睡眠不足は免疫細胞を減少させるおそれがあります。7時間以上睡眠を取ることが理想です。まとまった睡眠時間を確保するのが難しいときは、短い仮眠を取ったり睡眠の質を深めたりするなどの工夫をしましょう。
禁煙・節酒の心がけ
禁煙・節酒の心がけも不可欠です。腫れにとどまらず、手術の成功率を大きく左右します。
喫煙は免疫機能の低下につながるため、腫れのリスクを著しく高めます。そのほか骨の結合にも悪影響となり、インプラントが安定しなくなることもあります。インプラント治療には禁煙は不可欠です。
飲酒は血流を促進するため、腫れやすくなる原因となります。飲酒を控えることは、血行が良くなりすぎるのを抑えます。また過度の飲酒は免疫にも悪い影響を及ぼします。手術が失敗に終わるリスクを低減するためにも節酒は不可欠です。
服用中の薬・持病の事前申告
服用している薬や持病がある場合は、必ず事前に申告しましょう。腫れだけでなく治療の失敗のリスクを抑えることにつながります。
高血圧・心臓疾患の薬である抗凝固薬・抗血小板薬には、出血が止まりにくくなる作用があります。骨粗しょう症のビスフォスフォネート製剤は、骨の代謝を抑制し腫れが長引きやすくなる薬です。ステロイド薬を長期服用している場合は、免疫低下などにより感染や炎症が長引くリスクが高まります。またリスクを高める持病としては、高血圧・糖尿病などが挙げられます。
いずれにせよ、何がどう影響するかは専門家以外にはわかりづらいものです。薬や持病は自己判断せずすべて伝えた方が確実です。
栄養バランスのよい食事
栄養バランスのよい食事も腫れの対策につながります。栄養の中には腫れの抑制につながるものもあり、栄養バランスのよい食事を取ることで腫れの抑制が期待できます。
腫れの抑制には、オメガ3脂肪酸、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、マグネシウム・カリウム、タンパク質などの栄養が効果的です。肉・魚・野菜など偏りなく食べるようにしましょう。
術後で噛むのが難しい場合、食欲が落ちている場合などはサプリメントを利用する選択肢もありますが、できれば食事から栄養を摂取するのが理想です。また腫れに効果があっても出血リスクを高めるなど別の面で悪影響がある栄養もあります。過剰摂取を避けるためにも、サプリメントは補助的なものと考えましょう。
手術前後のスケジュール調整
手術前後のスケジュールを調整しておくことも、腫れが悪化するのを防いだり早期回復につなげたりするのに役立ちます。具体的には、炎症のピークに無理をしない、しっかり休息を取る、睡眠を確保するなどが挙げられます。血圧・血流の安定のほか、ストレス軽減にもなります。
術後1~2日は休息を取り、3~4日は腫れのピークとなるので人に会う予定を避けるのが理想です。その後は徐々に復帰していくので、徐々に活動量を増やしていくことができます。手術日を金曜や休日の前日に設定すると、理想に近づけやすいでしょう。
歯科医が行う腫れの予防法
次に、自分ではできませんが歯科医が行う腫れの予防法についても紹介しておきます。歯科医がどのようなことを行っているか理解することで、セルフケアの理解にも役立つでしょう。順に解説していきます。
切開や剥離を最小限にする
まず、切開・剥離範囲を必要最小限にとどめることが挙げられます。傷口や血管・組織へのダメージを減らし、術後の腫れ・痛み・出血を抑えることにつながるためです。
術前のCTシミュレーションやサージカルガイドを活用することで、低侵襲で正確な埋入位置を把握できます。また骨膜の剥離範囲を小さく抑えることで、骨への血流障害や術後反応を最小化することが可能です。
術前から抗生物質を処方する
術前から抗生物質を処方するのも予防になります。手術はあごの骨にメスを入れるため、口腔内の細菌が侵入する可能性があります。そこで感染予防として抗生物質が用いられるのです。感染による炎症・腫れがひどくなるリスクを抗生物質により下げることができます。
一般的な回数・期間は、術前に1回、術後に数日〜1週間程度です。患者様の健康状態や骨造成の有無など手術内容により薬剤の種類や期間を調整します。耐性菌のリスクもあるため、必要最小限・適量での処方が重要です。
止血処理を確実に行う
止血処理を確実に行うことも腫れの悪化を防ぎます。術中・術後に出血を確実にコントロールすることで、皮下や粘膜下に血が溜まるのを防いで内出血や腫れの悪化を抑えることにつながります。
縫合により傷口を密着させる、ガーゼにより圧迫止血する、必要に応じて止血剤を使用するといったことが基本です。抗凝固薬を服用中の患者様には、特にていねいな局所止血処置が求められます。そのほか、患者様に帰宅後のガーゼ圧迫の方法や注意点を具体的に指導することも行われます。
