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院長 高田 徹

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インプラントにおける「ソケットリフト」とは?治療法(術式・流れ)や費用を解説

インプラントを埋入するうえで必須条件になるのが、骨の量が十分にあることです。骨量が不足しているとインプラントを埋入しても上手く結合することができず、インプラント治療が失敗に終わってしまうかもしれません。そこで、骨量を増やす方法として用いられるのが「ソケットリフト」です。

この記事では、インプラントにおける「ソケットリフト」とはどのような治療なのかを詳しく解説します。また、治療法(術式・流れ)や費用も併せてご紹介するため、インプラント治療をご検討の方は、ぜひ参考にしてください。

この記事で分かること
  • ソケットリフトとは、上顎の骨を補いインプラント治療を可能にする骨造成の一つ
  • ソケットリフトの適応は「骨の厚みが5mm以上かつ小さな範囲」の場合、サイナスリフトの適応は「骨の厚みが5mm以下かつ広範囲」の場合
  • ソケットリフトのメリットは「身体的負担を抑えられる」「治療期間が短くて済む」、デメリットは「上顎洞粘膜が破れるリスクがある」「歯科医師の経験・技術力によっては失敗するリスクがある」「費用が高くなりがち」
  • ソケットリフトは麻酔の注射時の痛みのみで、手術中の痛みは基本的にほとんどない
  • ソケットリフトを行う上で大事なことは「信頼できる歯科医院選び」「健康状態を整える」

ソケットリフトの術式

ソケットリフトは、上顎にインプラントを埋入するのに骨量が不足している場合に用いられる骨造成(骨を増やす手術)の一つで、上顎の奥歯の上にある上顎洞部分に骨を補います。

上顎洞を覆うシュナイダー膜を押し上げながら、骨補填を行うことで骨の厚みを確保し、安全にインプラントが埋入できるようにします。

ソケットリフトはある程度骨の厚みがある際に適応されるため、基本的にインプラントの埋入と同時手術が可能であり、患者様の身体的負担を軽減できるのが魅力といえるでしょう。

「ソケットリフト」と「サイナスリフト」の違い

ソケットリフトとサイナスリフトは、どちらも上顎の骨を増やしインプラント治療を可能にする手術ですが、その手法と適用条件が異なります。ソケットリフトは、骨の厚さが5mm以上あり、一歯分の小範囲での埋入が可能な場合に適用され、インプラントと同時手術が可能です。

一方で、サイナスリフトは、骨の厚さが5mm以下や広い範囲にわたり多くの骨が欠損している場合に行われます。サイナスリフトでは、骨の再生が必要な範囲が広いため、身体への負担が大きく、手術後にインプラント埋入まで時間がかかることが多いです。

ソケットリフトのおおまかな流れ

ソケットリフトは骨を補う治療のため、外科手術を伴います。ここでは、ソケットリフトの治療をどのように進めていくのか、おおまかな流れをご紹介します。

歯肉を切開し、骨に穴を開ける

まずは手術箇所に局部麻酔を行います。歯肉を切開した後、専用のドリルを用いて顎骨に穴を開け、骨を補う部分を確保します。この際、シュナイダー膜と呼ばれる上顎洞と歯槽骨の間の重要な膜を傷つけないよう慎重に行わなければなりません。

切開の範囲は必要な箇所だけを開くため、術後の傷口の回復がスムーズになります。

骨補填材を充填する

穴が開いた後は、骨補填材を充填することでシュナイダー膜が少しずつ押し上げられ、インプラントを支えるのに必要な骨の厚みを確保することができます。

骨補填材は顎から採取した自家骨や人工骨が用いられます。

インプラントを埋入する

ソケットリフトの場合、補填する骨の量や範囲が少ないため、基本的にインプラント埋入は同時に行うことがほとんどです。

術後、骨の再生やインプラント体と骨の結合を待つ必要があるため、期間を置き、インプラントが安定したのが確認できたら人工歯を装着します。

ソケットリフトにかかる費用の目安

ソケットリフトは自費診療のため、完全自己負担となります。歯科医院によって費用はそれぞれ異なりますが、3万円~10万円程度が相場です。

なお、使用している材料や骨補填を補う範囲などによっても費用は異なるため、事前に歯科医院に確認しましょう。

ソケットリフトのメリット

ソケットリフトは、上顎のインプラントを検討している方にとって安心・安全に治療を受けるための一助となります。下記では、ソケットリフトのメリットについてご紹介します。

