チタン製のインプラントとは?安全性やメリット、注意点を解説
インプラントは口の中に装着する人工物です。そのため安全性や耐久性などが気になるのも当然のことだと言えます。とくにチタンのようによく使われる素材については、本当に長期間口の中に入っていても問題がないのか気になるのではないでしょうか。
この記事では、インプラントの素材のチタンについてまとめます。チタンで作られたインプラントの注意点なども解説します。インプラントを検討中の方は参考にしてみてください。
- チタンは軽くて丈夫なうえ、酸化被膜により腐食しにくく金属アレルギーも起こしにくい。骨と結合する性質(オッセオインテグレーション)も備え、インプラントに適した素材である。
- チタンアレルギーはごくまれだが可能性はゼロではない。心配な場合はパッチテストなどで確認でき、金属を避けたいときはジルコニアという選択肢もある。
- インプラントは人工歯根・アバットメント・上部構造から成り、素材はパーツごとに検討する。前歯など見た目を重視する部位では白いジルコニアが選ばれやすい。
- インプラントの寿命を左右する最大の要因はインプラント周囲炎である。素材が朽ちなくても、支える骨や歯ぐきが健康でなければ長くは保てない。
- 寿命を延ばすには日々のセルフケアと定期メンテナンスが欠かせない。これはチタンに限らず、どの素材のインプラントにも共通する。
「チタン」とは
初めに、インプラントで広く使用されている「チタン」とはどのような素材なのか解説します。特徴・種類、メリットとデメリットなどに分けてまとめます。
関連記事:インプラント治療における「人工歯」の素材の種類や費用まとめ
チタンの特徴
チタンは、鉄の約6割の軽さでありながら鋼やステンレスに匹敵する強度を備えた金属です。「比強度(重さあたりの強さ)」の高さが特徴となっています。表面に酸化被膜(不動態皮膜)という膜をすばやく作るため、酸や塩分にさらされてもさびにくく海水中ではプラチナに次ぐ耐食性を示します。
人体になじみやすい「生体金属」として、日用品から医療分野まで幅広く使われている点も大きな特色です。
チタンの種類
チタンは大きく「純チタン」と「チタン合金」に分かれます。
純チタンは、ほかの金属を加えていない純度の高いチタンです。純度の違いでJIS1~4種のグレードに区分されます。番号が大きくなるほど酸素や鉄の含有量が増え、純度は下がる一方で強度と耐食性は高まる傾向があります。
チタン合金はアルミやバナジウムなどを加えて強度を底上げしたもので、代表格のTi-6Al-4V(64合金)は航空宇宙分野でも重用されます。
歯科・医療分野で使われるチタンの規格
チタンは歯科・医療分野でも一般的な素材で、純チタン・チタン合金ともにインプラントの素材としても広く使われています。
歯科インプラントには、純チタンのなかでもグレード2~4がよく用いられ、強度が不足するグレード1は避けられます。中でもグレード4の純チタン(CPTi)が広く採用されています。グレード4は強度と生体適合性のバランスが取れているためです。
より高い荷重に耐える必要がある部位には、Ti-6Al-4Vなどのチタン合金が選ばれることもあります。
チタンのメリット
チタンは軽くて丈夫という相反する性質を持ち、インプラントに使用したときも身体への負担を抑えながらしっかり噛む力を支えられます。
さらに酸化被膜により耐食性が高く、腐食しづらいのも特徴です。そのため湿度が高く飲食物に触れ続ける口腔内でも、長期間安定した状態を保つことができます。
またイオン化しにくく体液に溶け出しにくいため、金属アレルギーを起こしにくい点も見逃せない利点です。金属アレルギーは、体内に溶け出したイオンがタンパク質と結びつくことでアレルゲンとなり発症します。つまりイオン化しにくいということは、発症のリスクが低いということになります。
チタンのデメリット
このようにチタンには多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。
まず変形しにくさを表す指標「ヤング率」が鉄の半分ほどで、同じ荷重でも変形量が大きくなりやすい点が挙げられます。たわみやすく狙った形状にしづらい面があり、設計上の配慮が求められます。
また熱伝導率が低く加工がしにくいため、加工コストがほかの金属より高くなりがちです。
そのほか金属である以上、アレルギー反応が起こる可能性が完全にはゼロになりません。アレルギーになるケースはまれではありますが、この点も弱みと言えます。
インプラントの構造とチタンが使われる部位
続いて、インプラントの構造とチタンが使われる部位について解説します。インプラントは、人工歯根であるインプラント体、土台部分となるアバットメント、人工歯である上部構造から成ります。それぞれの部位について順に見ていきましょう。
関連記事:インプラントの構造とは?インプラントの材質や種類、治療回数を解説
インプラント体(フィクスチャー)