持病や生活習慣を事前に確認する
持病や生活習慣を事前に確認することも、手術の失敗や腫れのリスクを下げることにつながります。
糖尿病・心疾患・骨粗鬆症・血液疾患などの持病は、感染リスクや出血傾向・創傷治癒に影響します。事前確認が必須です。服用中の薬(抗凝固薬、ビスフォスフォネート製剤など)を「お薬手帳」で確認し、必要に応じて主治医と連携することも重要です。
喫煙・飲酒などの生活習慣も術後の腫れや治癒に大きく影響します。術前の禁煙・節酒指導を行うことも治療の安全性・確実性を高めます。
腫れている期間の生活への影響と対処法
続いて、腫れている期間の生活への影響と対処法についてまとめます。
仕事・学校など人前に出る予定の調整
仕事や学校など人前に出る予定は、可能な範囲で調整するとよいでしょう。
腫れのピークは術後2〜3日のため、その間は休暇を取得して自宅で安静に過ごすのが理想です。また重要な会議・プレゼン・商談・面接、写真撮影を伴うイベントは術後1〜2週間ほど避けるよう調整したいところです。
手術日を金曜日や休日前に設定すると、休みの間安静にすることができて仕事への影響を最小化できます。また骨造成を伴う場合は腫れが長引くため、1週間以上の余裕を持ったスケジュール調整が望ましいと言えます。
マスクなどで見た目をカバーする工夫
見た目をカバーするには、マスクなどを利用しましょう。
不織布マスクや立体マスクで頬から顎のラインを自然に覆うことで、腫れや内出血を目立たせなくできます。内出血(あざ)は黄〜緑〜紫に色が変化するため、コンシーラーやファンデーションで色味をカバーする方法も有効です。
季節にもよりますが、マフラーやストール・ハイネックの服など首回りを覆うアイテムを使うと下顎手術後の腫れも自然にカバーできます。
そのほか髪型を下ろす、サングラスをかけるなど顔の輪郭から視線を逸らす工夫も効果的です。
食事や会話のしづらさへの対応
食事や会話のしづらさにも対応が必要です。
食事については、術後数日はおかゆ・スープ・茶碗蒸し・ヨーグルトなど柔らかく刺激の少ない食べ物を選びましょう。さらに、熱いもの、辛いもの、硬いもの、酸味の強いものは患部を刺激してしまいます。ぬるめ・薄味・柔らかい食品を中心にしましょう。
患部と反対側で噛むこともポイントです。さらにストロー使用は圧力で血餅(「けっぺい」かさぶたのこと)が剥がれる恐れがあります。ストローは避け、コップから直接飲むようにしてください。
会話については、長時間の電話や会議は避け、必要時はメールや書面で対応すると負担が少なくなります。話すために口を大きく開けて傷口に負担がかかるのを減らせるためです。
運動・入浴・睡眠時の注意点
運動や入浴・睡眠についての注意点もあります。いずれも血流にかかわります。
まず激しい運動は術後3〜7日は控え、軽い散歩程度から再開するようにしましょう。運動は血流を促進し腫れや出血を悪化させるためです。
入浴については、当日は避けて術後2〜3日はぬるめのシャワーのみとしてください。湯船に浸かるのは腫れが落ち着いてからにしましょう。入浴は運動と同じく血流を促進するためです。
睡眠時は枕を高くして頭を心臓より高い位置に保つのがおすすめです。患部の血流うっ滞を防ぎ、腫れを軽減できます。また、仰向けあるいは反対側を下にして寝る姿勢を心がけてください。手術側を下にして寝ると患部を圧迫するためです。
腫れリスクを抑える歯科医院・歯科医師の選び方
最後に、腫れリスクを抑える歯科医院や歯科医師の選び方についてまとめます。どのポイントも、事前の相談時に直接質問・チェックしたり、ホームページや口コミなどで確認したりできます。
経験と症例数を確認する
まず、経験と症例数を確認しましょう。経験が豊富だと、治療の技術が高くリスクが少ないと期待できるためです。また万が一の場合の対応力が高いとも想定されます。
具体的な技術や対応については口コミのチェックがわかりやすいでしょう。ただし口コミは参考程度にとどめておくことも大切です。悪意のある口コミが紛れ込んでいる可能性があるほか、そもそも不満を感じたときに口コミを書き込む人が多いため批判的な意見が多くなりがちです。
まとまった数の口コミがあり、内容に共通点がある場合は信頼度が高まりますが、それでも相性などもあります。あまり鵜呑みにせず、幅広く情報を集めて検討しましょう。
歯科用CTや滅菌設備の充実度をチェックする
