インプラント治療を受けるベストな時期は?抜歯後の埋入時期も解説
歯を失ったままにしておくと、歯並びや噛み合わせなどが変わってしまい、口腔内や全身状態へのトラブルに繋がりかねません。そのため、歯を失った後は入れ歯やブリッジ、インプラントなど、何かしら歯を補う治療を受ける必要があります。
今回の記事ではインプラントに着目し、インプラント治療を受けるベストな時期や抜歯後の埋入時期について詳しく解説します。
抜歯しなければならない状況になった場合に適切な判断ができるよう、ぜひ参考にしてください。
この記事で分かること
- 虫歯や外的要因による抜歯や先天的に歯が欠如している場合にインプラントが最適
- インプラントを受ける時期はできるだけ早めが理想(患者様の状態によって個人差あり)
- インプラント治療には「抜歯即時埋入法」と「抜歯待時埋入法」の2種類がある
- 抜歯即時埋入法は、抜歯と同時にインプラントの埋入を行う治療法。治療期間が短い、骨吸収を防げる、外科手術が1回で済む、見た目を維持できるなどのメリットがある
- 抜歯待時埋入法は、抜歯後通常2~3ヶ月ほど歯ぐきや骨の治癒を待ってからインプラントを埋入する方法。インプラントが安定しやすい、感染症リスクを抑えられるなどのメリットがある
- インプラント治療を受ける前には、通院や支払い、健康状態などについて事前に考える必要がある
インプラントが最適な症例
歯を失ってしまった場合、歯を補うための治療法の一つとして挙げられるのがインプラントです。インプラントは審美性や機能性が優れていることから、この治療法を選ぶ方も増えてきました。
ここでは、インプラントが最適な症例について解説します。それぞれの状況に応じて、インプラント治療のメリットや注意点を知っておくことで、より適切な治療選択ができるようになります。
歯周病や虫歯で歯を失ったとき
歯周病は重度になると歯を支える骨を溶かし、最悪の場合抜け落ちることもあります。また、虫歯は進行すると神経にまで到達し、残すことが難しいと判断され、抜歯しなければなりません。
抜歯後は歯を補うために、入れ歯やブリッジ、インプラントの3つから治療を選択することになりますが、インプラントは周りの歯を傷つけることなく、天然歯とほとんど変わらない見た目や機能を回復させることのできる魅力的な治療といえるでしょう。
ただし、外科手術を伴い、治療費や治療期間がかかることも理解しておく必要があります。
事故やケガなどにより歯の根っこが折れた・歯を失ったとき
事故やスポーツでの接触、転倒など外傷によって歯が抜けたり、歯の根っこが折れることがあります。歯の根の部分が縦に割れる「歯根破折」は、そのままにしておくと根の部分の感染や炎症を引き起こすため、多くの場合すみやかに抜歯しなければなりません。
その後の治療としてインプラントは非常に有効で、折れた歯や抜けた部位に人工歯根を入れることで、見た目だけでなく機能面も従来どおりに回復できます。特に周囲の歯を削りたくない方や、入れ歯の装着に抵抗がある方にもおすすめです。
インプラントによる治療はしっかりと骨で固定されるため、噛む力も強く、日常生活への早期復帰が期待できるでしょう。ただし、交通事故などで顎の骨も損傷している場合は、骨の回復や再建治療が先に必要になることもあります。
生まれつき歯が足りない場合(先天性欠如歯)
先天性欠如歯は、生まれつき歯が形成されない、あるいは本数が少ない状態で、生涯にわたって見た目や噛み合わせに大きな影響を与えることがあります。
例えば、乳歯は生えていたものの、永久歯が作られないまま成長し、歯が抜けた後も欠損が残るケースがこれにあたります。このような症例では、ブリッジや入れ歯による治療も選択肢になりますが、特に成長後の患者様であれば、インプラント治療がより自然な見た目としっかりした噛み心地を得られる方法といえるでしょう。
ただし、骨の成長や発育状態をしっかり見極めてから治療を始める必要があり、専門医のもとで計画的に治療時期を決める必要があります。先天的に歯が少ない場合、周囲の歯や骨のコンディションを調整することも大切なポイントとなります。
インプラント治療を受けるベストな時期
インプラント治療を検討している方にとって、治療を始めるベストなタイミングはとても重要なポイントです。
ここでは、インプラント治療を受けるベストな時期やその理由について詳しく解説します。
歯を失ってすぐのタイミングが理想とその理由