サイナスリフトに比べて患者様の負担を抑えられる

ソケットリフトは、サイナスリフトに比べて手術範囲が狭くなるため、結果として患者様への身体的負担を最小限に抑えることができます。一般的に、手術の範囲が広がると出血や腫れなどの術後の負担が増える傾向にありますが、ソケットリフトの場合、そのような負担が軽減されるのです。

また、手術後の回復も比較的早く、患者様の日常生活に対する影響も少なく済むことが多いため、忙しい生活を送っている方にも適した治療方法と言えるでしょう。

治療期間や回数が少なくて済む

ソケットリフトは、インプラントの埋入を同時に行うことが可能であるため、治療の回数を減らすことができ、全体の治療期間も短縮されます。

サイナスリフトの場合は補う骨の量が多い上に、広い範囲の手術を要するため、処置の後に一定の回復時間が必要で、インプラントの埋入は別の日程を設定しなければなりません。

しかし、ソケットリフトではそのような待機期間を設けることなく、手術当日にインプラントの埋入が完了することができるため、忙しい方や早期に治療を完了させたいと考えている方にとっては非常に大きなメリットとなるでしょう。

ソケットリフトのデメリット

ソケットリフトは高度な技術を要する難易度の高い治療のため、それだけリスクも伴います。下記では、ソケットリフトを行う上でのデメリットについてご紹介します。

上顎洞粘膜が破れるリスクがある

ソケットリフトでは、上顎洞粘膜という薄い膜を持ち上げながら骨補填を行うのですが、手術の際にはこの粘膜の状態を目視することはできないため、手術中に傷つけたり、破れてしまうリスクが伴います。

誤って上顎洞粘膜が破れてしまった場合、副鼻腔炎や蓄膿症、上顎洞炎を発症することがあります。

歯科医師の経験・技術力によっては失敗するリスクがある

ソケットリフトは難易度が高く、非常に繊細な手技が求められるため、担当する歯科医師の経験や技術力が成否を左右します。そのため、経験不足の歯科医師が手術を行った場合、意図しない失敗やトラブルが発生する可能性があります。

こうしたリスクを避け、安心して治療を受けるためには、豊富な経験や実績と高い技術を持つ歯科医師を選ぶことが大切になるでしょう。

費用が高くなりがち

ソケットリフトは自費診療のため、費用が高額になる傾向があります。手術には高精度な技術と専門知識を必要とし、その結果、治療にかかるコストが増加するのです。

加えて、術後のケアや定期的なメンテナンスも必要になるため、トータルで考えた際の費用は予想以上に高くなることがあるでしょう。

費用面での負担は多くの患者にとって大きな障壁となることがあるため、治療を受ける前にきちんとした費用の見積もりと、必要な情報をしっかり確認することが大切です。

ソケットリフトの痛みについて

ソケットリフトは治療範囲が小さいため、痛みや腫れが最小限に抑えられるのが特徴の一つですが、外科手術を行うことに変わりはないため、不安要素の一つに痛みが含まれている方も多いのではないかと思います。

下記では、ソケットリフトの痛みについて詳しく解説します。

麻酔注射の痛みはある

ソケットリフトでは歯茎を切開し、ドリルで骨に穴を開ける外科手術を要するため、まず初めに必ず局部麻酔を行います。

麻酔注射の針がチクッと刺さる際の少しの痛みはありますが、注射前に痛みを和らげる表面麻酔を施すことがほとんどのため、我慢できる程度の痛みで済みます。

手術中の痛みは基本的にない

前述した通り、手術前に局部麻酔を行うため、手術中に痛みを感じることは基本的にありません。手術中は患者様の状況を細かくチェックし、必要な場合は麻酔を追加しながら行うため、安心してください。

ただし、ドリルで削る振動や患部にかかる圧を感じたり、器具の音は聞こえます。そのため、歯科や手術に対して極度に不安を感じる方や音が苦手な方は、静脈内鎮静法を選択されると良いでしょう。この麻酔は、半分眠ったような感覚になり、リラックスした状態で受けることができます。