「インプラント体(フィクスチャー)」は、あごの骨に直接埋め込まれるネジ状のパーツです。天然歯の歯根にあたり、人工歯根とも呼ばれます。少し紛らわしいのですが、人工の根から歯の一揃いを「インプラント」と呼びますが、歯根の部分だけを指すこともあるということになります。
歯根に当たるインプラント体は直径3~5mm・長さ6~18mm程度で、骨と結合しやすいスクリュー形状が主流です。
インプラント体には純チタンやチタン合金が使われるのが一般的です。あごの骨に安定的に固定する必要があり、骨と結びつく骨結合ができる素材が選ばれるためです。
アバットメント
「アバットメント」はインプラント体と人工歯をつなぐ土台部分で、噛み心地や見た目を左右する重要なパーツです。
埋入する角度や深さに応じて形状を選べるため、角度や高さを調節することが可能です。多少インプラント体の挿入位置に成約があってもアバットメントで整えることができ、結果的に仕上がりの調整幅が広がります。
素材はチタンやチタン合金のほか、審美性を重視する場合はジルコニアも使われます。
上部構造(人工歯)
「上部構造」は歯ぐきから見える人工歯にあたり、実際に食べ物を噛む役割を担う部分です。セラミックやジルコニア、ハイブリッドセラミック、金属など複数の素材から選べます。
素材や色調を周囲の歯に合わせて調整できるため、天然歯になじむ自然な見た目に仕上げることが可能です。
なお上部構造は日々の咀嚼で最も力がかかる部分でもあり、歯根部分に当たるインプラント体より先に寿命を迎えるケースもあります。その場合は交換することが必要となります。
ワンピースタイプとツーピースタイプ
インプラントは構造により、ワンピースタイプとツーピースタイプに分けられます。インプラント体とアバットメントが一体化したものがワンピース、分離してネジで連結するものがツーピースです。
ワンピースタイプは手術が1回で済み、費用も抑えやすいというメリットがあります。その反面、じゅうぶんな骨の厚みが必要で調整の自由度が低めです。
ツーピースタイプは幅広い症例に対応でき現在の主流となっていますが、部品が多く費用や治療期間はかかりやすくなります。
インプラントに「チタン」が使われる理由
続いて、インプラントにチタンが使われる理由についてまとめます。すでに述べたチタンのメリットが使われる理由にもつながっています。一つずつ見ていきましょう。
金属アレルギーのリスクがほぼない
まず理由として挙げられるのが、金属アレルギーのリスクがほぼない点です。
チタンは表面の酸化被膜が体液との接触を防ぐため、金属イオンが溶け出しにくい性質を持っています。すでに述べた通りイオン化がアレルギー反応のきっかけとなるため、イオン化しなければアレルギー反応も起こらないことになります。チタンはイオンが溶け出しづらいためアレルギー反応の引き金になることが少なく、安全性が高いと評価されています。
ペースメーカーや人工関節など体内で使う医療機器にも採用されている実績が、その信頼性を裏づけていると言えるでしょう。
骨と結合し安定しやすい(オッセオインテグレーション)
続いて、骨と結合し安定しやすい点も理由の一つです。チタンは骨と光学顕微鏡レベルで直接結びつく特性があり、この現象は「オッセオインテグレーション」と呼ばれます。チタンの人工歯根は埋入してから数か月で骨と結合して安定します。
インプラントが骨としっかり一体化することで、噛む力が骨へ効率よく伝わり、ぐらつきのない安定した固定を得ることが可能です。1950年代にブローネマルク博士がこの結合を発見したことが、現在のインプラント治療の出発点となりました。
丈夫でさびにくい
さらに丈夫でさびにくい点も理由として挙げられます。チタンは強度が高く、日々繰り返し噛む力がかかっても変形や破損が起こりにくい金属です。表面の酸化被膜が内部を守るため、口腔内という過酷な環境でも腐食が進みにくい特性があります。
さびにくさと丈夫さの両立により、長期間にわたって機能を保ちやすくなります。これらの性質はインプラントの素材として利用されている理由の一つです。
生体親和性が高い
「生体親和性」が高い点も理由の一つになっています。生体親和性とは、人工物が体内に入った際にも炎症や拒絶反応なしに身体に安全になじむ性質のことを言います。
チタンは体内に入っても異物として排除されにくく、拒絶反応が起こりにくい素材です。骨の再生と同じ仕組みで組織が寄り添うため、体になじみやすいのが大きな強みです。
過去には真鍮や銅などの素材が試されましたが、いずれも腐食・拒絶で失敗したという経緯があります。このチタンの高い親和性は、失敗した素材とは対照的だと言えるでしょう。
長期的な臨床実績がある
さらに長期的な臨床実績があるのも素材として選ばれる理由です。チタン製インプラントは半世紀以上の使用実績があり、安全性を示すデータが長期にわたって積み重ねられています。
また歯科だけでなく人工関節や骨接合材としても長く用いられており、体内使用の信頼性が確立しています。すでに解説した「生体親和性が高い」ということがデータで裏付けられているということです。