歯を失った直後は、顎の骨にまだ十分な厚みや高さが保たれているため、インプラント治療の成功率が高まりやすいのが特徴です。というのも、歯の喪失後は骨が刺激を失うことで骨吸収がはじまり、時間が経つほど骨がどんどんやせてしまうからです。
そのため、抜歯後すぐの段階、特に抜歯後4週~8週間以内であれば、骨の状態が比較的良好でインプラントを埋め込むのに適した環境が整いやすいでしょう。
また、失った歯のスペースに隣接した歯が倒れこんだり、上下の歯がずれて噛み合わせが悪くなったりといった問題も早期治療で防ぐことができます。見た目だけでなく、かみ合わせや将来的な口腔内の健康維持のためにも、歯を失ったらできるだけ早めに専門医へ相談することが理想的です。
口腔内・健康状態によってはすぐに受けられない場合もある
インプラント治療は、すぐに始めるのが望ましいと言われていますが、すべての人がすぐに治療を受けられるわけではありません。たとえば、歯周病が進行している場合は、まず歯周病治療を優先し、口腔内の環境を整える必要があります。
歯周病を改善しないままインプラントを埋入すると、インプラント周囲炎という深刻なトラブルのリスクが高まります。また、全身疾患・持病がある場合は、傷の治癒が遅れたり、感染症を発症する危険性もあるかもしれません。
そのため、全身疾患がある方や口腔環境に問題がある方は、必要な治療をまず済ませ、十分に主治医と連携を取りながらインプラント治療のタイミングを慎重に見極めるようにしましょう。適切な時期に適切な準備をすることで、インプラント治療の安全性・成功率を高めることができます。
インプラントの最適な埋入時期とは
インプラント治療において、歯を抜いた後のインプラント埋入時期は患者様の状況や口腔内の条件によって最適なタイミングが異なります。
主に下記の2つの方法があります。
- 抜歯即時埋入法
- 抜歯待時埋入法
ここでは、それぞれの方法について詳しく解説し、インプラント治療を検討している方に役立つ知識をお伝えします。
抜歯即時埋入法
抜歯即時埋入法は、抜歯と同時にインプラントを埋入する治療法です。この方法を選択する場合、抜歯した部分に感染や炎症がないこと、さらに骨量や骨質が十分であることなど、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
特に、上顎の前歯のように審美的な面が重視される部位や骨吸収が起こりやすい場所で行われることが多いです。また、インプラントを初期固定(埋入後、骨とインプラント体が結合し安定すること)できるかどうかも重要な判断基準となります。
抜歯即時埋入法のメリット
抜歯即時埋入法は抜歯と同時にインプラントを埋入するため、治療期間を大幅に短縮できる点が大きなメリットです。また、骨が吸収される前にインプラントが入ることで骨の維持が期待できること、外科手術が1回となり患者様の精神的・肉体的な負担も軽減できることなども魅力です。
さらに、抜歯直後の自然治癒力を活かして傷口の回復を早めたり、早く歯が入ることで見た目に支障がなくなったりと、日常生活への影響を最小限に抑えることができるでしょう。特に前歯部では、歯肉下がりの予防や審美性の保持にも効果的です。
抜歯即時埋入法のデメリット
一方で抜歯即時埋入法は、適応症例が限られるうえ、手術の難易度が高いというデメリットがあります。まず1つ目は、インプラントを埋入する部分やその周囲に感染や骨の大きな欠損がある場合、また骨の厚みや量が不十分な場合は、この方法が適用できません。
次に2つ目として、高度な技術と豊富な経験を持つ歯科医師が必要なため、治療ができる歯科医院が限られます。3つ目として、細菌感染が発生した場合にはインプラントと骨の結合にトラブルが起きる可能性もあります。
抜歯待時埋入法
抜歯待時埋入法は、抜歯をした後、通常2~3ヶ月ほど歯ぐきや骨の治癒を待ってからインプラントを埋入する方法です。抜歯後に治癒期間を設けることで、感染や炎症があった部位の回復や骨の再生治療など、土台をしっかり整えることができます。
そのため、骨量が不足している場合や感染リスクが高い場合にも幅広く対応が可能。インプラントの適応範囲を広げ、より安全に治療が進められる方法といえます。
抜歯待時埋入法のメリット
抜歯待時埋入法では、抜歯窩(抜歯したことによりできた穴)がしっかりと回復するのを待ち、必要に応じて骨再生治療などの補助手術を受けることで、インプラント治療の安全性・確実性を高めることができます。
また、初期固定が得られやすく、インプラントが安定しやすいのもメリットです。感染リスクも低く抑えられるため、歯周病などが原因で歯を失った場合や骨量が不十分な場合にも安心して治療を進められるでしょう。
