インプラント治療における「人工歯」の素材の種類や費用まとめ
インプラント治療の最後に装着する人工歯には、様々な種類が存在します。一つ一つ特徴が異なるため、理想とする見た目や機能性、予算を考慮しつつ、ご自身の口腔内に合った人工歯を選ぶことが大切です。
この記事では、インプラント治療における「人工歯」の素材の種類や費用、それぞれのメリットやデメリットについて詳しく解説!インプラントの人工歯について検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事で分かること
- インプラントの人工歯の素材は、主に「金属製」と「セラミック製」に分けられる
- インプラントの人工歯にかかる費用相場は、約5万~20万円程度
- インプラントの人工歯に使用するセラミックの寿命は、約10~20年程度
- インプラント体の素材は「チタン」「ジルコニア」、アバットメントの素材は「チタン」「ジルコニア」「金合金」
- インプラントの素材を選ぶ際のポイントは「費用」「見た目」「強度・耐久性」
インプラントの構造を理解しよう!インプラント治療の人工歯とは?
インプラントは、インプラント体(人工歯根)、アバットメント(人工歯根と人工歯をつなぐ部分)、上部構造(人工歯)の3つの構造で成り立っています。
インプラント手術では、顎骨にインプラント体とアバットメントを埋入し、骨が定着した後に人工歯を装着する流れとなります。人工歯は天然歯と同様、見た目や噛み合わせに影響を与える重要な役割を果たすため、様々な種類があることを理解し、自分に合ったものを選ぶことが大切になるでしょう。
インプラント治療で使用する「人工歯」の素材の種類
インプラント治療に使用される人工歯の素材は、主に金属製とセラミック製に分けられます。下記では、それぞれの種類に分けて、素材の特徴やメリット・デメリットについても併せて解説します。
患者様の希望やインプラントを埋入する場所、費用などに応じて、最適な素材を選択するようにしましょう。
「セラミック製」の人工歯
セラミック製の人工歯は、見た目の美しさと金属アレルギーのリスクがないことから多くの患者様に選ばれています。セラミックの人工歯は、主に下記の5種類に分けられます。
- オールジルコニア
- ジルコニアセラミック
- オールセラミック
- ハイブリッドセラミック
- メタルボンド
それでは、一つずつみていきましょう。
オールジルコニア
オールジルコニアは、その名の通り全てがジルコニア素材でできている人工歯を指します。ジルコニアは強度の高さと耐久性を誇り、咬む力が特に強い奥歯などに最適です。ただし、天然歯よりも硬いため、何年も使用するうちに対合する歯を摩耗させる可能性が出てくるかもしれません。
審美性については、透明感にはやや欠けますが、外見を損ねない程度の美しい白さを持ちます。また、高価な素材であるため、費用面では負担が大きくなる傾向があります。
ジルコニアセラミック
ジルコニアセラミックはジルコニアを主な素材とし、セラミックで覆った二重構造の人工歯です。ジルコニアによる高い強度と、セラミックの持つ自然な透明感を兼ね備えており、機能性と審美性の両方を求める患者様に最適といえるでしょう。
また、金属を含まないため金属アレルギーの心配がなく、経年変化も少ないため非常に安定した素材です。ただし、ジルコニア自体が高価な素材であるため、インプラント治療全体のコストが上がる点がデメリットとなります。
オールセラミック
オールセラミックは、全体がセラミックで作られているため、天然歯に近い見た目と透明感が実現できるのが魅力で、特に前歯など審美性が求められる部分に適しています。
金属を使用していないため、金属アレルギーになったり、汚れが付きにくく変色する心配も少ないです。しかし、オールセラミックはジルコニアに比べて割れやすく、強い衝撃が加わると破損する恐れがあるかもしれません。
このため、噛み合わせの力が強い方や食いしばり、歯ぎしりの癖がある方には慎重な検討が必要です。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、セラミックと歯科用プラスチック(レジン)を組み合わせた素材です。レジンを配合していることにより、費用を抑えられるのが魅力の一つといえるでしょう。
金属を含まないため、金属アレルギーの方にも安心して選んでいただけます。ただし、レジンは経年劣化しやすく、使用を続けることで黄ばみや汚れがつくリスクが高まります。
また、セラミックに比べて強度が劣り、摩擦によるすり減りの可能性もあることから、長期にわたる使用にはあまり適していません。費用対効果を重視する方に向いていますが、耐久性には一定の制約があることを理解しておきましょう。
メタルボンド
メタルボンドは、金属の周りにセラミックを焼き付けた人工歯であり、中身が金属であるため非常に高い強度を持ちます。セラミックのコーティングにより、見た目は自然な歯に近いものがありますが、透明感はオールセラミックより劣ります。
