【インプラントの骨移植まとめ】メリット・デメリット・費用相場なども解説
インプラント治療を検討中の方の中には、骨の量が少ないためにインプラント治療を断られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
インプラントは顎骨に埋め込み、結合させることで安定性を保つため、治療を受けるためには骨が十分確保できていることが条件として挙げられます。
この記事では、骨が不足している方に対して行われる骨移植についてまとめました。骨移植のメリットやデメリット、費用相場についてもご紹介します。患者様の骨の状態によってはインプラント治療とは別に骨移植が必要になる場合があるため、今のうちから理解を深めておきましょう。
この記事で分かること
- 骨移植とは、顎の骨の量や厚みが不足している場合に行う骨を補うための手術
- 骨移植には主に「人工骨移植」と「自家骨移植」の2種類があり、併用することもある
- 骨移植のメリット:インプラント治療を可能にする、審美性を高める
- 骨移植のデメリット:通常の治療に追加で費用も期間もかかる、感染症のリスクが高くなる
- インプラント治療と骨移植を同時に行う際の流れは、1.麻酔2.インプラント埋入と骨移植手術3.待機期間4.人工歯装着
- インプラント治療と骨移植を別々に行う際の流れは、1.麻酔2.骨移植手術3.待機期間4.インプラント埋入手術5.待機期間6.人工歯装着
- 骨移植の費用相場は、一般的に5万円から10万円程度が目安
インプラントの骨移植とは?
インプラントの骨移植とは、インプラント治療を受ける際に、顎の骨の量や厚みが不足している場合に行う骨を補うための手術です。歯を失った後に顎の骨が痩せてしまった場合や、もともと骨の量が少ない方がインプラントを希望する場合に、この骨移植が行われます。
インプラントは顎骨に人工の歯根をしっかりと固定するため、その土台となる骨が十分にないといけません。そのため、骨移植によって失われた顎骨を補い、インプラント体(人工歯根)をしっかりと固定できる環境を作る必要があります。
骨移植の治療の種類
骨移植には主に「人工骨移植」と「自家骨移植」の2種類が存在し、患者様の顎骨の状態や治療計画に応じて選択されます。それぞれの治療法には特徴や適応が異なり、場合によっては併用されることもあるでしょう。
以下では、各治療法の詳細について説明します。
人工骨移植
人工骨移植は、化学的に合成された人工骨を顎骨の不足している部分に移植する治療法です。使用される主な素材はハイドロキシアパタイト(HA)やβ-TCP(β-リン酸三カルシウム)などで、これらは天然の骨や歯の主成分と類似した物質です。
顎骨が足りない部分に人工骨の粉末や粒状の素材を埋め込み、時間の経過とともに周囲の骨が再生・吸収していくことで、インプラントを支える丈夫な土台を形成。骨の厚みや高さ、幅などは患者様ごとに異なるため、必要な分量や移植範囲は個別に調整されます。
人工骨移植は比較的ダメージが少なく、他部位から骨を採取する必要がない点も大きな利点です。
自家骨移植
自家骨移植は、自分自身の体から骨を採取し、顎骨が不足している部分に移植する方法です。骨は主に下顎枝(下顎の奥歯付近の骨)や他部位から採取されます。
自分の骨組織を使うため、移植後の生着率が高く、しっかりとした骨造成が期待できるのがメリットの一つといえるでしょう。
人工骨移植と自家骨移植の併用
骨移植治療の現場では、人工骨移植と自家骨移植を併用するケースもあります。自家骨で骨の基礎をしっかりと築き、その周囲を人工骨で補填することで、両者のメリットを活かしながらデメリットを補うことができます。
骨の再生力や生着率を高めつつ、移植に必要な骨量を効率的に確保できる点が魅力の一つ。患者様の顎骨の状態や全身の健康状態、必要な骨の量や形状などに応じて、担当医が最適な移植方法を選択します。
骨移植のメリット
骨移植のメリットは、下記の2つが挙げられます。
- インプラント治療を可能にする
- 審美性を高められる
それでは、一つずつみていきましょう。
インプラント治療を可能にする
顎骨の量が足りないとインプラント体を十分に固定できず、動揺や脱落のリスクが高まります。しかし、骨移植によって、従来は骨量が少ないことで治療ができなかった患者様もインプラント治療の選択肢を持てるようになり、天然歯に近い噛み心地を実現できます。
また、骨量をしっかり確保することで、インプラント体の安定や長期的な維持が期待できるため、治療の成功率も大きく向上するでしょう。
審美性を高められる
骨量が不足している場合、歯ぐきが痩せてしまい見た目に影響が出ることがありますが、骨移植を行うことで健康的で美しい歯ぐきを取り戻すことができます。
