インプラント治療後に噛み合わせが悪くなる?原因やリスク、予防法もご紹介
インプラントは入れ歯やブリッジと比べて、噛む力や噛み心地が天然歯とかなり近いため、違和感なく食事や会話を楽しむことができる人気の高い治療法です。
しかし、インプラントも治療後使用を続けていると、噛み合わせに違和感が出てくることがあります。噛み合わせに違和感があるまま過ごしてしまうと、口腔内だけではなく、全身にも悪影響を及ぼしかねません。
そこで本記事では、インプラント治療後に噛み合わせが悪くなる原因やリスク、さらに噛み合わせを悪くさせない予防法について詳しく解説していきます。
-この記事でわかること-
- 普段の食事や日々の癖などが原因で、インプラント治療後に噛み合わせが変わる(悪くなる)ことはある
- インプラント治療後に噛み合わせが悪くなる主な原因は、①日常生活の癖(歯ぎしり・食いしばり・頬杖など)、②もともとの噛み合わせが悪い
- 噛み合わせが悪いインプラントを放置するリスクは、①虫歯や歯周病になりやすい ②インプラント・歯の寿命が短くなる ③噛むときに痛みが出て食事がしにくい ④顎関節症を引き起こしやすい ⑤肩こり・頭痛・胃の不調・健康不良 ⑥顔にもゆがみが出る可能性
- 噛み合わせを保つ方法は、①日常生活での癖を見直す ②歯科医院で定期検診・メンテナンスを受ける
インプラント治療後に噛み合わせが悪くなることはあるのか
インプラントを含む歯は、普段の食事や日々の癖などによってすり減りなどが起こるため、インプラント治療後に噛み合わせが変わる(悪くなる)ことはあります。
噛み合わせの悪さは自分自身で自覚することが難しい場合もあり、放置されることも多いのが現状です。そのため、治療直後は正しい噛み合わせであっても、徐々に噛み合わせが変化していくことを理解しておきましょう。
インプラント治療後に噛み合わせが悪くなる主な原因
ここでは、インプラント治療後に噛み合わせが悪くなる主な原因について見ていきましょう。
日常生活の癖(歯ぎしり・食いしばり・頬杖など)
普段何気なく生活している中で、無意識に行っていることが原因で噛み合わせが悪くなることがあります。代表的な癖は以下の通りです。
- 歯ぎしり、食いしばり…歯や顎に過度な力が加わることで、噛み合わせが悪くなる
- 頬杖をつく…日常的に片側へ力が加わることで、顎の形が歪んでしまい噛み合わせに影響が出る
- 舌の癖…舌で歯を押したり、前に出したりする癖があると、歯の位置が少しずつズレて噛み合わせが変わる
どれも無意識で継続的に行ってしまうもののため知らず知らずのうちに少しずつ噛み合わせが変わり、インプラント治療直後の正しい噛み合わせの位置を保つことが難しくなります。そのため、まずは癖を直すところから始めなければいけません。
もともとの噛み合わせが悪い
インプラント治療を行う際、インプラントに余計な負担がかからないよう噛み合わせも考慮したうえで治療を進めていきます。しかし、もともとの歯並びや噛み合わせはインプラント治療で変えることはできません。
そのため、もともとの噛み合わせの悪さもあいまって治療後の噛み合わせに違和感をおぼえることもあるでしょう。
そのため、インプラント治療前に歯並びや噛み合わせを改善する別の治療を検討することも正しい噛み合わせを保つことにつながります。
インプラントの噛み合わせが適切でない場合に起こる不具合
インプラントの噛み合わせが適切でない場合には、インプラントだけに限らず、顎や他の歯にも悪影響があります。
具体的にどのような不具合が起きるのか、噛み合わせが「高い場合」と「低い場合」に分けて解説します。
噛み合わせが「高い」場合
本来、全ての歯が均等に噛み合うことで歯にかかる噛む力を分散しています。
しかし、噛み合わせが高いとインプラントだけに力が加わり、インプラントの不具合が起きやすくなります。
インプラント周辺の顎骨が吸収される
インプラント体は顎の骨に埋入され、インプラント体と顎の骨が結合することによって成り立っています。そこへ集中的かつ継続的に力が加わってしまうと顎への負担が増加し、インプラント周辺の顎の骨が吸収(溶ける)されてしまうのです。
顎の骨が吸収されてしまうと、インプラントを支えることが難しくなり、最終的にはぐらつきや脱落の恐れがあります。
上部構造(被せ物)が破損する
上部構造(被せ物)は丈夫な素材でできているものの、強い力が加わると欠けたり割れたりすることがあります。
また、インプラントの噛み合わせが高いと物を噛んだときに最初にあたる部分となり、噛んだ時の力を直接的に強く受けてしまい、破損トラブルにつながりかねません。
スクリュー部分が破損する
スクリューとは上部構造を固定するネジ部分で、天然歯でいう歯根膜の役割を果たしています。(歯根膜とは、歯に力が加わったときのクッションの役割を持ちますが、インプラントには歯根膜がありません。)