こうした実績の厚みが、現在に至るまでチタンが主流であり続ける根拠の一つです。
骨結合を促す表面処理がしやすい
骨結合を促す加工や調整がしやすい点も理由です。チタンは表面に特殊処理を施しやすく、骨結合の安定に役立てられています。安定しやすさを求めてメーカーごとに独自の加工が発展しており、早期の骨結合が期待できます。技術の具体例として挙げられるのは、純チタン表面に骨成分に近い層を作る技術などです。
このように表面加工のしやすさが、多様な表面性状のインプラント開発を支えています。
チタンインプラントとチタンアレルギー
続いて、チタンインプラントを利用したときのアレルギー反応についてまとめます。
チタンアレルギーは起こるのか
チタンはアレルギーを起こしにくい金属ですが、まったくアレルギーが起きないわけではありません。日用品や医療機器でチタンに触れる機会が増えたことで、発症の報告例も見られるようになっています。
ごくまれではあるものの、可能性はゼロではないと理解しておくことが大切です。
チタンアレルギーの主な症状
チタンアレルギーの症状として挙げられる代表的な例は、皮膚のかゆみや発疹、腫れ、口の中の違和感などです。皮膚炎や口唇炎だけでなく、インプラントの骨結合不良や脱落と関連する例も報告されています。
症状の現れ方には個人差があり、全身に不調を感じるケースもあります。なお検査の結果チタンアレルギーと診断された場合、インプラントを除去して別の素材のものと交換しなくてはなりません。くわしくは後述します。
チタンアレルギーが起こる原因
チタンアレルギーが起こる原因は、イオンが体内に溶け出してタンパク質と結合したときにアレルゲンとなることです。チタン本体そのものより付随する要因が関与しているケースが多いと考えられています。
純チタンではなく合金成分に含まれるほかの金属が、反応の引き金になることがあります。あるいは、手術時の切削片やインプラント周囲炎による表面の摩耗から金属片やイオンが放出される可能性も指摘されています。
チタンアレルギーの発症率
チタンアレルギーの発症率については、インプラント治療を受けた人へのパッチテストで0.6~1.7%程度の陽性率が報告されています。ただし陽性反応が出ても実際に症状を伴わない場合がほとんどとされています。数値のうえでも臨床経過のうえでも、発症は限られた頻度にとどまると言えるでしょう。
なお、治療後すぐに発症するとは限りません。埋入して数年経ってから症状が出るケースもあります。
アレルギーが心配な人が受けられる検査
アレルギーが心配な人が受けられる検査としては、皮膚に金属試薬を貼って反応を見るパッチテストが代表的です。
パッチテスト以外の検査もあり、知られているのは血液から白血球を取り出して培養する検査です。この検査は新たな感作のリスクがなく、安全性が高いとされています。実際に埋入する製品の成分を検体に用いて調べる方法を取り入れている歯科医院もあります。
インプラント治療で金属アレルギーを発症しないために
次に、インプラント治療で金属アレルギーを発症しないための工夫や方法についてまとめます。もともと発症のリスクは低いと言えますが、以下の内容を実際に行うことでさらにリスクを下げることができるでしょう。
純度の高いチタンで治療を受ける
まず、純度の高いチタンで治療を受けることが挙げられます。チタン合金は、合金の成分がイオンとして溶け出してアレルゲンの原因となる可能性があるためです。純度の高い純チタンは化学的に安定していて、経年でも変化しにくくアレルギーリスクを抑えられます。
合金成分による反応を避けたい場合、純チタンに近い素材を選ぶことが一つの対策になります。使用するインプラントの素材や純度について、事前に歯科医師へ確認しておくと安心です。
事前にパッチテストを受ける
事前にパッチテストを受けるのも判断や対策の準備に有益です。治療前に検査でアレルギーがあるかどうか確認しておくことで、埋入後のトラブルを未然に減らせます。
過去にアクセサリーや歯科金属でかぶれた経験がある人は、とくに事前検査が推奨されます。検査で体質を把握しておけば、素材選びの判断材料にすることが可能です。
なおすでに紹介した血液で検査する方法は、医師によっては対応していないケースもあります。一般に広く行われているのはパッチテストなので、血液による検査を希望する場合は事前に相談してみましょう。
金属アレルギー症状が出た場合の対応
埋入後に症状が現れた場合、原因を特定したうえでインプラントを撤去することがあります。チタンが原因だと判明した場合は撤去することが不可欠です。取り除かない限り症状が治まらないためです。
撤去後は傷が治るのを待ち、希望に応じて金属を使わないジルコニアへの入れ替えも可能です。ただし場合によっては、再埋入の前に骨造成などの追加治療が必要になることもあります。
アレルギーかどうか自己判断せず、信頼できる歯科医師と相談しながら対処を進めることが重要です。
チタン以外のインプラント材料