抜歯待時埋入法のデメリット
抜歯待時埋入法のデメリットは、治療期間が長くなる点です。抜歯後の治癒期間とインプラントの治癒期間が別々になるため、治療全体で半年~1年程度かかることも珍しくありません。
また、外科手術が2回以上必要となり、患者様の精神的・肉体的な負担が増します。特に治療期間中、歯が欠損した状態が続くため、見た目が気になることもあるでしょう。ただし、前歯部であれば仮歯を装着して審美性を補うことがほとんどです。
インプラント治療を受ける前に考えておくこと
インプラント治療は、失った歯を補うための有効な治療法ですが、自分にとって最適な治療かどうかを見極めるためにも、事前に様々な点をしっかり考える必要があります。
納得した上で治療を始めることが、長期的な満足と健康にもつながるため、主に以下の点を自分に問いかけ、インプラント治療を受けるかどうかを判断しましょう。
定期的な通院ができるか
インプラント治療後はセルフケアだけでなく、歯科医院での定期的な検診やクリーニングが欠かせません。治療を始めた後も、数か月に一度のペースで通院し、インプラントの状態をチェックしたり専門的な清掃を受けたりすることで、トラブルの早期発見や予防が可能となります。
はじめのうちは1〜3か月に1回、その後状態が安定すれば3〜6か月に1回といった頻度で通院が求められます。定期的な通院がインプラントを長持ちさせる鍵を握っているため、必ず通うことを忘れないようにしましょう。
治療費の支払いは可能か
インプラント治療は自由診療であるため、基本的に全額自己負担となります。一般的な費用の目安は1本あたり30万~50万円程度ですが、使用する素材や治療の難易度によって変動する場合もあります。
安価な治療を訴求する歯科医院もありますが、品質やアフターケアが不足している場合もあるため、値段だけで選ぶことは避けましょう。また、多くの歯科医院では分割払いやクレジットカード、デンタルローンなどさまざまな支払い方法にも対応しているため、自分の支払い計画に合わせて選択することをおすすめします。
治療費の見積もりや支払い条件については、治療開始前に歯科医院へ確認しましょう。
セルフケアがしっかりできるか
インプラント治療後は、天然歯と同様、毎日のセルフケアがとても重要です。歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスなどを使い、隅々までしっかりと清掃しなければなりません。
セルフケアを怠ると、歯ぐきに炎症が起きやすくなり、インプラント周囲炎や歯周病のリスクが高まります。場合によっては短期間でインプラントのやり直しが必要になったり、口臭や全身の健康にも悪影響を及ぼしたりします。
毎日きちんと自己管理ができるかどうか、自信がない場合はインプラント以外の治療法も検討するようにしましょう。
健康状態は良いか(全身疾患の場合は相談要)
インプラント治療は体調や持病によってはリスクが高まることがあります。とくに糖尿病、骨粗鬆症、高血圧、心疾患などがある場合は注意しなければなりません。
これらの全身疾患がある場合、傷口の治癒の遅れや感染症のリスク増加、骨とインプラント体の結合不足など様々なトラブルが起こる可能性が高まります。なお、主治医と連携しながら、数値や状態が安定していれば治療が可能になるケースもあります。
持病や全身疾患がある場合は、必ず治療前に申告し、歯科医師や主治医としっかり相談した上で治療を受けるようにしましょう。
禁煙ができるか
煙草に含まれるニコチンには血流を悪くする働きがあり、傷の治癒を遅らせたり、インプラントと骨の結合の妨げたりする恐れがあります。また、唾液の分泌量も減少し、口腔内が不衛生になるため、インプラント周囲炎や歯周病発症のリスクが高まります。
せっかく高額な費用を払い、手術のリスクを負ってインプラント治療をしても、喫煙を続けると結果的にインプラント治療が失敗に終わるかもしれません。そのため、治療を考えている方は、治療前から禁煙することをおすすめします。
「インプラント治療を受ける時期」に関するよくある質問
インプラント治療を受ける最適な時期は、患者様の口腔内の状態やライフスタイルによって異なりますが、歯を失ってから期間を空けすぎるのも避けたい要素の一つです。
ここでは、インプラント治療を受ける時期に関するよくある質問をまとめました。
抜歯後何ヶ月でインプラントを入れられますか?
