抜歯後、数年経ってからのインプラント治療は可能?
更新日:2025年11月16日

抜歯後、歯が抜けた箇所をそのまま放置していると、噛み合わせや歯並びに影響を及ぼすことから、多くの場合失った部分をできるだけ早く補う処置が必要となります。
しかし、何らかの理由で抜歯後数年が経過してしまった後にインプラントを希望する場合、治療は可能なのでしょうか?
本記事では、抜歯後数年経ってからのインプラント治療は可能なのかどうか、抜歯後のインプラント治療の基本的な流れや期間などについて詳しく解説していきます。抜歯後数年経っている方、インプラント治療を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 抜歯後、数年経ってからのインプラント治療は可能
- 抜歯後インプラント治療をスタートする通常のタイミングは、抜歯後約2~3ヶ月後
- 抜歯即時埋入法なら抜歯と同時にインプラントの埋入が可能
- 抜歯後数年経っているとインプラントが入れられないケースもある(①骨量・骨の厚さが不十分 ②周辺の歯が空いたスペースに倒れている ③口腔内の状態が悪い)
- 抜歯後に選択されるインプラント治療以外の治療法は、「ブリッジ」もしくは「入れ歯」
抜歯後、数年経ってからのインプラント治療は可能なのか

抜歯後はできれば早い段階でインプラント治療を決断することが理想的ですが、数年経ってからの治療も可能な場合はあります。ただ、やはり患者様の口腔内の状態や抜歯後何年経過しているかによって治療ができるかどうかの判断は異なります。
歯を抜いてから期間が空けば空くほど治療できる可能性が低くなるため、インプラントを検討された時点で早めに歯科医院へ相談しましょう。
歯がない状態を長期間放置した場合に必要な追加治療

歯を失ったまま放置すると、顎の骨が痩せたり歯並びが崩れたりすることがあります。そのため、インプラント治療前に追加の処置が必要になるかもしれません。
ここでは、歯がない状態を長期間放置した場合に必要な追加治療について詳しく解説します。
骨が足りない場合の「骨造成」
歯を失ったまま長期間放置すると、噛む力が加わらないためにあごの骨が徐々に痩せてしまいます。インプラントは骨に人工の歯根を埋め込む治療のため、十分な骨量がなければ安定させることができません。
そこで行うのが「骨造成」という処置です。骨造成では、人工骨や自分の骨を不足している部分に補い、骨の再生を促します。骨が定着するまでには数ヶ月を要しますが、しっかりとした土台ができることでインプラントを長持ちさせることができます。
歯の傾きを戻すための「矯正治療」
歯が抜けたまま放置しておくと、周囲の歯が空いたスペースに傾いたり、反対側の歯が伸びてきたりします。この影響で歯並びや噛み合わせが崩れてしまうと、インプラントを理想的な位置に埋め込むことが難しくなり、見た目や噛み合わせに問題が生じることがあります。
そのため、必要に応じて矯正治療を行い、歯の位置を正しく整えなければなりません。矯正でスペースや角度を整えることで、インプラントを安全かつ長持ちさせる土台を作ることができます。見た目の改善はもちろん、将来的な歯やインプラントのトラブル予防にもつながるでしょう。
歯茎の厚みを補う「歯肉移植」
歯を失って長く放置すると、歯茎が下がって薄くなり、見た目が不自然になるだけでなく、インプラント周囲の清掃もしづらくなります。こうした場合に行うのが「歯肉移植」です。
主に上顎の内側から健康な歯肉を採取し、歯茎が薄くなった部分に移植して厚みを補う方法。これにより、インプラント周囲が汚れにくくなり、炎症や感染のリスクを減らすことができます。
また、歯茎の形を整えることで、自然で美しい見た目を回復できるのも大きなメリットです。審美性と清掃性の両方を高める重要な治療といえるでしょう。
追加治療による費用・期間への影響
骨造成や矯正治療、歯肉移植といった追加処置が必要になると、インプラント治療そのものの費用や期間にも影響が出ます。追加治療の内容によっては、数万円から数十万円の費用がかかる場合があり、治療期間も数ヶ月から1年ほど延びることがあります。
また、骨や歯茎の状態が整うまで待機期間が必要になるため、治療の全体計画が長期化することもあるでしょう。早めに欠損部を治療することで、これらの追加処置を回避できる可能性が高まりま。
放置せず早期に相談・治療を行うことが、結果的に費用と時間の負担を減らす近道です。
抜歯後のインプラント治療の基本的な流れと期間