次に、チタン以外のインプラント材料にはどんなものがあるか確認しましょう。ここでは、「ジルコニア」「オールセラミック」「ハイブリッドセラミック」についてまとめます。なおジルコニアは上部構造にも人工歯根にも使われますが、オールセラミックとハイブリッドセラミックは主に上部構造に使われる素材です。
関連記事:インプラントで使用されるアバットメントとは?役割や重要性・材質を解説
ジルコニア
「ジルコニア」はセラミックの一種で、金属ではありません。次に述べる「オールセラミック」の一つで、金属を使用しないセラミックです。そのためインプラントに使用してもアレルギーの心配がありません。白く透明感があり、歯ぐきが下がっても金属色が透けず、審美性を長く保つことが可能です。
人工ダイヤモンドと呼ばれるほど硬いほか生体親和性も高いといったメリットがあり、インプラントだけでなく人工関節などにも利用されています。その一方で、対応する歯科医院が少なく費用も高めになりがちというデメリットもあります。
オールセラミック・ハイブリッドセラミック
「オールセラミック」は陶材だけで作られ金属を含まないセラミック系材料の総称です。厳密には上記のジルコニアも含まれますが、歯科医ではジルコニアを除いた陶材だけによるセラミックを指すのが一般的です。透明感と自然な白さに優れ、前歯など見た目が重視される部位に向いています。
「ハイブリッドセラミック」はセラミック(陶材)とレジン(合成樹脂)を混ぜた素材で、やはり金属を使用していない素材です。費用を抑えやすいほか、割れても修復しやすい特徴があります。一方でハイブリッドセラミックは吸水性があるため、ケアを怠ると変色しやすい点に注意が必要です。
チタン以外の材料が選ばれるケース
チタンアレルギーが確認された人や金属を一切避けたい人には、ジルコニアが有力な選択肢になります。前歯など審美性を最優先したい部位では、白い素材が選ばれることがあります。
ただし骨量が不足しているケースや埋入の向きに補正が必要なケース、強い咬合力・歯ぎしりがある奥歯などには、ジルコニアはあまり向いていません。これらに該当しつつもジルコニアを希望する場合は、歯科医師と相談してみましょう。
チタンインプラントとジルコニアインプラントの比較
次に、チタンのインプラントとジルコニアのインプラントを比較してみましょう。主に人工歯根について比較しますが、素材の選択は人工歯根・アバットメント・上部構造のパーツごとに条件や事情が異なります。
関連記事:「ジルコニアインプラント」って何?メリット・デメリットや費用も解説
審美性(見た目)の違い
チタンは金属色のためx歯ぐきが薄かったり下がったりすると土台(アバットメント)が透けて黒ずんで見えることがあります。対してジルコニアは土台・人工歯ともに白く、歯ぐきが下がっても金属色が出ません。そのため、目に見える部分の自然さを保ちやすいと言えます。
この差が表れるのは主にアバットメントと人工歯で、特に前歯では審美性が素材選びの決め手になりやすいと言えます。
金属アレルギーリスクの違い
チタンはアレルギーを起こしにくいものの、金属である以上わずかにリスクが残ります。
しかしジルコニアは金属ではないため、アレルギーの不安を感じる必要がありません。金属をどうしても避けたい体質の方には、素材にジルコニアを選ぶことが安心材料となります。
ご自身に金属アレルギーがあるかどうかについては、すでに述べたようにパッチテストをはじめとした検査を受けて確認しておくことが推奨されます。
強度・耐久性の違い
チタンは骨との結合力に優れ、長い臨床実績に裏づけられた安定性があります。ジルコニアは非常に硬く強度も高い反面、金属のような粘りがなく破折には注意が必要です。
またジルコニアは変色こそ起こりにくいものの、水分と時間の影響で強度が下がりうる低温劣化(LTD)という固有の経年変化が知られています。
以上のような違いから、ジルコニアが適していないと判断されることもあります。そのほか骨結合のしやすさという点では、チタンの方が優れていると言えるでしょう。
費用の違い
チタンは大量生産が可能で、ジルコニアに比べ費用を抑えやすい素材です。
対してジルコニアは製造コストが高く、チタンより2~3割ほど割高になる傾向があります。取り扱う歯科医院が限られることも費用が上がりやすい一因です。
予算内に収まるかどうかでどちらを選ぶか判断する場面もあるでしょう。
どちらを選ぶべきか
チタンアレルギーがある場合や審美性を最優先したい場合は、ジルコニアが向いています。逆にチタンが適しているのは、噛む力が強くかかる奥歯など安定性を重視する場合です。
どちらにも長所と短所があるため、ご自身の希望と歯科医の専門的な判断との両面から選ぶ必要があります。口腔内の状態と希望をもとに歯科医師と決めるのが賢明です。希望がはっきりしているけれども難しそうな場合や悩む場合は、歯科医に相談してみましょう。
チタンインプラントに関する生活上の注意点
続いて、チタンインプラントに関する生活上の注意点について解説します。
関連記事:インプラント治療で後悔しないためには?注意点や口コミの真相を解説!
