前歯のインプラントは難しい?費用や難しい理由、治療期間を解説
インプラントは歯の代替物であり、前歯・奥歯問わず手術できます。しかし、前歯の治療は奥歯に比べて難しいとも言われているのです。その理由は前歯の骨や、位置にあります。
前歯のインプラントが難しい理由
- 顎の骨が薄い
- 歯茎が下がると見た目が悪くなる
- 費用が高額
しかし、前歯こそインプラント治療を受けたほうがよいポイントも。
本記事では、前歯のインプラント治療の難しさや代替治療の方法、インプラントにするメリットを解説します。
前歯に関するお悩みをお持ちの方も、治療を諦める必要はありません。この記事を参考にインプラントを前向きに検討してみましょう。
1.前歯のインプラント治療は難しい
インターネット上の掲示板やSNS、個人ブログでの体験談を見ていると「前歯のインプラント治療は難しい」「痛かった」などの書き込みを目にすることがあります。治療を受けている側の感想で「難しい」というのは少し違うかもしれませんが、実は歯科医師からしても、前歯のインプラント治療は難易度が高いとされているのです。
その理由はさまざまありますが、主に以下の理由が代表的です。
- 顎の骨が薄い
- 歯茎が下がると見た目が悪くなる
- 費用が高額
3点目の「費用が高額」に関しては、治療の難しさから来る理由です。患者様側も歯科医師側も頭を抱える問題としてここでは取り上げます。
なお、奥歯のインプラント治療が簡単というわけではありません。あくまでも前歯の治療と比較した場合の話なので、勘違いしないようにしてください。
1-1.顎の骨が薄い
奥歯に比べて前歯のインプラント治療が難しいといわれているもっとも大きな理由は、顎の骨の厚さの違いにあります。インプラントの土台となるインプラント体は、顎の骨に埋め込む必要があるもの。そのためには顎の骨にインプラント体が埋め込める大きさの穴を空けなければなりません。
実は前歯を支える顎の骨は、薄いうえに痩せやすいという特徴があります。ご自身の舌や指で触ってみればわかると思いますが、奥歯の歯茎に比べて厚みがありません。ここに土台となるインプラント体を埋め込むことになるので、治療が純粋に難しくなるのです。
骨が薄い場合には、それを補うための「骨再生治療」を行わなければなりません。この治療で顎の骨が増えたのちに、改めてインプラント体を埋め込む手術を実施します。
1-2.歯茎が下がると見た目が悪くなる
簡単に前述しましたが、前歯の顎の骨は痩せやすく、歯茎下がりと呼ばれる減少が発生しやすいという特徴があります。これによって施術したインプラントの一部が、痩せた歯茎や骨を透けて見えてしまう可能性があるのです。
見えてしまうのはインプラント体と人工歯を接合しているアバットメントと呼ばれるパーツ。通常金属でできていることが多く、透けて見えるとインプラントのメリットである審美性に問題が出てきてしまいます。せっかく美しく見えていたのに、こうなってしまえば歯を見せて笑いにくくなってしまうでしょう。
歯茎下がりは普段の歯磨きの過程で、簡単にマッサージをすることで防ぐことができます。毎日のケアで、少しでも歯茎下がりが起きないようなケアを心がけてください。
1-3.費用が高額
前歯のインプラント治療は、上述のとおり場所の問題、および骨の問題で難易度が高い治療です。ただでさえ高度な外科手術の知識が必要で、高額になりがち。もし顎の骨の厚みが足りず、骨再生療法などを実施すれば、その分の治療費がかかってしまいます。一般的な治療費が30~40万円前後と言われているので、経済的にはかなり厳しい人もいるでしょう。
ただ、治療費が高額になるのは、顎の骨が薄く別途治療が必要になった場合の話。もし何の問題もなく治療できるのであれば、奥歯と同じ金額で治療を受けることが可能です。骨再生療法が必要かどうかの判断は、CT撮影をしないと判断できません。もし前歯のインプラント治療を検討している場合は、一度撮影だけでもしてもらうといいでしょう。
2.インプラント以外の選択肢
前歯を失った場合の選択肢には、インプラント以外の治療として次の2つがあります。
- ブリッジ
- 入れ歯
失っている本数にもよりますが、基本的にはインプラント治療を含めた3つのうちからどれかひとつを選択します。インプラントほどの費用をかけられない場合は、上記の方法から選択することになります。しかし、それぞれにデメリットもあるのでしっかりと覚えておきましょう。
2-1.ブリッジ
ひとつめの方法はブリッジです。審美性が高く、ものを噛む力もそれなりにあるので、困ることが少ないのがメリットです。保険適用で治療が可能なので、予算の面も安心です。両端の歯に抜けている部分の歯の代替物を被せて補うため、顎への負担が少ないのもメリット。発音に困ることもあまりありません。