はじめに、抜歯後のインプラント治療をどのような流れで行っていくのか、またどれくらいの期間が必要になるのかをご紹介していきます。
抜歯後インプラント治療をスタートする通常のタイミングは?
抜歯後は傷の治りを待つのに約2~3ヶ月ほど期間を空ける必要があるため、インプラント治療はその日数以降のスタートとなります。
また、インプラントを埋入するためには顎の骨の量が十分あることが条件となるため、骨の量が少ない場合は抜歯と同時に骨を補う「骨造成」を行うのが一般的です。
その場合は傷の治りを待つのに加え、骨が増えるのを待つ必要があるため、さらに治療スタートまでの期間が延びる場合もあります。
そのため、インプラント治療を開始する通常のタイミングとしては抜歯後2ヶ月~6ヶ月程度かかると覚えておくとよいでしょう。
抜歯後、傷が治ってからインプラントを埋入する流れ・期間
抜歯後、傷が治ってからインプラントを埋入する流れは以下の通りです。
- 抜歯
- 抜歯窩(抜歯した箇所)の治癒期間(約2~3ヶ月)
※骨造成(骨を増やす手術)をした場合は約3~6ヶ月程度 - インプラント手術
- インプラント体と骨の結合を待つ期間(約3~6ヶ月)
- 上部構造(人工歯)の装着
傷口の治りや骨が安定するまでの期間は患者様によってそれぞれ異なるため、期間は大きく変わる可能性があります。
なお、基本的な抜歯後からインプラントの上部構造を装着するまでの期間は約6ヶ月~1年程度かかることがほとんどです。
また、抜歯後やインプラント埋入後は傷口や骨の状態が安定しないため、食事やセルフケアなど注意すべきポイントがいくつかあります。インプラント治療を安心してスムーズに行うためにも、抜歯から治療を終えるまでの間も歯科医院に通い、定期的に経過を見てもらうことが大切です。
抜歯後、すぐにインプラントを埋入する流れ・期間
抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時埋入法」という治療法もあります。通常、抜歯後は傷口の治りを待つのに2~3ヶ月程度期間を空けてインプラントの埋入を行いますが、抜歯即時埋入法の場合、抜歯と同時にインプラント体を埋入できます。
手術が1回で済み、治療期間も短くなるといったメリットがあるため患者様への負担が軽減できるのが特徴です。
具体的な流れは以下の通りです。
- 局部麻酔、抜歯
※骨が少ない場合は骨造成(骨を増やす処置)を追加で行います - 抜歯窩(抜歯をした後の穴)にインプラント埋入
- 仮歯装着
- インプラント体と骨の結合を待つ期間(約3~6ヶ月)
- 上部構造(人工歯)装着
なお、抜歯即時埋入法は患者様によって適応できないケースも存在します。そのため、まずは治療が可能かどうか歯科医師に確認しましょう。
抜歯後数年経っているとインプラントが入れられないケースもある