MRI検査
MRI検査は問題なく受けられます。MRIは強い磁石を使う検査方法ですが、チタンやチタン合金は磁気にほとんど反応しない非磁性の金属です。そのため磁場に引き寄せられたり発熱したりする心配もなく、画像が大きく乱れることも通常ありません。
ただし素材がチタンであっても、個別の可否は検査先の医療機関の判断によります。実際に検査を受ける際は、歯科医師やインプラントの情報(メーカー・材質)を検査施設に伝えて確認しましょう。
さらに磁石で入れ歯を固定するタイプの場合は注意が必要です。悪影響がある可能性があるため、必ず検査施設に申告しましょう。
空港などの金属探知機
チタンは金属探知機にはほとんど反応しません。チタンは原子量が小さく、歯科インプラントは金属量もごくわずかです。大きな金属の塊である人工関節とは異なり、反応の基準値に達しません。
歯科インプラント程度の金属量では基本的に反応しないため、通常は特別な準備は不要と考えられます。心配な場合は、治療内容を説明できるようにしておくと落ち着いて対応できます。
経年劣化・腐食
チタンの場合、経年劣化や腐食を気にする必要はありません。チタンは表面の酸化被膜のおかげで腐食が進みにくく、口腔内でも劣化しにくい素材です。虫歯になることもなく、素材そのものは長期間安定した状態を保ちます。
ただし素材が朽ちないことと「一生使える」ことは別問題です。寿命を決めるのは素材の劣化ではなく、インプラントを支える骨や歯ぐきの状態です。口腔内の健康を保つケアを続けることが求められます。
チタンインプラントのリスク・トラブル
続いて、チタンインプラントで起こりうるリスクやトラブルについて確認しておきましょう。
関連記事:インプラントは危険?ありうるリスクと予防・対処の方法を解説
インプラント周囲炎
「インプラント周囲炎」は、歯周病菌によって周囲の歯ぐきや骨に炎症が起こる病気です。歯垢や歯石が蓄積されると発症のリスクが高まります。歯周病と同じく初期は自覚症状が乏しく、歯周病より速く進行するため重症化しやすく注意が必要です。進行すると骨が溶けて脱落を招くこともあります。
自然には治らないため、発症した場合は治療を受けることが必要です。また日々の清掃と定期検診による予防・早期発見が欠かせません。なお、インプラント周囲炎のリスクは素材に無関係で、どんな素材のインプラントでも注意すべきです。
金属イオンの溶出
純チタンは体液に溶け出しにくいものの、条件によってはごくわずかに金属イオンが放出される可能性があります。手術時の切削片や周囲炎による表面の摩耗が溶出のきっかけになると指摘されています。こうした溶出がアレルギー反応の一因となる場合があるため、ていねいな処置と管理が重要です。
チタン合金のリスク要因は純チタンよりわずかに多いと言えますが、金属一般の中ではイオン溶出しにくい部類です。医療用としての実績もあり、通常はリスクは低いと言えるでしょう。
破損・脱落のリスク
チタン自体は丈夫ですが、強い衝撃や過度な咬合力でパーツが破損することがあります。上部構造やアバットメントが破損した場合は交換することで対処可能です。インプラント体の場合は大がかりな対処が必要になりますが、通常の利用でインプラント体が破損することはまれだと言えるでしょう。
またチタンに限らずどの素材にも共通するリスクとして、インプラント周囲炎が進行すると骨の支えを失ってぐらつきや脱落につながる点が挙げられます。脱落した場合は再手術が必要になることもあり、予防的なケアの継続が大切です。
インプラントのメンテナンス
次に、リスクやトラブルを防ぐのに役立つインプラントのメンテナンスについて解説します。なおここで解説するのは、チタンはもちろんほかの素材のインプラントにも共通する内容です。
関連記事:インプラントにフッ素はダメ?インプラント治療後の歯磨き粉の選び方も紹介
寿命を延ばす日常的なケア方法
日常的なケアとしては、当然ながら毎日の歯磨きが欠かせません。表面に傷がつくリスクをできるだけなくすため、研磨剤入りの歯磨き粉は避けることが重要です。また歯ブラシは毛先のやわらかいものを使いましょう。上部構造と歯ぐきの境目は力を入れすぎないよう優しく磨き、傷やダメージを避けてください。
さらに歯間ブラシやデンタルフロスも併用して、歯の間の汚れをていねいに落とすことが大切です。
