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院長 高田 徹

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インプラントで歯並びが悪いのは変わるのか?矯正治療(歯列矯正)との違いも解説

インプラントは、天然歯と遜色のない審美性の高さと噛み心地を得られる有効な治療法です。治療後は他の歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりが期待できるため、歯並びの悪さも治せそうだとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

実際、「インプラントで歯並びは直せるのか」「インプラントをしたあとに矯正できるのか?」、「インプラントと矯正治療はどっちを先に始めた方が良いのか」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、インプラント治療の概要や矯正治療との違い、治療の順番などについて詳しくご紹介していきます。

《インプラント治療と矯正治療の違い》

大前提:インプラント治療で歯並びは変えられない!

インプラント治療 矯正治療
治療目的 失った歯を補い、機能を回復させるため 歯並びをキレイにする、噛み合わせの改善のため
治療方法 インプラント体を顎の骨に埋め込み固定し、そのうえに人工歯を装着する 矯正装置を付けて時間をかけて歯を動かす

場合によっては抜歯も必要

かかる費用 1本あたり30~40万円程度 30~150万円程度
治療期間 約半年~1年 約半年~3年

インプラントに関する正しい知識を身につけ、自分に合った治療法を選択するためにもぜひ最後までご覧ください。

インプラント治療とは

インプラント治療とは、失った歯を補い、歯としての機能を回復させるために、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療のことです。

インプラント治療の最大の特徴は、失った歯の機能を回復し、天然歯と同じような自然な見た目・噛み心地・噛む力を実現できることにあります。

失った歯を回復させるために行うものであるため、基本的には歯列の”一部分“が治療対象となります。むし歯や歯周病、事後による外傷などで失った歯に対し、独立して歯を再建できるため、ブリッジのように両隣の健康な歯への影響が少ないことも特徴のひとつです。

しかしながら、外科手術が必要であることや治療期間の長さ、高額である点も理解しておく必要があるでしょう。

インプラントは歯並びが悪いのを治す治療法ではない

インプラント治療では、歯並びを整えることはできません。それは、インプラント治療が矯正治療ではないからです。あくまで失った歯を補うための治療法であることから、歯並びを治す目的でインプラント治療が行われることはありません。

もちろん、審美性が高いことから、結果的にインプラントが矯正治療に相当するような見た目の変化をもたらしてくれることもありますが、歯並びの改善は副次的な効果に過ぎません。矯正治療の代替手段とはならないことをしっかり理解しましょう。

インプラント治療には外科手術が必要

インプラント治療では、失われた歯に代わるインプラント体を顎の骨に埋め込みます。歯茎を切開し、顎の骨に穴を開けるという歯科の中では大がかりな外科手術が必要です。

局所麻酔や静脈内鎮静法などを併用して行われることが多いのですが、外科手術のため全身管理が求められます。多少なりともリスクがあるため、特定の持病がある場合には、インプラント治療を受けることが難しいこともあります。

以下のケースに該当する方は、インプラント治療ができない、もしくは難しいとされています。

  • 持病がある(糖尿病・免疫不全・白血病・高血圧・骨粗しょう症など)
  • ガンなどで放射線治療中
  • 重度の歯周病
  • 喫煙
  • 歯ぎしりや食いしばりの癖がある
  • 子どもや妊婦

そのほか、服用中の薬がある場合は相談が必要です。

歯並びを改善するなら「矯正治療(歯列矯正)」

それではどうやって歯並びの問題を改善するのかというと、一般的に用いられるのが、歯並びを矯正して噛み合わせを改善する「矯正治療」です。歯や顎の骨にゆっくりと力と時間をかけて今ある歯を徐々に移動させて歯並びを整えていきます。

矯正治療は主に、ブラケットとワイヤーを使用する従来型のタイプと、目立ちにくい透明なマウスピースを用いるインビザラインなどがあります。個人差はありますが、一般的には数ヶ月から数年の治療期間です。

また、矯正治療は見た目だけでなく、噛み合わせの改善により顎の関節や筋肉への負担を軽減します。また、長期的な視点で見ると、キレイな歯並びは口腔衛生を保ちやすくし、将来的な歯のトラブルを防ぐのにも一役買ってくれるでしょう。