抜歯後数年経っている場合、インプラント治療が難しいことがあります。具体的なケースは以下の通りです。
- 骨量・骨の厚さが不十分なケース
- 周辺の歯が空いたスペースに倒れているケース
- 重度の歯周病など口腔内の状態が悪いケース
それでは1つずつご紹介していきます。
骨量・骨の厚さが不十分なケース
実は歯を失った状態が長く続くと、骨の吸収(骨が溶けてなくなる)が進んでしまい、インプラント治療ができないケースがあります。というのも、インプラントを埋入するためには骨量や骨の厚さが十分あることが条件だからです。
骨の量が少ない場合には、「骨造成(骨を増やす手術)」を行うことでインプラント治療が可能になることもありますが、その分治療費や治療期間が余計にかかってしまうことを理解しておきましょう。
周辺の歯が空いたスペースに倒れているケース
歯は隙間なく並ぶことでお互いが支え合い歯列を保っています。そのため、歯を失ったままの状態が長く続いてしまうと周囲の歯がその隙間を埋めようとして移動してきたり、倒れ込んできたりしてしまう場合があるのです。
また、向かい側の歯も噛み合う歯を求めて、挺出(歯が本来あるべき場所から突出)するケースもあります。
そうなった場合、インプラント治療をしたくてもインプラントを埋入するための十分なスペースが確保できないため治療が難しいと判断されることもあるでしょう。
それでもインプラント治療を希望する場合は、倒れ込んできた歯を起こしたり、移動してきた歯を元の位置に戻したりするための矯正治療が必要になるでしょう。
重度の歯周病など口腔内の状態が悪いケース
重度の歯周病など口腔内の状態が悪い場合も、インプラントが入れられないことがあります。前述したように、インプラントを埋入するためには顎の骨の量が十分であることが必須です。
しかし、重度の歯周病の場合、顎の骨の吸収がかなり進んでいることが考えられるため、インプラントを埋入しても骨との結合が上手くできず治療の成功率を下げてしまう可能性が高くなります。
さらに口腔内の状態が悪いと術後の感染症のリスクまでも高めることになりかねません。そのため、まずはインプラント治療の前に歯周病の治療が必要となり、メンテナンスやセルフケアの改善で口腔内の状態を整えることが優先されるでしょう。
抜歯から年数が経ったケースで注意すべきトラブル

抜歯後、年数が経つと見た目や噛み合わせに影響が出ることはもちろん、インプラント治療の難易度も上がるためトラブルも起こりやすくなります。
ここでは、抜歯から年数が経ったケースで注意すべきトラブルについて解説します。
骨が弱くインプラントが安定しにくい
歯を抜いたまま長期間放置すると、歯を支えていた骨が次第に痩せてしまいます。インプラント治療では、しっかりとした骨の量と硬さが欠かせません。しかし、骨が弱くなるとインプラントが安定しにくく、治療自体が難しくなる場合があります。
必要に応じて骨造成などの処置を行うこともありますが、治療の負担や期間が増えるため、早めの対応が大切です。
隣接歯や噛み合わせに負担がかかる
歯を失った部分をそのままにしておくと、隣の歯が空いたスペースに傾いたり、反対側の歯が伸びてきたりして、噛み合わせのバランスが崩れてしまいます。その結果、特定の歯だけに過剰な力がかかり、歯や歯根が弱くなったり、顎関節に負担がかかったりすることもあります。
放置期間が長いほど噛み合わせの回復が難しくなるため、早期の治療を心掛けましょう。
インプラント周囲炎のリスクが上がる
抜歯後に長期間放置すると、骨や歯ぐきの状態が悪化しやすく、インプラント治療後に「インプラント周囲炎」を発症するリスクが高まります。これは、インプラントの周りに炎症が起きる病気で、放置するとインプラントが抜け落ちることもあります。
骨量が不足して骨造成を行った場合や歯ぐきの形が不自然な場合は、清掃しづらく細菌が溜まりやすくなるため注意しなければなりません。治療後は、毎日の丁寧な歯みがきと、定期的なメンテナンスで清潔な状態を保つことが重要です。
抜歯後数年後のインプラント治療こそメンテナンスが欠かせない
抜歯から数年経ってから行うインプラント治療では、骨や歯ぐきの状態が変化しているため、治療後のメンテナンスが特に重要です。
インプラントは天然の歯と違い、虫歯にはなりませんが、歯周病のような「インプラント周囲炎」を起こすことがあります。これを防ぐためには、毎日の正しい歯みがきに加え、定期的な歯科医院でのクリーニングやチェックが欠かせません。
専門的なメンテナンスによって、インプラントと周囲の組織を健康に保ち、長く快適に使い続けることができます。
抜歯後に選択されるインプラント治療以外の治療法