また、歯科用CTや滅菌設備の充実度もチェックしましょう。歯科用CTを完備していると、神経や血管を避けた正確な埋入計画を現実に行うことが可能です。その結果、不要な組織損傷による腫れを予防できます。
また滅菌設備が充実していれば術後感染のおそれが少なくなり、やはり腫れのリスク低減につながります。
採用している術式や使用機器を確認する
採用している術式や使用機器も確認してみましょう。
低侵襲な術式を採用しているかどうかで切開・剥離の範囲が変わり、それに伴い腫れの程度も大きく異なってきます。また超音波切削器具があると、軟組織への負担や術後の炎症反応を軽減できます。
さらにサージカルガイドの使用は手術時間の短縮と侵襲の低減につながり、術後の腫れを抑えることが可能です。そのほか、創傷治癒を促進し腫れの早期回復が期待できる設備もあります。
術後のフォロー・トラブル対応体制
設備のハード面だけでなく、術後のフォローやトラブル対応の体制も要確認です。
術後の対応がしっかりしていれば、腫れた場合もしっかりしたケアが期待できて安心です。迅速な対応体制のもとなら悪化する前に対処してもらうことができるでしょう。
電話の相談に随時応じてくれるだけでも安心感が高まります。不安がある場合も患部の写真を送るだけで、状態をチェックしてアドバイスしてくれる歯科医もあります。近年はLINEやメールの相談に対応しているケースも増えてきました。ホームページなどで確認してみるとよいでしょう。
カウンセリングで不安を相談できるか
カウンセリングで不安を相談できるかも大切です。不安を相談することで誠実な答えが得られるのなら、安心感を持って治療を受けることができるでしょう。コミュニケーションが取りやすいほど気になる症状なども伝えやすく、リスクを早期発見することにもつながります。
インプラントは手術が終わっても歯科医との関係が続きます。対応に安心感があるかどうかは、将来的に通い続けることができるかどうかにもかかわるポイントです。
インプラントの腫れについてよくある質問
インプラントの腫れについてよくある質問と回答をまとめました。
インプラント手術後に腫れるのは異常ですか?
多くの場合、正常な反応です。手術で切開した部分を治そうとして、白血球が集まり血管が拡張することで腫れが生じます。ただし、手術直後に強く腫れる場合は骨のやけど(オーバーヒート)、一定期間後の腫れは細菌感染の可能性もあるため、症状の経過には注意が必要です。
腫れのピークと続く期間はどれくらいですか?
腫れのピークは手術翌日から2〜3日で、その後は徐々に引いていきます。一般的には1週間程度で落ち着くのが目安ですが、体質や処置内容により個人差があります。2週間以上腫れが引かない場合は、感染症や拒絶反応の可能性があるため、速やかに受診することをおすすめします。
患部を冷やすときの正しい方法は?
濡れタオルを患部の外側から軽く押し当て、10〜15分程度冷やします。30分〜1時間の間隔をあけて繰り返してください。長時間の連続冷却や氷を直接当てるのは避けましょう。冷却が効果的なのは炎症反応が強い術後2日目までで、それ以降に冷やすと血流が悪くなり逆効果となります。
腫れを抑えるための食事で気をつけることは?
硬い食べ物、辛い食べ物、熱すぎる/酸味の強い食べ物や飲み物は傷口を刺激するため避けましょう。冷たいものは手術直後の熱冷ましに適していますが、翌日以降は血行を悪くするおそれがあります。常温か温かい温度のものを選び、患部と反対側で噛むようにしてください。ストローの使用も避けましょう。
受診した方がよいのはどのような症状の場合ですか?
37.5〜38度以上の発熱・寒気・だるさ、患部の強い違和感、傷口が広がって見える、膿や口臭がある、2週間以上腫れが引かない、痛み止めが効かない・痛みが強くなる、しびれや麻痺を伴うといった症状がある場合は速やかに受診してください。術後感染や神経損傷などの可能性があります。
インプラントの腫れはこわくない
インプラントの治療で腫れてしまうことに不安を感じるかもしれませんが、この記事で解説したようにほとんどの腫れは正常な反応であり自然に治まります。トラブルによる腫れも、事前に予防したり術後に気を付けたりすることでリスクを低減することができます。腫れについては心配しすぎる必要はありません。安心してください。
それでも何か不安な点がある場合などは、東京都杉並区の私ども高田歯科クリニックにご相談ください。またセカンドオピニオンを求めている場合もお気軽にご連絡ください。いずれの場合も、専門家の視点から客観的な意見をお話いたします。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2026年5月19日