デメリットはブリッジする両端の健康な歯を削らなければならないことです。治療の必要がない歯を削ることで、その歯が虫歯になりやすくなってしまいます。また、ブリッジには装着から8年前後という寿命があります。スパンが長いとはいえ、定期交換が必要なことを考えると、あまりコストパフォーマンスは高くないと言えます。
2-2.入れ歯
もうひとつの方法は入れ歯です。前歯だけの場合は部分入れ歯になり、着脱可能で手入れが非常に便利です。ブリッジ同様保険適用で治療できるので、予算的な問題をクリアできるケースもあります。また、ブリッジとは違い両サイドの歯を傷つける必要がないのもメリットです。
ただし、入れ歯の場合は噛む力が存分に発揮できない、発音がきれいにできないなどの問題が発生しやすいのがデメリットです。金具がついているとはいえ、あくまでも隙間に差し込んでいるだけなので、どうしても安定しません。また、入れ歯も歯並びや歯茎の状態によっては交換が必要になるもの。一度作ったからと言って半永久的に使うことはできません。
3.前歯をインプラントにするメリット
ブリッジと入れ歯のメリット・デメリットについて解説しましたが、総合的にはインプラントがもっともメリットがあると言えるでしょう。確かに保険適用外なので治療費は高いものの、長い目で見ればもっとも費用対効果が高い治療と言えます。また、ブリッジと入れ歯のデメリットをカバーできている側面もあります。
3-1.審美性が高い
インプラントは審美性が高い治療方法です。この恩恵は、奥歯よりも前歯で実感することが多いのがポイントです。前述の2つの方法で治療を受けても違和感なく仕上がることが増えていますが、中には保険適用外の素材を使わなければ審美性が担保できない場合もあります。その点インプラントでは、自然歯に近い色のセラミックで人工歯を作るので、審美性で劣ることがないのです。人工歯の部分を作る際にその点も考慮するので、特に心配することはないでしょう。
また、入れ歯のように金具が見えることもありませんし、歯茎が痩せてしまってもブリッジのように境界線がはっきりわかることもあまりありません。前歯に関してはインプラントでも目立つことはありますが、透けて見える程度で非常に目立つことはないでしょう。
3-2.治療で他の歯を傷つけない
インプラント治療では、顎の骨に穴を空けてインプラント体を埋め込みます。しかし、その周囲の歯には基本的に影響はなく、傷をつけることもありません。隙間が少ないからと言ってインプラント治療を行う歯の両側にある、触らなくてもいい歯を傷つけずに治療を行うことができるのです。
この点はブリッジによる治療のデメリットを解消しています。ブリッジの治療で両サイドの歯を削ってしまうと、その削った歯に以上が出た場合にブリッジを取り外して治療しなければなりません。被せ物が外れないことはありませんが、治療に手間がかかってしまうことは間違いありません。入れ歯のように歯並びがわずかに変わっただけで痛みを感じるようなこともないため、残される自然歯に対しても非常に有効な治療法といえるでしょう。
3-3.噛む力が強い
ブリッジや入れ歯と違い、インプラントは顎からの力をそのまま歯に伝えることができます。厳密には人工歯に対してですが、ブリッジや入れ歯で噛み心地に違和感を感じている場合は、インプラントに変えるだけで大幅に改善するでしょう。入れ歯では食いちぎりにくい肉類なども問題なくちぎることができるでしょう。歯で咀嚼しておくことで胃腸にかかる負担も軽減できるため一石二鳥です。ブリッジでも大きな力をかけなければ、食いちぎりの能力は気にしなくても済みますが、食べられるものの種類が格段に増えるのはいうまでもないでしょう。
また、噛む力が強くなることで、主に入れ歯ではしゃべりにくさを感じる問題も軽減されます。顎から直接力が伝わるため、発音がきれいにできるようになるのです。
3-4.他の歯への負担が少ない
インプラントは、ブリッジのように両サイドの歯に何か被せ物をすることもありません。また、入れ歯のように金具で引っ掻ける必要もないため、ほかの自然歯に負担をかけることがありません。インプラント以外の治療法が、ほかの自然歯の力を借りて固定するのに対し、インプラントはそれ単体で自立できているからです。治療に手間がかかる分、他の歯にかかる負担が軽減できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