生活習慣では、喫煙は血行を悪くし周囲炎のリスクを高めます。禁煙もケアの一環として有効です。
フッ素と歯磨き粉
歯磨き粉に関して『フッ素はチタンを傷めるのではないか』と心配される方がいますが、あまり心配する必要はありません。
かつてフッ素がチタンを腐食させるという情報が広まったことがありましたが、腐食を起こすのは高濃度のフッ素です。市販の歯磨き粉に含まれる程度の濃度であれば問題ないとされています。
またインプラント自体は虫歯になりませんが、フッ素には隣り合う天然歯を守る効果があります。むしろ活用するとよいでしょう。
どの歯磨き粉を選ぶか迷う場合は、歯科医院ですすめられた製品を使うと安心です。
治療後・手術直後のケア
手術直後は傷口に配慮して歯を磨くことが必要です。埋入部の傷口がまだ安定していないため、当日はうがい程度にとどめ、しばらくはやわらかい歯ブラシを使うのが基本です。
歯ぐきの回復に合わせて、歯科医師の指示のもとで通常のケアに戻していきましょう。仮歯が入っている期間も、汚れが溜まりやすいためていねいな清掃を心がけることが大切です。
定期的なメンテナンスの重要性
さらに、定期的なメンテナンスを受けることは非常に重要です。医師が推奨・指定する間隔やタイミングでメンテナンスを受けましょう。
歯周ポケットの汚れはセルフケアでは落としきれないため、メンテナンスで歯科衛生士により行われるクリーニングが必要です。定期検診では噛み合わせのチェックや不具合の早期発見ができ、トラブルの重症化を防げます。
多くの保証制度は定期メンテナンス通院が条件のため、通い続けることがいざというときの安心にもつながります。
メンテナンスを怠った場合のリスク
メンテナンスを怠るとさまざまなリスクが生じます。
まず清掃が行き届かないと、歯垢や歯石が溜まってインプラント周囲炎を発症しやすくなります。炎症が進むと骨が吸収され、最悪の場合インプラントが抜け落ちる可能性もゼロではありません。
再手術には時間も費用もかかります。そしてすでに述べたように、多くのクリニックではトラブルの保証を受ける際に定期メンテナンスを受けていることが条件になっています。日頃のケアを続けることが結果的に負担を減らすのは間違いありません。
チタンインプラントの寿命
次に、チタンのインプラントの寿命について見ていきましょう。
チタンインプラントの平均的な寿命
一般にインプラントの10年生存率は90%以上とされ、入れ歯やブリッジより良好な結果が報告されています。厚生労働省の報告では、10~15年の累積生存率が上あごで約90%、下あごで約94%とされています。
上記のデータはチタンのインプラントとは明記されていません。しかしチタンは長期にわたり主流となってきた素材なので、上記の数値はほとんどがチタン素材のデータです。
このように平均寿命はおよそ10~15年が目安です。しかしケア次第でさらに長く使えることもあります。
なおここで言う「寿命」は、人工歯根であるインプラント体が骨結合された状態を保ち安定して骨に固定されている期間のことです。すでに軽く述べましたが、上部構造の寿命は別で、先に上部構造の寿命が来た場合は上部構造を交換しなければなりません。逆に言えば、人工歯根が安定している限り上部構造を交換するだけでインプラントを使い続けることができます。
寿命に影響する要因
寿命を左右する最大の要因はインプラント周囲炎です。進行して支えである骨が溶けると、インプラントがぐらついてやがて抜け落ちます。喫煙による血行不良や歯ぎしり・食いしばりの強い力も、周囲炎や結合不良を通じて寿命を縮める要因になります。
そのため、日々のセルフケアと定期メンテナンスで骨と歯ぐきの健康を保てるかどうかが、実質的な寿命の決め手になります。
なお上部構造の欠けやネジの緩みといった機械的トラブルは、部品交換や締め直しで修理できることが多く、本体の寿命とは分けて考えられます。
チタンのインプラントの費用と治療期間
続いて、チタンのインプラントの費用と治療期間についてまとめます。
チタンインプラントの費用の目安
チタンインプラントの費用相場は、1本あたりおよそ30万~50万円が一般的です。前歯は審美性が求められるため、奥歯よりやや高くなる傾向があります。