これにより、インプラント治療後も周囲の歯と歯茎の自然な調和が保たれ、より自然で違和感のない口元を実現できます。骨移植は単に機能面のメリットだけでなく、見た目にこだわりたい方にも大きな価値をもたらしてくれるでしょう。
骨移植のデメリット
骨移植のデメリットは、下記の4つが挙げられます。
- 通常のインプラント治療に追加費用がかかる
- 通院・手術回数が増える、治療期間が長い
- 痛みや腫れが生じる可能性があり
- 感染リスクが高くなってしまう
一つずつ詳しく解説します。
通常のインプラント治療に追加費用がかかる
骨移植を伴うインプラント治療の場合、通常のインプラント費用に加え、さらに追加の費用がかかります。インプラント治療と同様、骨移植も保険適用外であり、これにはおよそ5万~10万円程度の追加料金が必要になることを理解しておきましょう。
そのため、インプラント治療全体の費用が高額になりやすいですが、長期的な快適性や耐久性を考慮すると、入れ歯やブリッジと総合的なトータルコストは大きく変わらない場合もあります。治療費用については事前に歯科医院と相談し、納得したうえで進めましょう。
通院・手術回数が増える、治療期間が長い
骨移植を伴うインプラント治療では、通常の治療よりも通院および手術回数が増える傾向にあります。
骨移植後、顎の骨が十分に再生するまでには約4ヶ月~6ヶ月程度の期間が必要です。また、骨の再生が確認できた後にインプラント手術を行うのですが、インプラント治療期間は約3ヶ月~6ヶ月程度かかるため、全体の治療期間が1年ほどになる場合も珍しくありません。
治療中は仕事や日常生活への影響も考慮する必要があるため、ライフスタイルに合わせて計画的に進めることが大切です。
痛みや腫れが生じる可能性があり
骨移植は外科手術であり、歯ぐきを切開したり、場合によっては他部位から骨を採取するため、術後に多少の痛みや腫れが生じることがあります。
手術中は局所麻酔が効いているため、特に痛みを感じることはありません。しかし、手術後3〜7日間は痛みや腫れが出やすい期間となります。
また、自家骨移植の場合には、骨を採取した部分にも違和感や痛みが伴うこともあります。術後のケアとしては、鎮痛剤や抗生物質の服用などが指示されるため、必ず医師の指示に従って過ごしましょう。
感染リスクが高くなってしまう
骨移植は外科的な処置のため、術後の感染リスクには注意しなければなりません。特に移植した人工骨や自家骨は、手術後の清掃が不十分だと細菌感染を起こしやすくなります。
これを防ぐためには、術後の口腔内の衛生管理がこれまで以上に重要です。万が一感染が起こると再手術や治療期間延長につながる可能性もあります。
術後は指示された通院スケジュールをしっかり守り、日常の歯磨きやうがいなど清潔な状態を保つよう注意しましょう。
骨移植治療の流れ
骨移植治療は、インプラント体の埋入とは別々に行う場合とインプラント体の埋入と同時に行う場合の2パターンがあります。
下記では、それぞれの治療の流れについて解説します。
インプラント体の埋入と骨移植を別々に行う場合
インプラント体の埋入と骨移植を別々に行う場合、まず骨移植手術を先に行い、骨が安定した後にインプラント体を埋め込むのが一般的です。この方法は、骨の不足が大きい場合や確実な骨形成が求められるケースに選択されます。
1.麻酔を行う
まず治療箇所に麻酔を行った後、歯茎を切開し、骨を移植する量を確認します。自家骨移植の場合は、移植元の歯茎を切開し、必要な量の骨を削って採取します。
2.移植したい部位に骨を固定する
必要な量の骨を移植したい部分に固定し、コラーゲンでできた膜(メンブレン)で覆い保護して縫合します。術後は傷口が敏感になっているため、刺激を与えないよう安静にすることが大切です。
3.抜糸、消毒
術後2週間程度で抜糸と消毒を行い、骨が再生されるのを待ちます。
4.待機期間
骨が再生され、安定するのには下顎で約4ヶ月、上顎では約6ヶ月程度の期間が必要です。この間も骨の回復を妨げないために焦らずじっくりと治癒を待つことを心がけましょう。
5.インプラント埋入
骨の再生が確認できたらインプラントを埋入手術を行います。麻酔をし、再度歯茎を切開した後に顎の骨にドリルで穴を開け、インプラント体を埋入します。
インプラント埋入後は、骨とインプラント体の結合のために再度約3ヶ月~6ヶ月程度の期間おかなければなりません。結合を確認できた後に人工歯を装着し、治療終了となります。
インプラント体の埋入と骨移植を同時に行う場合
インプラント体の埋入と骨移植を同時に行う方法は、骨不足が比較的軽度である場合や、短期間で治療を終えたい場合に有効な治療法です。
1.麻酔を行い、インプラント埋入
