インプラント書籍執筆の院長が丁寧にご相談にのります

院長 高田 徹

お電話でお問合わせ

03-3393-4182

母子双方の安全のために知っておきたい妊娠中のインプラント治療(手術)のリスク

妊娠中は体調の変化が起きやすく、普段なら問題ない通常の医療行為も母子の安全のために慎重に対応しなければなりません。また、身体的な面のみならず精神的にも不安定になりやすい時期です。

そんな中、インプラント治療をはじめとした妊娠中の歯科治療について、不安を抱く方も多いでしょう。

「妊娠中にインプラント治療を始めてもいいのか?」
「もしインプラント治療の途中に妊娠が分かったらどうしたらいいんだろう…」
「インプラント手術のときに麻酔を使うみたいだけど、お腹の中の赤ちゃんに影響はないの?」

そんな疑問を持つ方のために、本記事では妊娠中のインプラント治療について、そもそも治療を受けられるのか、知っておきたいリスクや治療中に妊娠した場合の対処法などを詳しく解説いたします。

-妊娠中にインプラント治療を受けるリスク6つ-
  • リスク①レントゲン撮影や歯科用CTによる胎児への影響
  • リスク②治療中の「仰向け」の体勢による負担
  • リスク③インプラント治療中の出血とそれに伴う早産のリスク
  • リスク④つわり時の母体への負担
  • リスク⑤麻酔薬や手術後の投薬による影響
  • リスク⑥長期間の通院による疲労やストレス

ぜひ最後までご覧ください。

妊娠中でもインプラント治療は可能?

はじめに、妊娠中でもインプラント治療が可能かどうかについてみていきます。

妊娠中でもインプラント治療は受けられる

結論から申し上げると、妊娠中でもインプラント治療は受けられます。

ただし、多くの歯科医師は妊娠中のインプラント治療をおすすめしません。

妊娠中のインプラント治療は控えた方がよい

先ほど妊娠中でもインプラント治療は可能とお伝えしましたが、妊娠中のインプラント治療は控えるべきです。その理由は、インプラント治療が「外科治療(手術)」を伴う治療であるからです。

妊娠中は予期せず体調が急激に変化することがあります。ほんの些細なことでもトラブルを引き起こす恐れがあります。

インプラント治療はインプラント体を骨に埋めるという大がかりな外科手術を伴います。ただでさえ不安定な状態の中、外科手術を行うことで様々なリスクが生まれてしまうのです。

そのため、特別な事情がある方以外は控えることが多く、妊娠中のインプラント治療をおすすめする歯科医師はいないと言ってもよいでしょう。

また、妊娠中であるということは、身体は自分だけのものではありません。お腹の中に大切な赤ちゃんがいることを考えると、できる体内に薬物を入れない方がよいとされています。

その点、インプラント治療では手術の際に麻酔を伴うほか、痛み止めなどの薬を服用しなければなりません。これらは場合によっては赤ちゃんに影響があると言われています。

そのため、妊娠中の方やこれから妊娠を希望している方は、胎児や母体への影響を考え、インプラント治療を受ける時期を慎重に考えることが必要です。

妊娠中にインプラント治療を受けるリスク6つ

妊娠中にインプラント治療を受けることには様々なリスクが伴います。

母体だけではなく、お腹の中の赤ちゃんにも悪影響を及ぼす可能性があるため、リスクをよく理解したうえで治療を受けるべきか判断すべきです。

ここからは妊娠中にインプラント治療を受ける6つのリスクについて説明していきます。

リスク①レントゲン撮影や歯科用CTによる胎児への影響

インプラント治療では、手術の前の検査において、血管や神経の位置、骨の量を確認するためレントゲン撮影や歯科用CTが必ず用いられます。

身体に悪影響がある被ばく量は200mSvに対し、一般的なレントゲンの被ばく量は0.06mSvと極少量ではあるものの、レントゲン写真を撮ると少なからず放射線を浴びることになります。

また、近年では歯科用CTを用いる歯科医院も増えてきています。より口内の状態を詳細に検査するために使われるこの歯科用CTはレントゲンよりも放射線の被ばく量がやや多いとされています。

もちろんどちらもお腹に直接照射するわけではありませんし、わずかな量ではありますが、100%安全という保障はありません。

また、成人にとって全く影響のない被ばく量でも、体の小さい胎児にとっては安全とは限りません。胎児や母体に大きな影響を及ぼす可能性は限りなく低いものの、少しでもリスクがあるということは知っておく必要があるでしょう。