表示価格が本体のみか、検査や人工歯まで含む総額かは医院によって異なります。あらかじめ確認しておくことが必要です。
そのほか、必要となる処置の内容によっても費用の総額は変わってきます。次にくわしく説明します。
費用が変動する要因
費用には幅がありますが、いくつかの要因があります。
まず挙げられるのは、インプラントのメーカーや製品グレード、上部構造の素材選びです。臨床データに裏付けられた信頼感のある製品やよい素材は価格も高くなります。なお素材については、価格が安いと寿命が短く短期間で交換する必要があるのが一般的です。価格と金額のバランスを考える必要があります。
さらに追加処置の有無も総額に影響します。骨が不足している場合に骨造成を行うと、その分費用もかさむことになります。
そのほか、歯科医師の技術や設備、保証内容の違いも価格差を生む要素です。
保険適用の可否
インプラント治療は原則として保険適用外の自由診療で、費用は全額自己負担となります。費用に幅があるのはそのせいでもあります。ただし、自己負担ではありますが医療費控除の対象になります。費用そのものは安くできないものの、多くのケースでは税金の還付が受けられるため確定申告で負担を一部軽減することが可能です。
なお、先天的な多数歯欠損や事故・病気で顎の骨を広範囲に失った場合など限られたケースでは保険を使うことができます。
治療にかかる期間
手術自体は短期間で終わりますが、骨と結合する治癒期間を含めると全体で3か月~1年ほどが目安です。とくに骨の質が柔らかい上あごは、下あごよりも結合に時間がかかる傾向があります。
また骨の量が不足していて骨造成を行う場合、術式に応じて3~6か月ほど、重度のケースでは半年~1年程度長くなることがあります。
治癒を焦ると結合不良につながるため、時間をかけて確実に進めることが安定への近道です。
治療が受けられない/注意が必要な人
インプラント治療は多くの人が受けられますが、条件によっては慎重な判断が必要になる場合もあります。
たとえばあごの骨の量が極端に少ない場合は、骨造成などの追加処置が前提となることがあります。また、重い糖尿病や骨粗しょう症などの持病がある方や喫煙習慣がある方は、骨結合がうまくいきにくかったり、治癒に時間がかかったりすることがあります。持病がある場合は、事前に歯科医師へ伝えて主治医とも連携しながら進めることが大切です。
そのほか成長途中の顎の骨が定まっていない年代も、基本的には治療の対象外です。
インプラント治療の流れ
解説の最後に、インプラント治療の流れについてまとめます。流れについては素材による違いはあまりありません。大まかには以下の順で進められます。
- カウンセリング・検査
- 口腔内の環境整備
- 骨造成(必要な場合)
- 手術(インプラント埋入)
- 定着期間と上部構造の装着
順に見ていきましょう。
STEP1|カウンセリング・検査
まずカウンセリングで悩みや希望を確認し、歯科用CTなどで骨の量や質、神経の位置を精密に調べます。検査結果をもとに、埋入する位置や本数を含めた治療計画を立てます。
この段階で費用の総額や治療期間の見通しも共有されるのが一般的です。内容に納得できる場合は治療に進みます。
STEP2|口腔内の環境整備
インプラントを埋入する前に口の中を健康な状態にしておく必要があり、あらかじめ口内環境を整えておきます。具体的には、虫歯や歯周病があれば先に治療する、歯石除去やクリーニングで口腔内の細菌を減らす、といった処置が行われます。
インプラントのリスクとなるインプラント周囲炎の最大の原因は細菌です。埋入前に感染源を除いておくことが、その後の成功と寿命に直結します。
STEP3|骨造成(必要な場合)
骨の量が不足しているケースでは、埋入の前段階として骨造成を行います。ただし必要な場合に限られ、必ず行うものではありません。
骨造成には2つの方法があります。埋入と同時に行う方法と、先に骨造成だけ行って骨ができるのを待ってから別途埋入する方法です。後者の場合はここで数か月間インプラントが安定するのを待たなくてはなりません。骨の量がじゅうぶんになると、手術へと進みます。
STEP4|手術(インプラント埋入)
埋入の手術では、歯ぐきを切開して骨に穴を開け、インプラント体を埋め込みます。手術には1回の手術で済む一回法と2回手術を行う二回法があり、骨の状態などで選択されます。