抜歯後はインプラント治療以外にも治療法があります。どの治療法が自分にとって最適なのかを見極め、歯科医師と相談した上で選択することが大切です。
インプラント治療以外には、次にご紹介する「ブリッジ」と「入れ歯」という治療法が挙げられます。
ブリッジ
ブリッジは、抜歯した部分の両隣の歯を土台として使用し、連結した歯を被せる方法です。
口腔内に入れた時の違和感があまりなく、取り外しの必要もありません。また、保険適用のためインプラントに比べて費用を安く抑えられることもメリットです。
ただ、両隣の健康な歯を削る必要がある、周りの歯への負担が大きい、清掃が行き届きにくいというのがデメリットとして挙げられます。
入れ歯
入れ歯は、人工の歯と歯茎で作られた取り外し式の装置です。保険適用で費用が安い、取り外し式で気軽に清掃できることがメリットとして挙げられます。
一方、両隣の歯にかけるバネが目立つ、取り外しやお手入れの手間がかかる、口腔内に入れた時に違和感があるなど、不便に感じてしまうこともあるのが現状です。
「インプラント 抜歯後」に関するよくある質問

抜歯後のインプラント治療について、よくある質問をまとめました。今後、抜歯予定の方やすでに抜歯をしていて不安や疑問に感じられている方は、ぜひ参考にしてみてください。
抜歯後何年経つとインプラントを入れられないのですか?
抜歯後、「骨が吸収される」「周りの歯が動いてしまう」といった理由でインプラントを入れられない場合があるのですが、そのような状態になるスピードは患者様によってそれぞれ異なります。
そのため、抜歯後はできるだけ早く失った歯を補うための治療に取りかかることが理想です。インプラント以外にも治療法があるため、インプラントを含め、ご自分に合った治療法を歯科医師とよく相談しましょう。
抜歯してからどれくらいでインプラントを入れますか?
通常のインプラント治療の場合、抜歯後は傷口の治りを待つため、約2~3ヶ月程度期間を置いてインプラント手術を行います。
なお、抜歯と同時にインプラントの埋入を行う「抜歯即時埋入」という治療法も存在し、抜歯とインプラント手術が同日に行えることで手術回数、治療期間ともに少なくすることが可能です。
しかし、抜歯即時埋入は全ての人ができるというわけではないため、検討する際には歯科医師へ相談してみましょう。
抜歯後、放置期間が長いとどうなりますか?
抜歯後、放置した期間が長くなると骨の吸収が進み、歯茎がだんだん痩せてきたり、骨が薄く少なくなったりすることでインプラント治療が難しくなるケースがあります。
また、失った周りの歯が倒れてきたり、噛み合う歯が挺出してきたりと今までの歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼす可能性があります。その場合もインプラント治療が難しい、または事前に矯正治療などで環境を整えてからインプラント治療を行うケースがほとんどです。
そのため、抜歯後はなるべく期間を空けず、抜歯後の治療法を歯科医師と相談のうえ早めに治療を済ませるようにしましょう。
抜歯後、仮歯はすぐに入りますか?
抜歯後は歯肉の状態が不安定なため、傷口の治りを待って型取りをします。そしてインプラント治療までの間仮歯を装着するのが理想的です。
しかし、見た目に関わる前歯や抜歯の本数が多く食事が難しいといった場合もあるでしょう。その場合は抜歯の前に型取りをしておき、抜歯後すぐに仮歯を装着することが可能です。
ただ、患者様の口腔内の状態によって仮歯を入れるタイミングは異なるため、仮歯についてはあらかじめ担当の歯科医師に確認しておくことをおすすめします。
抜歯後数年経ってのインプラント治療は歯科医師にまず相談
抜歯後のインプラントはできるだけ早い段階で治療をはじめるのが理想です。そのためには抜歯を行った時点で、抜歯後どのような治療を行うかを歯科医師と相談し、決断しておくことが求められます。
ただ、たとえ抜歯後数年経っていたとしても、インプラント治療が可能なケースは多くあります。何より患者様の口腔内の状態によって最適な治療法は異なりますし、インプラント治療前に別の治療が必要になる場合もあるため、まずは歯科医師に相談しましょう。
当院「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」では、抜歯後の治療法について患者様一人ひとりに合った最適なご提案を行っております。
抜歯後数年経っている箇所の治療について、またインプラント治療について気になることやご不安に思われることなどございましたら、まずは一度当院へお気軽にご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年11月5日