一方で、治療には費用と時間がかかること、定期的な歯科診療が必要になることなど、事前に理解しておくべき点もあります。

インプラント治療と矯正治療(歯列矯正)の違い

ここからはインプラント治療と矯正治療の違いについて解説していきます。

《インプラント治療と矯正治療の違い》

インプラント治療 矯正治療
治療目的 失った歯を補い、機能を回復させるため 歯並びをキレイにする、噛み合わせの改善のため
治療方法 インプラント体を顎の骨に埋め込み固定し、そのうえに人工歯を装着する 矯正装置を付けて時間をかけて歯を動かす

場合によっては抜歯も必要

かかる費用 1本あたり30~40万円程度 30~150万円程度
治療期間 約半年~1年 約半年~3年

治療目的

インプラント治療と矯正治療は、どちらも口腔内のトラブルに対処する治療方法ですが、治療目的が大きく異なります。

インプラント治療は、失われた歯を補い、機能を回復させることが主な目的です。これに対して矯正治療は、歯並びや噛み合わせの改善を目的としています。

要するに、インプラントは「ない歯を補う」治療であり、矯正治療は「ある歯の位置を整える」治療です。

治療方法

インプラント治療では、外科手術で歯茎を切開し、顎の骨に穴を開けてインプラント体を埋め込みます。インプラント体と顎の骨が結合するまで数ヶ月待ってから、連結装置であるアバットメントと人工歯を装着するのが通常です。

矯正治療は、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つに分けられます。ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを歯列に固定する方法。マウスピース矯正は、透明なマウスピースを装着して歯を動かす方法です。

インプラントは外科的な手術が伴いますが、矯正治療は非外科的で長期間に渡る調整が必須となります。

治療にかかる費用

インプラントは、1本あたり30~40万円程度が相場です。一方、矯正治療は30~150万円ほどの費用がかかります。

インプラント治療も矯正治療も保険が適用されないため、治療にかかった費用は全額自己負担が基本です。

ただし、インプラントは先天性の疾患や事故により広範囲にわたって顎を損傷した場合など、特定のケースでは保険適用となります。

治療できる適応条件

インプラント治療と矯正治療では治療できる適応条件が異なります。インプラント治療は、1本以上の歯を失った場合に適していますが、歯を支える骨に問題がある、顎の成長途中の18歳未満の子ども、持病がある場合などはインプラント治療を受けることができません。

一方、矯正治療は、歯並びや噛み合わせの問題を改善するための治療であり、子どもの歯と永久歯が混在する時期から、基本的に”いつでも“治療することができます。(※小児矯正は特定の成長期にしかできません。)

インプラントと矯正はどっちが先?優先すべき治療について

インプラントと矯正のどちらを先に行うべきなのかは、患者様の口腔内の状態などによって判断されますが、一般的には「矯正治療を先に始めた方が良い」と言えます。

“何となく”で治療の順番を決めてしまうと、結果として大きな問題が生じる可能性もあるため、慎重に進めていきましょう。次の項では、インプラント治療と矯正治療の「順番」に着目して解説していきます。

歯並びを直したい場合は矯正治療を先にする

歯並びをどうにかしたいと思っている方は、基本的に矯正治療を先に行ってからインプラント治療を進めるのが一般的です。

矯正治療を先に始めた方がいい理由

矯正治療を優先する理由は、インプラントを矯正で動かすことができないからです。

これまで何度かお伝えしましたが、インプラント治療は顎の骨にインプラント体を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。顎の骨にしっかり固定されるため、インプラント治療完了後に矯正器具によって人工歯の位置を変えることはできません。

逆に言えば、矯正治療を先に行い、キレイな歯並びに整えることで、インプラントを適切な位置に入れられるというわけです。

そのため、インプラント治療と矯正治療のどちらも検討している方は、先に矯正治療を行うのが最適だと言えるでしょう。とはいえ、インプラントを入れる部位が矯正に影響しない場合や、実際のタイミングなどはお口の状態などでも異なるため歯科医院に相談しましょう。

インプラントがすでに入っている場合も矯正治療が先

インプラントがすでに入っている場合でも、矯正治療自体は可能です。ただし、インプラント自体は移動しないため、矯正計画を綿密に立てる必要があります。

特に本数が多い場合や位置によっては、歯列治療による周囲の歯の動きを考慮し、インプラント周囲の骨や歯肉に負担をかけないよう配慮しなければなりません。

場合によっては矯正が難しくなることもあります。適切な治療方法は、患者の口腔の状態と矯正目標によって異なるうえ、検査をしてみないことには治療計画が定まりません。まずは歯科医院で相談・検査を受けましょう。