噛み合わせが高いとインプラント部分に対して過度な力が加わり、ネジが緩んでしまったり、上部構造だけではなくスクリュー部分も破損したりする可能性があるのです。
噛み合わせが「低い」場合
噛み合わせが低いと、インプラントと噛み合う歯が当たりづらくなり、正常な噛み合わせが崩れてしまいます。
具体的にどのような不具合が起きるのかを見ていきましょう。
噛みにくくなる、もしくは噛めない
本来、歯と歯が合わさることで食べ物をすりつぶしたり、噛み切ったり、噛み砕いたりすることができます。
しかし、インプラントが低いとその動作がやりづらくなり、さらには噛むことも難しくなる可能性が高いでしょう。
噛み合わせている歯が伸びてくる
歯は向かい合う歯と正しく噛み合うことで、今の位置を保てています。
しかし、インプラントが低いと向かい合いの歯は噛み合おうと伸びてくるため、結果的に今までの噛み合わせが崩れてしまいます。
噛み合わせが悪いインプラントを放置するリスク
噛み合わせが悪いまま放置してしまうと、インプラントだけではなく、健康な歯や全身状態まで悪影響を及ぼすことになります。
ここからは、噛み合わせが悪いまま放置してしまうことのリスクをご紹介していきます。
虫歯や歯周病になりやすい
噛み合わせが悪いということは、歯並びも悪いケースが多く、磨き残しやケアしづらい部分が生じやすくなります。その結果、汚れが溜まることによって虫歯や歯周病になる可能性が高まるのです。
また、インプラントは人工歯のため虫歯になることはありませんが、口腔内の清掃が行き届いていないと感染症のリスクが高まり、インプラント周囲炎を引き起こす可能性もあります。インプラント周囲炎は歯周病よりも進行のスピードが速いため、特に気を付けなければなりません。
インプラント・歯の寿命が短くなることも
噛み合わせが悪いと一部の歯に対して集中的に力が加わることがあり、その歯(インプラント含む)への負担が大きくなります。
長い期間をかけて力が加わり続けると、だんだん歯がすり減ってきたり、顎の骨が吸収されたりして最終的には歯がぐらつき、脱落する可能性もあるのです。
また、歯垢などの汚れだけでなく、過度な力によってもインプラント周囲炎になることがあります。結果的にインプラントや他の健康な歯の寿命を短くすることになるでしょう。
噛むときに痛みが出て食事がしにくい
噛み合わせが悪いと、一部の歯に過度な力が加わり神経を刺激することによって痛みが出ることがあります。
インプラントの場合は神経がないため歯そのものに痛みを感じることはありませんが、インプラントを支えている周りの歯茎に炎症が起きることで痛みを伴い、楽しく食事を摂ることができなくなるかもしれません。
顎関節症を引き起こしやすい
噛み合わせによる悪影響は歯だけではなく、顎への負担も大きくなります。これも、噛んだ時の力が片方の顎に偏ってしまうからです。
顎関節症の症状としては、口が開けにくい、噛むと顎が痛い、口を開け閉めするときに顎の音が鳴るなどがあり、これらの症状は、食事や会話など日常生活に対して大きな支障となるでしょう。
肩こり・頭痛・胃の不調・健康不良などに繋がる
噛み合わせが悪いと、全身のバランスが崩れたり、偏った力が加わることで肩こりや頭痛、姿勢の悪さにつながったりすることがあります。また、上手く咀嚼することができず消化不良を起こすことによって胃に負担がかかることも少なくありません。
このように、噛み合わせの悪さは口腔内の不調に限らず、全身の健康状態にも影響が出てくることを知っておきましょう。
顔にもゆがみが出る可能性がある
噛み合わせの悪さは、顔のゆがみにつながることがあります。というのも、左右どちらかに偏った噛み方をすることで、噛む回数が多い方の筋肉が発達して、片方の口角があがる、目の位置が異なるなど、左右のバランスが崩れるからです。
だからといって、今度は反対側を酷使すると痛みなどの別のトラブルが起きるため、左右対称にバランス良く噛むことを意識しましょう。
インプラント治療後の噛み合わせを保つための予防法
インプラント治療後も日常生活を快適に送れるよう、なるべく治療直後の噛み合わせを維持することが大切です。
そこでここからは、インプラント治療後の噛み合わせ正しく保つための予防法をご紹介していきます。
日常生活での癖を見直す
日常生活における癖は、インプラントを含む他の歯や顎に大きな負荷を与えるため、噛み合わせを保つためには取り除かなければいけません。
癖は無意識に行っていることがほとんどだからこそ、すぐに改善することは難しいかもしれませんが、癖があることを自覚し、意識的に見直すことが大切です。
また、歯ぎしりや食いしばりはナイトガードを活用することで、歯や顎の負担を減らすことができるため、歯科医院へ相談してみるのもよいでしょう。
歯科医院で定期検診・メンテナンスを受ける
インプラントの定期検診は、プロによるクリーニングだけではなく、噛み合わせやインプラントに不具合が起きていないかのチェックなども行っています。