また、金属アレルギーのリスクがあること、経年劣化で金属が溶け出すことによる歯茎の黒ずみが起こることがあるため、金属アレルギーをお持ちの方や審美面を重視する方には、あまりおすすめできません。
耐久性が求められる奥歯に使用されることが多く、比較的費用を抑えられるというメリットがありますが、審美性では他の素材と比べると劣る点がデメリットと言えるでしょう。
「セラミック以外」の人工歯
インプラント治療においてセラミック以外の人工歯も選択肢として存在します。これには、ゴールドクラウンやオーバーデンチャー、金属を使用した人工歯などがあります。
下記では、それぞれの特徴について解説するため、セラミックとの比較材料としてぜひ参考にしてください。
ゴールドクラウン
ゴールドクラウンは、金を主成分とし、プラチナなどを加えた金合金で作られる被せ物です。これは天然歯に近い硬さを持ち、適度な柔軟性によって咀嚼時の力を適切に分散します。
さらに、口内で腐食しにくく、金属アレルギーの方でも使用できるのが魅力の一つになるでしょう。しかし、見た目が目立つため、前歯や笑ったときに見える箇所の治療には向いていません。また、貴金属を利用しているため費用が高めで、金やプラチナの市場価格の影響を受ける可能性もあります。
オーバーデンチャー
オーバーデンチャーは、歯をほとんど失っている方、もしくは全くない方に適用される治療法の一つで、顎の骨に数本のインプラントを埋め込み、その数本のインプラントを土台に取り外し式の総入れ歯を装着する方法です。
この方法の最大のメリットは、コストを抑えられる点です。また、数本のインプラントで入れ歯を支えられることから、外科手術での患者様の体への負担も大幅に少なくなるでしょう。
しかし、入れ歯と同様取り外し式のためお手入れが必要になることやインプラントに問題が生じると、入れ歯の使用が困難になることなどがデメリットとして挙げられます。
金属
金属製の人工歯は、他の素材と比べて安価であり、強度にも優れている点が特徴です。ただ、見た目では金属が目立ってしまう可能性があり、美しさを求める人には適していないかもしれません。
また、メタルボンドと同じように金属は経年劣化が起こりやすいため、使い続けるうちに金属イオンが溶け出し、金属アレルギーのリスクが高まりやすいです。さらに、歯茎が黒ずむ原因にもなるため、体質や審美面を考えると金属の選択はあまりおすすめできません。
インプラントの人工歯にかかる費用
前述してきた通り、インプラントの人工歯には様々な種類が存在するため、その費用についてもそれぞれ異なりますが、1本あたり5万~20万円程度が費用相場です。
基本的に、インプラント治療に関わるものは全て保険適用外のため、費用が高額になるのが特徴です。ただし、費用面だけを見るのではなく、インプラント治療を終えた後も安心して長く使い続けられるよう、審美性や機能性、耐久性などすべて考慮した上で自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
インプラントの人工歯に使用するセラミックの寿命
インプラントの人工歯に使用するセラミックの寿命は、約10年~20年程度と言われており、適切なメンテナンス次第では、20年以上持つこともあります。
インプラントは虫歯になることはありませんが、治療を終えたからといってケアを怠っていると寿命を縮めることになります。中でも、セラミックの人工歯は過度な力が加わることで破損する可能性が高まるため、噛み合わせのチェックや調節も欠かせません。
インプラントの人工歯を長持ちさせるためにも、日頃のブラッシングを丁寧に行うとともに、歯科医院の定期的なメンテナンスに通うことを心がけましょう。
「インプラント体」に使われる素材の種類
インプラント体に使われる素材の種類には、主に「チタン」と「ジルコニア」があります。チタン素材を使用している歯科医院が多いですが、近年ではアレルギーのリスクや審美面を考慮し、ジルコニアを選択する方も増えてきました。
以下では、それぞれの素材の詳細をお伝えします。
チタン
チタンは、インプラント体として優れた特性を持っており、特に骨との強固な結合が可能です。顎の骨に埋め込まれたチタンは、新しい骨組織がチタンの表面に張り付くことによってしっかりと結合し、これにより天然歯と同等の噛む力を回復することができます。
さらに、チタンは非常に高い生体親和性を持ち、金属アレルギーの心配がほとんどありません。
ジルコニア
ジルコニアは「人工ダイヤモンド」とも呼ばれるほどの硬度を持つ、セラミックの一種です。チタンと同様に骨と結合する性質があり、金属アレルギーの問題を解消するためにも有効な選択といえるでしょう。
また、白く自然な見た目により、歯茎が下がっても目立ちにくいことや汚れが付きにくく、長期にわたって美しさを保つことができるのも魅力です。
しかし、ジルコニア製インプラントはチタンよりもコストが高く、新しい技術であるため提供している歯科医院が限られているというデメリットも存在します。それでも、高い審美性を求める方や金属アレルギーが懸念される方には、ジルコニアが優れた選択となり得るでしょう。