【例外】インプラント治療を先に選択するケースもある

例外的ではあるものの、矯正治療よりも先にインプラント治療を始めるケースもあります。ここからはインプラント治療が優先されるケースをご紹介していきます。

失った歯の機能をすぐに回復させたい・歯がない状態を長期間放置できないケース

失った歯の機能をすぐに回復させたい、歯がない状態を長期間放置できない場合は、インプラント治療を優先することもあります。

歯はたった1本だけでも、失っていると不便ですし、咀嚼能力が低下して「食べ物が噛めない」「呼吸がしにくい」など日常生活に影響を及ぼすことも多いでしょう。

特に、前歯を失った場合は発音に支障をきたすほか、見た目の問題も生じます。インプラント治療は自然な見た目を早期に取り戻すことができるため、社会生活や精神的な不安を解消するうえで迅速な解決策となり得るのです。

ただし、インプラント治療には十分な骨の質と量が必要であり、全ての方にすぐに適応できるわけではないため、まずは歯科医師の診断が不可欠です。

インプラントが矯正治療に影響を与えないケース

インプラントは矯正で動かせないとご説明しましたが、例えば、矯正で動かす必要がない部分にインプラントを入れるのであれば、矯正を後回しにしても問題ないケースもあります。

逆に、インプラントを起点として歯並びの矯正計画を立てることもあるなど、場合によってはインプラントが両方の治療を成功させる道筋を描くことができるかもしれません。

口腔内の状態を検査し考慮したうえで、最善の治療計画を立てることが大切です。

歯並びの重要性や歯並びが悪いことによるリスク

歯並びは見た目のみならず、口腔内の健康状態にも重要な役割を果たします。

ここでは歯並びの重要性や悪い場合にどんなリスクがあるのかを見ていきます。

歯並びの重要性

歯並びの重要性は、見た目の美しさだけでなく、健康面でのメリットも大きいものです。適切な歯並びは噛み合わせを改善し、食事中の効率的な咀嚼を促進します。

これにより消化しやすくなり、栄養の吸収も助けます。さらにキレイな歯並びによって発音もクリアになり、コミュニケーション能力の向上にも役立つでしょう。そのほか、歯茎の健康にも良い影響を与え、歯周病などのリスク軽減にもつながります。

見た目だけでなく、「口腔内の衛生管理・健康増進」という観点でも、矯正治療は検討する価値ありです!

虫歯や歯周病など口腔内トラブルが起きやすい

歯並びが悪いと、虫歯や歯周病のリスクが高まります。歯の隙間や歯と歯が重なっている部分は特に磨きにくく、食べ物のカスが残りやすい環境を作ります。これがプラーク(歯垢)の蓄積に繋がり、むし歯や歯周病のリスクを高めてしまうのです。

また、歯間が不均等な状態だと歯ブラシの毛先が届きにくく、歯間にこびりついた歯垢が硬化して歯石に変わり、歯周病の原因ともなります。

さらに、噛み合わせも悪くなるため、噛む動作によって特定の歯に大きな負担がかかるでしょう。それによって歯を支える組織がダメージを受け、歯周病の進行を速めてしまうのです。

しっかり噛めない、消化不良になりやすい

歯並びが悪いと、よく噛むことが難しくなります。食べ物を十分に噛み砕けないまま飲み込むと胃腸に負担がかかり、消化不良を招くリスクが高まります。

また、噛む力が弱まることで噛みちぎりにくいお肉や野菜を避けたり、硬い物を食べなくなったりすることで栄養バランスが崩れる可能性があるのです。栄養を十分に摂れなければ全身の健康にも悪影響を及ぼすでしょう。

口臭の原因になる

不規則な歯並びによって歯磨きで隅々までお掃除するのが難しくなります。食べ物の残りカスが溜まりやすく、それが歯垢の蓄積につながり、結果的に口臭を招くのです。

見た目が気になり自信を持てない

歯並びの悪さは見た目にも大きな影響があります。見た目を気にして人前で笑えなくなる、他人とのコミュニケーションが億劫になる、口元が気になってマスクをつけなければ人前に出られなくなるなど、精神的な影響も懸念されます。