手術後は傷口の痛みや骨造成による痛みや腫れがでることもある

手術後の痛み加減には個人差がありますが、傷口の痛みや骨造成による痛みや腫れが出ることがあります。これは、修復する過程で現れるごく一般的な症状であり、術後3日程度でピークを迎え、10日前後くらいで落ち着くことがほとんどです。

術後は処方された薬を適切に服用し、患部が落ち着くまでは安静にしましょう。なお、痛みや腫れがひどい場合や長く続く場合には感染症を引き起こしているリスクがあるため、早めに歯科医院へ受診してください。

ソケットリフトを行う上で大事なこと

ソケットリフトは比較的安全性の高い歯科治療の一つですが、その成功には慎重な検討と準備が不可欠です。ソケットリフトを行う上で大事なことは、主に下記の2つが挙げられます。

信頼できる歯科医院を選ぶ

ソケットリフトの成功には、信頼できる歯科医院の選定が肝要です。まず、インプラント手術後のメンテナンスを見据えて、長期的に通える歯科医院を選びましょう。

信頼できる医院では、丁寧なカウンセリングが行われ、治療内容やリスクについてしっかり説明します。特にインプラント専門医が在籍していると、より高い技術と知識に基づいた治療が期待できます。

その他にも、院内が清潔であること、歯科治療全般に精通していること、定期健診の体制が整っているかも確認しましょう。こうしたポイントをチェックし、自分に合った歯科医院を見つけることで、安心してソケットリフトを受けることができます。

健康状態を整える

インプラントは外科手術を伴うため、全身の健康状態によっては手術中や手術後に感染症やトラブルを引き起こすリスクが高まります。例えば、糖尿病や高血圧、心疾患、骨粗しょう症などの全身疾患をお持ちの方は、治療が難しい場合があります。

ただし、病状や服用している薬の調整によっては治療が可能になるケースも十分にあるため、まずは歯科医とかかりつけ医に相談しましょう。

また、普段喫煙習慣のある方も見直しが必要です。喫煙は血流を悪くし、傷口や骨の回復を妨げる原因となり、インプラント治療が失敗に終わってしまうかもしれません。そのため、治療期間中はもちろん、治療後も継続して禁煙することをおすすめします。

「インプラント ソケットリフト」に関するよくある質問

インプラント治療におけるソケットリフトについて、よくある質問をまとめました。疑問や不安を解消したうえで治療に臨めるよう、ぜひ参考にしてください。

ソケットリフトを行う場合のインプラント治療期間はどれくらいですか?

ソケットリフトを行う場合のインプラント治療の期間は、約3~4ヶ月程度です。ソケットリフトとインプラント体の埋入を同時に行うため、治療に要する時間を短縮することができ、患者様の身体的負担を軽減することができます。

ソケットリフトは失敗することがありますか?

ソケットリフトは失敗するリスクが少ない治療ですが、高度な技術を要する手術のため、必ずしも失敗しないと言い切ることはできません。主な失敗の原因としては、手術中に上顎粘膜を貫通してしまうことが挙げられ、これが上顎洞炎につながるリスクがあります。

このリスクを軽減するためには、経験や実績が豊富な歯科医師による施術が不可欠です。安心安全に治療が受けられるよう、信頼できる歯科医院を選択しましょう。また、術後のケアや患者様の健康状態に気を付けることも治療を成功させるための重要な要素です。

ソケットリフトでインプラント治療を実現しましょう

ソケットリフトは上顎の骨量が不足している場合でも、インプラント治療を可能にする骨造成の一つであり、手術の範囲が少なく、治療期間も短いため、患者様の身体的負担を軽減できる魅力的な治療法です。

ただし、高度な技術を要する治療だからこそ、治療を成功させるためには信頼できる歯科医院選びが欠かせません。

当院「高田歯科クリニック(東京都杉並区)」では、患者様一人一人に合わせたカウンセリングやご提案を行っております。ソケットリフトやインプラント治療について気になることがありましたら、ぜひ当院へお気軽にお問い合わせください。

カテゴリー:インプラント&歯科ブログ   投稿日:2025年5月7日