リスク②治療中の「仰向け」の体勢による負担

妊娠中にお腹が大きくなってくるとさまざまな臓器が圧迫されます。加えて、歯医者では当たり前の「仰向け」の状態での治療は身体に大きな負担をかけてしまうのです。

仰向けの状態を長時間続けると、腹部大動脈という重要な血管が圧迫されてしまいます。この腹部大動脈が圧迫されると気分が悪くなりやすくなったり、吐き気をもよおしたり、酷い場合には意識障害が起きたりするため、母体にとっても胎児にとっても大変危険です。

インプラント治療は虫歯治療などに比べて長時間の手術、治療が必要となるため特に、この圧迫のリスクは高まることが考えられるでしょう。

リスク③インプラント治療中の出血とそれに伴う早産のリスク

インプラント治療で行う外科手術は、通常の治療に比べて多くの出血を伴うことあります。

普段であればそれほど問題がない出血でも、妊娠中においては母体の出血がホルモンの分泌作用をもたらし、その作用が子宮を伸縮させ、早産を誘発すると考えられているからです。

母体に大きな負担となる危険性に加えて、胎児にも影響を及ぼす可能性があります。

リスク④つわり時の母体への負担

妊娠中のつわりは想像以上の負担がかかります。つわりの状態やレベルは人によって異なるものの、多くの場合、口の中に何らかの刺激があると嘔吐反応が起こることが多いでしょう。

妊婦さんの中には、歯磨きどころか食事もままならず、生活に支障をきたす方もいるほどです。そんな状態では、インプラント治療どころではありません。

また、妊娠中期~後期にかけてつわりの症状が出てくることもあります。つわりの症状が酷くなると、インプラント治療を中断せざるを得ない状況になることも考えられるため、妊娠中にインプラント治療をはじめるのはおすすめできません。

リスク⑤麻酔薬や手術後の投薬による影響

インプラント治療をする際は、痛みを軽減させるための麻酔など、薬剤を用いることが多々あります。

もちろん、人間の健康に害がない量で使用することが定められていますし、歯科で使用される麻酔はレントゲン同様、通常の歯科治療であれば母胎へ影響することはありません。

ただインプラント手術では、通常の歯科治療よりも麻酔薬の量が多くなることが予想されます。それが母体と胎児に100%影響がないとはいい切れないのが現実です。

またインプラント手術では、術後の細菌感染を予防するために抗生物質が、痛みがある場合は鎮痛剤が処方されます。このようにインプラント手術後にも複数の薬剤を服用しなければなりません。

麻酔薬や服用する薬剤が必ずしも母胎へ影響するというわけではありませんが、たとえごくわずかなリスクであっても、リスクが考えられる限り控えるべきでしょう。

リスク⑥長期間の通院による疲労やストレス

インプラント治療を終えるまでには比較的長い期間が必要です。埋め込んだインプラントが顎の骨に定着するまでに長い時間を要するため、およそ半年から1年程度かかります。

身体がきつい中、この期間に何度も通院しなければならず、妊娠中の方にとってはそれが疲労の原因やストレスになることも多いでしょう。

妊婦さんはたとえ健康であっても体力を消耗しやすい状態です。もし体力の限界から通院自体が厳しくなれば、インプラント治療を中断しなければならなかったり、口腔内にトラブルを抱えたまま過ごさなければならなかったりと、様々な懸念があります。

安静が必要な妊娠中はできる限り母体を労わり、疲れやストレスを感じることなく出産の日を迎えることが何より大切です。急を要しない、特別な理由がない限りは無理にインプラント治療を受けなくてもよいでしょう。

インプラント治療中に妊娠した場合にやるべきこと

妊娠中にインプラント治療を無理に始める必要はありませんが、もしインプラント治療中に妊娠が発覚した場合、どうしたらよいのでしょうか。

妊娠が分かったときにやるべきことについて解説していきます。

かかりつけの歯科医師にすぐに相談を

インプラント治療を開始してから妊娠が発覚した場合、まずは担当の歯科医師と、産婦人科医への早急な連絡が必要です。双方の医師に相談のうえ、今後の治療方針を決定していくのが一般的です。