このような状況は日常生活において人との交流に消極的にしたり、社会生活や仕事上の第一印象にも影響を及ぼしたりする可能性があるでしょう。

顔のゆがみ・顎関節症

歯並びが悪いと、噛む際のバランスが悪くなり、口元や顔まわりの筋肉や骨の成長にも悪影響が出てしまいます。結果として、顔のゆがみや顎の未成長などの問題が起こることもあるでしょう。

また、重なっている歯や傾いた歯があると、特定の歯だけに大きな負担がかかってしまいます。このような状態が続くと顎に負担が蓄積し、顎関節症(がくかんせつしょう)を引き起こす可能性もあるのです。

発音が悪くなる

歯並びが悪いと、発音や滑舌の問題を引き起こすことがあります。

発音が悪いと人と話すことに不安や恥ずかしさを感じ、コミュニケーションを避けるようになる可能性があります。

「インプラント」と「歯並び」に関するよくある質問

最後に、インプラントと歯並びに関するよくある質問にお答えします。

インプラントによって歯並びが悪くなることはありますか?

インプラント治療によって歯並びが悪くなることは稀ですが、ないとは言えません。というのも、インプラントの位置が不適切だと、隣接する歯に悪影響を及ぼしたり、噛み合わせが不正になったりすることがあるからです。

ただし、これらは経験豊かな歯科医師による適切な診断と治療技術によって回避可能。では何が原因で歯並びが悪くなるかというと、主に「日常生活の癖(頬杖、食いしばり・歯ぎしり、舌の癖など)」が挙げられます。

そのほか日頃のケア不足や定期メンテナンスに通っていないなどで、歯茎などの口腔状態が悪くなって歯がグラつき、それによって歯並びが変わってくることもあるのです。

インプラントで部分的に歯並びをキレイにできますか?

インプラントは、失った歯を歯根から補い、回復できる唯一の治療法です。天然歯と変わらないキレイな人工歯は、歯の生えている位置や向き、形などはある程度自由に設定できます。

そういう意味でインプラントは、歯並びの乱れを部分的に良くすることは可能とも言えるでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、あくまでインプラント治療は失った歯の機能を補い、回復するための治療です。歯並びをキレイにするために行う治療ではありません。歯並びをキレイにしたい場合は「矯正治療」を受けましょう。

歯並びが悪い場合でもインプラントはできますか?

歯並びが悪い状態であっても、インプラント治療は可能です。ただし、歯並びの状態によっては、インプラントができない可能性があります。

歯並びの悪さがインプラントの埋入位置や角度に影響を与える可能性があるため、顎の骨の状態や周囲の歯の配置を慎重に検討しながら治療計画が立てられます。

必要に応じて、インプラントを行う前に矯正治療を行うこともあり、これによって歯並びが悪い方でもインプラント治療を受けることができるようになるので安心してください。

「インプラント治療」と「インプラント矯正」の違いは?

インプラント矯正とインプラント治療は全く異なるものです。

  • インプラント治療:失った歯を補い回復させる治療
  • インプラント矯正:矯正用のインプラントを使って歯を動かす方法

インプラント矯正は、決してインプラントで矯正できることを意味するわけではありません。歯を目的の位置まで移動したのち、矯正用のインプラントは速やかに撤去するため、通常のインプラントのように半永久的に自分の口の中に残り続けるものではないのです。

とはいえ、矯正用インプラントを併用した歯並びの治療は増えてきています。

インプラントや歯並びに関するご相談は高田歯科クリニックへ

インプラント治療と矯正治療は、目的も治療法も全く異なるものです。両方を検討している場合は何より「順番」が大切になります。

治療を受ける順番を間違えると、経済的な負担が大きくなるだけでなく、最終的な仕上がりや今後のお口の健康、全身の健康にまで大きな悪影響が及ぶことがあるかもしれません。

何よりご自身のお口の状態に最適な治療法は、検査してみないことには分からないため、まずは信頼できる歯科医師へ相談・診察を受けてみるのをおすすめします。

インプラント治療や歯並びに関するお悩みや気になることがございましたら、実績豊富な「高田歯科クリニック(杉並区荻窪)」へお気軽にご相談ください!無料相談も行っておりますのでぜひご利用ください。

カテゴリー:インプラント&歯科ブログ   投稿日:2024年5月9日