一回法は上部構造を装着する部分を露出させておく方法で、骨結合したらそのまま上部構造を装着することが可能です。二回法では埋入のあといったん歯茎を縫合して骨結合するのを待ち、後日もう一度切開して土台部分を連結します。
手術自体は1~2日で完了しますが、術後は感染予防のためのケアが必要です。
治療当日〜術後の腫れ・痛み
手術と聞くと痛みが気になる方も多いかもしれませんが、処置中に強い痛みを感じることは通常ありません。埋入手術は局所麻酔下で行われるためです。術後、麻酔が切れてからは痛みや腫れが出ることがありますが、多くは処方される痛み止めで抑えられる程度です。一般的には数日から1週間ほどで落ち着いていきます。
腫れや痛みが長引く場合や強くなる場合は、我慢せず歯科医院に相談しましょう。抜歯などと同じく体への負担はありますが、過度に恐れる必要はありません。
STEP5|定着期間と上部構造の装着
埋入後は骨とインプラントが結合するまで、上あごで約4~6か月、下あごで約2~3か月ほど待ちます。結合が確認できたら型取りを行い、一人ひとりに合わせた人工歯を製作します。完成した上部構造を装着し、噛み合わせを調整して治療は終了です。
アバットメントや人工歯にジルコニアを選ぶ場合も流れは同じで、変わるのは上部構造の素材だけです。一方、本体自体がジルコニア製(ワンピース型)の場合は、土台を後から接続する工程がなく一回法で進められます。
チタンのインプラントについてよくある質問
チタンのインプラントについて、よくある質問と回答をまとめました。
チタンアレルギーがあるとインプラント治療は受けられませんか?
チタンアレルギーがある場合でも、金属を使わないジルコニアを選ぶという選択肢があります。ジルコニアはセラミックの一種で、アレルギーの心配がありません。まずはパッチテストなどの検査で体質を確認し、歯科医師と相談したうえで素材を決めるのがおすすめです。心配な場合は治療前に相談してみましょう。
前歯のインプラントにはどの素材が向いていますか?
前歯は人目につきやすいため、審美性が素材選びの決め手になりやすい部位です。チタンは金属色のため、歯ぐきが下がると土台が透けて見えることがあります。一方ジルコニアは土台・人工歯ともに白く、金属色が出ないため自然な見た目を保ちやすい素材です。ただし部位や条件により判断は異なるため、歯科医師に相談しましょう。
チタンインプラントを入れたままMRI検査は受けられますか?
チタンは磁気にほとんど反応しない非磁性の金属のため、基本的にMRI検査は問題なく受けられます。磁場に引き寄せられたり発熱したりする心配も通常ありません。ただし可否は検査先の医療機関の判断によるので、事前にインプラントの情報を施設に伝えて確認してください。磁石で入れ歯を固定するタイプはとくに申告が必要です。
インプラントの寿命はどのくらいですか?
インプラントの平均寿命はおよそ10~15年が目安で、10年生存率は90%以上と報告されています。ここでの寿命は、人工歯根が骨に安定して固定されている期間を指します。上部構造は先に寿命が来ることがあり、その場合は交換して使い続けられます。日々のケアと定期メンテナンス次第で、さらに長く使えることもあります。
インプラントは虫歯にならなければケアは不要ですか?
インプラント自体は虫歯になりませんが、ケアは欠かせません。手入れを怠ると歯垢や歯石が溜まり、インプラント周囲炎を招くおそれがあります。進行すると骨が溶けて脱落につながることもあります。研磨剤入りの歯磨き粉を避け、やわらかい歯ブラシで優しく磨くほか、定期的なメンテナンスを受けることが長持ちの鍵です。
インプラントの素材選びは専門家に相談するのがおすすめ
人工歯根、上部構造などインプラントの部品に使われる素材として、チタンは広く使われています。しかし本文でも述べたように、場所などによってはほかの素材を検討した方がよいケースもあります。
素材選びで迷うことがおありでしたら、私ども高田歯科クリニック(東京都杉並区)にご相談ください。専門家の知見から最適な素材をご提案いたします。まずはお気軽にご連絡ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2026年7月7日