「アバットメント」に使われる素材の種類
インプラント治療において重要な役割を果たすアバットメントの選択肢はインプラント体よりも多く、患者様のニーズや口腔内の状態に応じて適切なものを選ぶことが可能です。
主にチタン、ジルコニア、金合金が用いられていますが、それぞれの性質やメリット・デメリットは異なるため、下記にて詳しく解説します。
チタン
チタン素材のアバットメントは、優れた生体親和性と強度で広く利用されています。チタン合金を使用することが多く、歯肉に密着しやすく腐食しにくいため、長期間の安定した使用が可能です。
また、軽量であるため、装着後も違和感が少なく患者様の負担を軽減できるでしょう。しかし、チタン特有の銀色が歯ぐきから透けて見える可能性があり、審美性に影響を及ぼすことがあります。
ジルコニア
ジルコニアアバットメントは、白く透明感のある見た目が特徴で、審美性を重視する患者様に適しています。歯ぐきが下がっても目立ちにくく、金属アレルギーの心配もないため、ジルコニアを選ぶことは多くの患者様にとって安心材料の一つになるでしょう。
さらに、細菌が付きにくいため口腔内を清潔に保ちやすいという利点があります。ただし、非常に硬いため噛み合わせに注意が必要で、噛む力が強い場合、対合歯や他の歯に負担を与える可能性があります。
金合金
金合金のアバットメントは、インプラント体との適合性が高く、耐久性にも優れていることから信頼性が高いと言われています。硬すぎず柔らかすぎない性質により、長期間の使用でも違和感が少なく、摩耗や損傷のリスクを抑えられます。
しかし、歯ぐきが下がると金属の色が露出するため、見た目を重視する方にとってはデメリットになるでしょう。また、金の価格が高いため、他の素材よりも費用が高くなることが一般的です。
人工歯を含む、インプラントの素材を選ぶ際のポイント
インプラントの素材選びは、費用、見た目、強度、耐久性を総合的に考慮することが大切です。以下のポイントを踏まえて、長期的に満足のいく選択をしましょう。
費用
インプラント治療では、費用が重要な選択基準の一つです。自由診療であるため、歯科医院ごとに価格設定が異なることを理解しておく必要があります。
安価に見える治療でも、総額では高額になる場合があるため、必ず事前にインプラント治療における内訳を確認し、見積もりを確認しましょう。また、安易に安価な素材を選ぶのではなく、耐久性や治療後のメンテナンスなどを考慮した総合的な費用対効果を考えることが重要です。
長期的に見たコストパフォーマンスを高めるために、予算と質のバランスを考えて選定しましょう。
見た目
前歯など目立つ位置にインプラントを埋入する場合、見た目の美しさが特に重要です。自然な色の再現や透明感を求めるなら、オールセラミックやジルコニアセラミックが適しています。
これらの素材は審美性に優れており、人目につきやすい箇所に使用することで自然な見た目を実現できるでしょう。
一方、奥歯の場合は見た目よりも機能性を重視し、メタルボンドやジルコニアを選ぶことが一般的です。最適な審美性を得るためには、理想の仕上がりを歯科医師としっかり共有しておくことが大切です。
強度・耐久性
強度と耐久性は、特に奥歯のインプラント治療を行う上で重要な選択基準となります。フルジルコニアや金属は高い強度を持つため、咬合力の強い部位にはこれらの素材を選ぶことが推奨されます。
耐久性の高い素材を選ぶことで、長期間にわたり安定した使用が期待でき、再治療のリスクを減らすことができるため、自分の噛み合わせの状況を考慮しながら、最も適した素材を選びましょう。
パッチテストを受けるのもおすすめ
インプラント素材によるアレルギー反応を避けるために、事前にパッチテストを受けることも考慮しましょう。一部の素材には金属を含むものもあり、アレルギー反応が出る可能性があります。
パッチテストを行うことで、アレルギーの可能性を事前に確認することができるため、安全に治療を行うための一助となります。また、パッチテストを受けることで、素材に対する不安を軽減し、安心してインプラント治療に臨むことができるでしょう。
ご自身の健康を第一に考え、必要性を医師と相談してみてください。
納得のいくインプラント治療のために、自分にぴったりの素材選びを
インプラントの人工歯には様々な種類があり、それぞれ特徴は異なります。だからこそ、人工歯の素材選びでは、審美性や機能性、耐久性など、まず自分にとって何を重視すべきかを明確にすることが大切です。
そして、後悔のないよう、ご自身の希望や口腔内との相性をしっかりと考慮したうえで、歯科医師と相談しながら最適な素材選びをしましょう。
当院「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」では、患者様のご希望や口腔内に合わせた素材選びを行っております。インプラント治療や人工歯の素材選びについて気になることやご不安なことがある場合は、ぜひ当院にお気軽にお問い合わせください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2025年5月7日