手術箇所に麻酔を施し、歯茎を切開した後に顎骨にインプラントを埋入するための穴を開けてインプラント体を埋入します。
2.骨移植を行う
不足している骨を補うために人工骨や自家骨を移植し、専用の保護膜(メンブレン)で覆って固定し縫合します。手術は短時間で完了し、患者様の身体的負担も比較的軽減されます。
3.待機期間
移植した骨とインプラント体がしっかり結合するまでには、個人差はありますが約6ヶ月~10ヶ月程度待機する必要があります。結合が確認できれば、最終的な人工歯(上部構造)を装着して治療は完了です。
インプラントの埋入と骨移植を同時にするケースでは、治療期間を短縮できる利点がありますが、骨の量や質によっては適用できない場合があるため、歯科医師との相談が必要になるでしょう。
インプラントの骨移植にかかる費用相場
骨移植にかかる費用は、患者様の骨の状態や手術箇所、使用する材料、治療方法、治療方針などによって大きく異なります。全国的な費用の相場としては、骨移植だけで一般的に5万円から10万円程度が目安といわれています。
しかし、場合によっては15万円から30万円、さらに高度な治療の場合は30万円以上となることも。加えて、骨移植の費用には通常、インプラント本体の費用は含まれていないため注意が必要です。
骨造成(骨移植)に関するよくある質問
骨造成(骨移植)は通常のインプラント治療に追加の手術が必要となり、難易度も高い処置だからこそ、不安に感じる方も多いと思います。ここでは、骨造成(骨移植)に関するよくある質問をまとめました。
安心して治療に臨めるよう事前に理解を深めておきましょう。
移植する骨はどこから(部位)採取しますか?
自家骨移植の場合、移植に使う骨は、主に患者様自身の口腔内から採取されます。よく用いられる部位は下顎の奥歯の外側(下顎枝)、下顎の前方部分(オトガイ)、および親知らずのあたりなどです。
時にはインプラントを埋入した際、余剰となった骨を活用する場合もありますが、採取できる量は少ないでしょう。必要に応じて人工骨を併用することもあり、患者様の骨の状態に応じて最適な方法が選ばれます。
骨移植は入院が必要ですか?
骨移植を行う際、ほとんどの場合入院は必要ありません。インプラント治療や骨移植手術は主に局所麻酔や静脈内鎮静法を用いて行われるため、体への負担が比較的少なく、その日のうちにご帰宅いただける日帰り手術が一般的です。
ただし、重度の全身疾患をお持ちの場合や、採取する骨の範囲が広かったり全身麻酔を使用するケースでは、手術後の回復観察のために入院が必要になることもあります。手術の内容や患者様の健康状態により異なるため、不安な方は事前に担当医へ相談してみましょう。
骨造成(骨移植)は保険適用ですか?
骨造成(骨移植)は、インプラント治療と同様、自由診療のため保険は適用されません。
ただし、先天的な疾患や事故など特別な事情で治療が必要な場合には、条件次第で保険適用となることもあります。また、骨造成(骨移植)で発生した費用は医療費控除の対象となるため、一定以上の医療費を支払われた方は確定申告にて控除を受けることが可能です。
負担を軽減するためのデンタルローンや分割払いも利用できる場合があるため、一度歯科医院へ相談してみると良いでしょう。
骨移植が失敗することはありますか?
骨移植は高度な技術と知識が求められる難易度の高い手術です。そのため、歯科医師の技術レベルや経験、手術を行う衛生環境が不足している場合、失敗するリスクもゼロではありません。
移植した骨の感染や、人工骨の定着不良などのリスクも考えられます。特に、術後の清掃が不十分だったり喫煙や基礎疾患があったりする場合、合併症が生じやすくなるでしょう。
リスクを最小限に抑えるためには、信頼できる歯科医院選びと術後の丁寧な自己管理がとても大切です。また、治療後も定期的なメンテナンスや指導を受けることで、より良い結果につながります。
インプラントの骨移植に関するご相談は高田歯科クリニックへ
インプラントを埋入し安定させるためには、インプラントを支える顎骨の量が十分にあることが欠かせません。
骨移植は骨が少ない方でもインプラント治療を可能にさせる魅力的な治療法の一つです。しかし治療の難易度が高く、リスクを伴うため、メリット・デメリットどちらも考慮した上で治療に臨むことが大切です。
高田歯科クリニック(東京都杉並区)では、患者様の口腔内に合わせた治療計画を立て、お一人お一人に合わせたご提案、治療を行っております。
インプラント治療や骨移植について気になることや不安なことがございましたら、お気軽に当院へご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2025年7月4日