何か不具合があれば、早急に対応してもらえるため、インプラントや健康な歯を長持ちさせるためにも、必ず歯科医院での定期健診を受けるようにしましょう。
また、口腔内の状態について自分自身で少しでもおかしいと感じる場合は放置せず、歯科医師へ相談してください。
インプラント治療後に噛み合わせが悪くなった時の対処法
ここからは、インプラント治療後「これまでと噛み合わせが違う気がする」「食事の際に噛みづらくなった」など、これまでとの変化を感じたら場合の対処法についてご紹介します。
少しでも違和感があれば噛み合わせを調整してもらう
日常生活を送る中で、「今までと何か違う」と少しでも違和感がある場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。最初はほんの少しの変化でも、期間が経てばたつほど大きなトラブルにつながることがあります。
歯科医院を受診することで早めの対処ができますし、今の口腔内の状態に合わせた噛み合わせの調整をしてもらうことも可能です。そのため、自分だけで判断せずまずは歯科医師に診てもらいましょう。
噛み合わせ調整の重要性
インプラント治療では、インプラントだけを処置するのではなく、全体のバランスを保つために噛み合わせの調整は欠かせません。というのも、噛み合わせがズレるとインプラントに対して過度な負荷がかかり、寿命を縮めてしまうからです。
また、インプラントに限らず健康な歯にも負担がかかるうえ、口腔内全体や全身のバランスが崩れることで様々な不具合が起きてしまいます。
そのため、インプラント治療を検討されている場合は、インプラント治療に特化しているだけではなく、噛み合わせを含めたお口全体の治療に精通している歯科医院選びが大切と言えるでしょう。
「インプラント 噛み合わせ」に関するよくある質問
インプラント治療において、噛み合わせは非常に重要な要素の一つです。インプラントと噛み合わせに関するよくある質問にお答えします。
インプラントの噛み合わせが悪いとどのような不具合が起こりますか?
インプラントの高さが「高い」、「低い」など噛み合わせが悪いと、噛みづらく食事がしにくい、向かいの歯が伸びてくる、インプラントが破損する、顎の骨が吸収されるといった不具合が起こりやすくなります。
また、この不具合を放置したままにしてしまうと虫歯や歯周病になったり、口腔内だけではなく肩こりや頭痛、胃の不調など全身の健康状態にも悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。
噛み合わせが悪いかどうか確認する方法はありますか?
本来、正しい噛み合わせは下の歯に対して上の歯が覆い被さるような状態です。明らかに上の歯が前に突き出している、もしくは受け口のような場合は噛み合わせが悪いと言えます。
また、今までのように噛めない、歯や顎に痛みを感じる、鏡を見た時に顔のゆがみを感じるといった場合は、歯の一部分に負荷がかかっていたり、噛み合わせのバランスが崩れていたりすることが考えられるため、日頃から不具合を見逃さないよう意識しましょう。
インプラント治療後に噛むと痛む場合はどうしたらいいですか?
インプラント治療後に噛むと痛む場合は、インプラントに強い力が加わり、周りの歯茎にも負担をかけていることが考えられます。痛みは我慢せず、違和感があればすぐに歯科医院を受診してください。
インプラントの高さや噛み合わせをチェックし、早急に対処をしてもらいましょう。
インプラント治療後に歯並びが悪くなることはありますか?
インプラントを入れることで歯並びが悪くなる、といった直接的な影響はありません。ただ、インプラント治療後に何らかの原因で噛み合わせが悪くなることで、歯並びに対しても影響を及ぼすことは考えられます。
現在の歯並びの状態を保つためにも、定期的な検診を心掛け、噛み合わせ・歯並びともに歯科医院で経過を観察しましょう。
インプラント治療後の噛み合わせが気になる方は歯科医院へ相談を
インプラントは天然歯とほとんど変わらない審美性や機能性を兼ね備えていますが、噛み合わせに対する違和感や長期間使用することでの不具合が生じる可能性があることは否めません。
お口の健康維持、そしてインプラントを長持ちさせるためにも、定期的な検診・メンテナンスを心掛け、何か不具合を感じたらすぐに歯科医院を受診するようにしましょう。
当院「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」では、噛み合わせを考慮したインプラント治療、また正しい噛み合わせを保てる治療後のメンテナンスも大事にしております。気になることやご不安に思われることなどがございましたら、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2024年11月5日