抜歯部位の状況にもよりますが、抜歯後の傷口が完全に治るまで通常2~3ヶ月ほど待つため、その待機期間を経てインプラントを入れられるようになります。
なお、抜歯と同時にインプラントを埋入する抜歯即時埋入法という治療法も存在します。ただし、即時埋入が適用できるのは症例が限られるため、適切なインプラントの埋入時期は歯科医師と相談の上、決定しましょう。
インプラントをする時期はいつがベストですか?
インプラント治療の最適なタイミングは、歯を失った後できるだけ早い時期が理想的です。歯が抜けて長期間放置すると、その部分の顎骨が次第に吸収され骨量が減少したり、隣の歯が倒れ込んでしまったりすることがあります。
するとインプラント埋入が困難になり、追加の治療が必要になるかもしれません。ただし、口腔内の状態や全身の健康状況によっては慎重な経過観察や、待機期間を設ける方がよい場合もあります。
自己判断ではなく、歯科医師の診断をしっかり受けて相談しながら治療時期を検討しましょう。
インプラントは早い方がいいですか?
インプラントを行う場合は、歯を失ってからできるだけ早い方がおすすめです。歯を失ったままの状態を放置してしまうと、周囲の歯並びが崩れたり、噛み合わせが悪くなったり、顎骨が徐々に痩せてしまうというリスクがあります。
また、隣接する歯への過度な負担や虫歯・歯周病のリスクも増加するかもしれません。早めにインプラント治療を行うことで、これらのトラブルの予防や進行の抑制を期待できるでしょう。
さらに、食事や発音への影響も軽減できるため、日常生活の質も維持しやすくなります。インプラントは、タイミングよく受けることでより多くのメリットを実感できる治療法です。
インプラントができるまでの期間はどれくらいですか?
インプラント治療が完了するまでの期間は、患者様の骨やお口の状態、治療方法によって異なりますが、一般的には数ヶ月から半年以上かかります。治療の流れとしては、最初にカウンセリングや検査、治療計画を立て、必要に応じて抜歯を行います。
その後インプラント本体の埋入手術を実施し、インプラントが骨としっかり結合するまで3~6ヶ月程度の期間を置かなければなりません。インプラントと骨の結合が確認できたら、最終的に人工の歯を装着して治療完了となります。
インプラント治療は虫歯治療などと比べると治療期間が長くかかるため、治療スケジュールについては担当医とよく相談しましょう。
自分に合った最適な時期にインプラント治療を!
歯を失ってからインプラント治療を受ける場合は、できるだけ早いタイミングで行うことが大切です。というのも、歯を失った状態を放置してしまうと、様々なトラブルを招く恐れがあるからです。
ただし、インプラント治療を受ける最適な時期は、患者様の口腔内や全身状態、生活環境などによって異なることも理解しておかなければいけません。安心安全に治療を行うためにも、まずは歯科医院に相談しましょう。
高田歯科クリニック(東京都杉並区)では、患者様の口腔内や希望に沿って一人一人に最適なご提案を行っております。インプラント治療の時期について迷われている方は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2025年7月4日