また、噛むときに力がかかるのが顎なので、歯茎へのダメージが少ないのも特徴です。入れ歯やブリッジは、噛めはするもののその力は歯茎やほかの歯に力がかかってしまっています。大きな負担が口全体で掛かりにくいメリットは、インプラントにしかありません。
3-5.メンテナンスできていれば寿命が長い
インプラント治療後に行われるメンテナンスですが、実はインプラント以外でもメンテナンスは行われます。歯や歯茎に異常はないか、残された自然歯に変わったところはないかをチェックする定期検診のようなものです。入れ歯やブリッジは、何か変化が起こった際に作り直したり、寿命による交換が必要になったりします。しかし、インプラントの場合は、きちんとメンテナンスを受けていれば半永久的に使い続けることができるのです。
多くのインプラントメーカーは寿命を10年程度で設定しています。しかし、しっかりとメンテナンスができているインプラントはさらに長く機能することもわかっています。インプラントの寿命に関してはこちらの記事でも解説しているので参考にしてください。
4.前歯のインプラント治療でかかる期間と費用
前歯のインプラント治療にかかる費用は一般的に高いといわれていますが、先述のとおり顎の骨の状態次第では、奥歯の治療費と差が出ません。また治療期間に関しても同様で、大きな差はありません。しかし、費用や治療にかかる時間が気になる人もいることでしょう。本章で詳しく解説します。
4-1.必要な期間
顎の骨の状態に異常がなく、通常の流れでインプラント治療がすすめられる場合は、3~半年が治療期間の目安です。一次手術ではインプラント体の埋め込み作業を行い、骨と結合するまで待ちます。2~3ヶ月ほど様子を見たのち二次手術でインプラント体の上部を歯茎から出し、最終的に型取りした人工歯と接合させるためのアバットメントを装着して手術は終了です。
この流れは2回法と呼ばれる、手術を2回に分ける方法の場合です。インプラント体がきちんと顎の骨と接合したことを確認してから上部構造を取り付けるため、多くの歯科医院で採用されています。もしこれが1回法で行われる場合は、治療にかかる期間がもう少し短くなります。いずれの方法でも、最低3ヶ月ほどの期間は見ておいた方がいいでしょう。
骨の量が少ない、厚さが足りない場合は骨再生療法などの治癒期間を含めて半年以上かかります。手術の回数自体は同じで、インプラント体の埋め込みと同時に骨を増やす措置を行います。
4-2.1本あたりの費用
インプラント1本あたりの費用は、奥歯と変わらず30~40万円前後となります。使用するインプラントや製造するメーカーによって価格は変動するものの、大きく変動することはないでしょう。検査費や治療費も込みで、本数が増えれば純粋に倍額になると思って問題ありません。
もし、骨再生療法を行う場合はこの治療費が上乗せされるため、かかる費用がさらに高額になります。どの程度の処置が必要になるかはひとそれぞれなので、一概にこの金額というのはありません。CT撮影で骨の厚みが足りないと言われた場合には、歯科医師に相談してみてもいいでしょう。
なお、本数が多い場合はその分費用が掛かりますが、オーバーデンチャーを採用することで費用を抑えられるケースもあります。詳しくはこちらの記事を参照してください。
4-3.場合によっては保険適用が可能
治療費が高額なインプラント治療は、原則保険適用外なので、全額実費での支払いになっています。しかし、一部例外として、事故や先天的な理由で歯を失ってる場合は保険適用でインプラント治療を受けることができます。治療を受ける病院の大きさや、所属している医師の人数で保険適用される病院が決まっているため自由度は低めです。しかし、費用負担が大幅に軽減されることを考えれば、非常にメリットのある制度と言えます。詳しくはこちらの記事で解説しています。
5.前歯のインプラント治療は信頼できる歯科医師へ相談を
前歯のインプラント治療は、高度な技術と判断力が必要になる治療です。前歯のインプラント治療を検討している場合は、信頼できる歯科医師を探して依頼することをおすすめします。
当院院長の高田は、インプラント治療の実績も豊富で、年間800本の施術に携わっています。前歯のインプラント治療も経験豊富なので、難しいケースでもお力になれるかもしれません。前歯のインプラントでお悩みなら、ぜひ当院までご相談ください。
※本コラムはあくまで一般的な情報として説明しております。高田歯科ではコラム内容で触れてはおりますがあえて対応していない内容もございますが、ご来院いただく患者様に合わせて最適なインプラント提案をさせていただいておりますので、まずは相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2021年11月19日