また、もし歯科医師が患者様の妊娠を認識していなかった場合、流産や早産等のリスクがある治療法がとられる可能性があります。反対に、妊娠を把握していれば、使わない薬剤もあります。

妊娠をきちんと伝えることによって、どこまで治療を進めるのか、どのような薬剤を使うのか、治療途中の歯はどのように対処するのかなど、安心かつ正しい方針が立てやすくなるでしょう。

母体・胎児への影響を限りなく減らすためにも、双方の医師と連携して対応していく必要があります。

治療の中断や応急処置が行われる場合も

インプラント治療中に妊娠が発覚した場合、「出産後に治療を再開する」ケースもすくなくありません。しかし、歯が抜けたままの状態が長く続くことは避けたいところです。

そこで、本来であればインプラントが入る部位に、仮歯や入れ歯など一時的に機能面や見た目を補う処置が行われるのが一般的です。

こうした治療に関する判断は、担当の歯科医師によって異なるほか、患者様のお口の状態や健康状態、妊娠週数によっても異なりますので、綿密な打ち合わせが必要となります。

「インプラント 妊娠中」に関するよくある質問

最後に、妊娠中のインプラントに関するよくある質問にお答えします。

妊娠中にインプラント治療を受ける適切な時期とは?

妊娠中に起こり得るさまざまなリスクを考えると、外科手術を伴うインプラント治療はやはり妊娠中には控えるべきです。胎児や母体への影響を考え、時期に限らずインプラント治療を受けることは避けたほうが安心でしょう。

もし、インプラント治療中に妊娠発覚した場合には、多くの場合は妊娠が分かった時点で治療を中断します。必ず担当の歯科医師や産婦人科の医師に相談しましょう。

第三者の目線からインプラント治療を判断してもらうことで、より納得したうえで安心して次の対処にうつれるでしょう。

妊娠中に歯が抜けた…”インプラント以外の適切な治療法はある?

妊娠中に歯が抜けた場合、インプラント治療以外であれば、「仮歯」や「部分入れ歯」、「ブリッジ」などの治療が用いられます。

妊娠中、インプラント治療を避けなければならないとはいっても、失った歯をそのままにしておくのは、見た目も気になり、機能(食事や会話)的にも不便です。

そうした場合に、インプラント治療に変わる処置として、上記のような治療で一時的に歯を補い、出産後にインプラント治療を行うケースが多いでしょう。

妊活中にインプラント治療をする場合のタイミングは?

妊活中にインプラント治療を考える方もいるかもしれません。妊娠は何より嬉しいことだと思いますが、妊娠中のインプラント治療には様々なリスクが伴うことを知っておかなければなりません。

妊娠前にインプラント治療を開始する場合は、妊娠発覚後に治療を中断しなければならない可能性を頭に入れておきましょう。

なお、インプラント治療は半年~1年という比較的長い治療期間を要します。そのため、安心して落ち着いて治療をしたいとお考えであれば、出産後のタイミングでインプラント治療を検討してみてください。

出産後、授乳中のインプラント治療はリスクある?

出産を終え、授乳中の人もインプラント治療は避けたほうがよいとされています。というのも、インプラントの治療後にも鎮痛剤や抗生物質が処方されるからです。

痛みや腫れを抑え、細菌感染を防ぐためにも、処方された薬は飲まなければなりません。授乳中でも服用できる薬はありますが、薬によってはごくわずかな量が母乳へ移行し、影響を及ぼす可能性があると考えられています。

そのため、無事に赤ちゃんを出産したからといってすぐにインプラント治療を行うのではなく、3ヶ月以上過ぎて状況が整ったあとにスタートするのがおすすめです。

母子の安全が第一!妊娠中はインプラント治療を避けるのが安心

妊娠中のインプラント治療は、絶対不可能というわけではありませんが、さまざまなリスクがあるため控えるのが賢明な判断です。

妊娠前に治療を完了させておくか、出産後落ち着いてから治療に専念していただくことをおすすめします。

歯の治療ももちろん大切ですが、妊娠中は何よりお腹の中の赤ちゃんのこと、ご自身(母体)の健康を優先してくださいね。

妊娠中のインプラント治療や、そのほか気になることがありましたら、お気軽に「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」へご相談ください!

カテゴリー:インプラント&歯科ブログ   投稿日:2024年6月12日