インプラントの治療の流れは?回数や本数による違いも解説
更新日:2025年8月11日
これからインプラント治療を受けようと思っている人にとって、治療の流れがどうなっているのか非常に気になるところでしょう。自分はインプラント治療の時間が取れるのか、術後はどうなるのか、歯科医師に聞いてみようと思ってもなかなか聞けない人も少なくないはずです。
今回はインプラント治療の大まかな流れと、インプラント治療に対してよく寄せられる質問にお答えしていきます。
インプラント治療の流れ
- カウンセリング
- 治療前の検査
- 治療開始(1回法、2回法) ※2回法は1回法に比べて治療回数も期間がかかる
- 術後カウンセリングとメンテナンス
※上記の流れは「1本歯」の場合。「オーバーデンチャー」の場合は流れが異なります。
本記事を参考に、インプラント治療の流れを頭に入れ、自身の今後の治療計画をイメージしてみてください。
1.インプラント治療の流れ
インプラントの治療の流れについて詳しく説明します。治療の流れは患者様の口の中の状態や健康状態、生活習慣や治療する本数によって異なります。今回の流れは、あくまでも、いちサンプルとして参考にしてください。
1-1.カウンセリング
インプラント治療を始める前に歯科医師によるカウンセリングを行います。カウンセリングでは治療の流れや使う器具の説明、トラブルが起きた場合の対処法などを医師から説明します。患者様はこのタイミングで要望があればお伝えください。また治療に関わる疑問や相談があれば、この時点で仕返しに投げかけておくと良いでしょう。
またカウンセリングをもとに、歯科医師から大まかな見積もり額が提示されることもあります。自身の予算に合っているか、治療期間は問題ないか、この時点で可能な限りクリアにしてしまいましょう。合意すれば治療前の検査に移ります。
1-2.治療前の検査
インプラント治療の前には、主に以下の3つを確認します。
- 顎の骨の厚みや異常の検査
- 口腔状態の確認
- それ以外のインプラント治療に関わる持病の確認
インプラント治療は全員が受けられる治療法ではありません。重度の糖尿病やコントロールが効かないような高血圧、歯周病を患っている人は治療することによるリスクが高く、そのままでは治療できないからです。
またインプラントの土台を埋め込むための顎の骨の厚みに関しても、CTを使って検査をします。この厚みが分からなければ、インプラント治療ができるのかどうかが正確には判断できないためです。
この事前検査で特に問題がないと判断された場合は、いよいよ治療が開始されます。
関連記事:インプラント治療を受けるための事前検査の必要性と検査内容、費用を解説!
2-2-1.持病がある場合は別途治療が必要になる
糖尿病や高血圧、心疾患、喘息、骨粗鬆症などを患っている患者様は、インプラント治療の前にそれぞれの持病の主治医に治療を受けていいか相談する必要があります。場合によっては歯科医師から、薬の量や数値についてのアドバイスがあるはずです。それらをクリアすることで初めてインプラント治療が可能になります。
逆に言えばこれらの疾患を持っている患者様は、インプラント治療を受けるにあたって持病の治療も同時進行で進めていかなければなりません。病院通いが多くなりますが、インプラント治療を受けるためには必要な工程だと思ってください。
2-2-2.顎の骨に異常があれば骨造成手術
持病ではありませんが、場合によっては顎の骨に問題があると指摘される可能性があります。インプラントの土台であるインプラント体は、顎の骨に穴を開けてそこに埋め込む形になるので、その土台を支えるための顎の骨の厚みが必要です。
インプラント治療を受けるまでの食生活や遺伝的な問題で、顎の骨の厚みが足りない場合、骨造成法による補強が行われます。やり方は体の一部の骨を顎に移植し徐々に増やしていくというもの。
手術後すぐにインプラント治療ができるわけではなく、移植した骨が顎の骨の一部になるのを待たなければなりません。時間はかかるものの、土台がなければ話になりません。骨増生手術になった場合は歯科医師と日程などを相談しましょう。
関連記事:インプラントに必要な骨を作る「骨造成」の種類と費用を徹底解説!
2-3.治療開始
事前検査が終わればいよいよ治療が開始されます。治療には2種類の方法がありそれぞれ期間と手術内容が異なります。それぞれ掘り下げて見ていきましょう。
1-3-1.1回法の場合
1回法とはインプラント体を埋める部分の歯茎を切開して顎の骨を露出させ、ドリルで穴を空けた後にワンピースタイプのインプラントを埋め込む方法です。穴を開けると言ってもガッツリと大きな穴ではなく、インプラントが治る比較的小さな穴です。この方法をとることで、術後の経過を見て上部構造をかぶせるだけで治療が終了する流れになります。
ツーピースタイプのインプラントの場合は、インプラント体を先ほどと同じ要領で顎の骨に埋め込むのと同時にアバットメントの連結もしてしまいます。上部構造はインプラント体が顎の骨と結合してからです。
ただし1回法が使えるのは、顎の骨の厚みが十分にあると判断された患者様だけです。それ以外の患者様は原則2回法による治療になります。
1-3-2.2回法の場合
顎の骨の厚みが足りなかったり、柔らかかったりと判断された場合は原則2回法が採用されます。1回目の手術ではインプラント体を埋め込んだあとで、一度切開した歯茎を縫い合わせかぶせてしまいます。3ヶ月から半年ほど待った後、カバーである歯茎を切開してアバットメントを連結するといった流れです。
1回法に比べて治療に時間がかかるものの、患者様の顎の骨の状態や健康状態に左右されにくいため、多くの歯科医院で2回法が採用されています。治療で使用されるインプラントもツーピースタイプで、ワンピースタイプのものは使用できません。
ただ1回法と比較して、インプラント体と顎の骨がしっかりと結合した後に治療を進めるため、ぐらつきや脱落のリスクが低いのが特徴です。
1-4.術後カウンセリングとメンテナンス
手術が完全に終われば、術後のカウンセリングとメンテナンスになります。カウンセリングではインプラントが入ったことによって、どんなことに気をつけなければならないかを中心に歯科医師から話があるはずです。歯磨きについての指導もあるので、しっかりと聞いておきましょう。
メンテナンスはインプラントを入れた以上、最低でも半年に1回は必要です。普段のケアだけでは気づけない異変やインプラント周辺の自然歯の状態を確認するためです。メンテナンスを長く使用するためにも、メンテナンスは必ず受けましょう。
2.インプラントの本数によって治療の流れが変わるのか
結論から言うと、インプラントを埋入する本数によって治療の流れや期間が変わることがあります。本数が少ない場合は、同時に埋入することがほとんどのため、インプラントを1本埋入する際の治療の流れと変わりません。
しかし、本数が多い場合は患者様の負担を考慮し、手術を2回に分けて行うことがあり、その分治療期間が長くかかることが予想されます。
また、傷口や骨の治りも埋入箇所によって異なるため、治癒期間が治療の流れに影響を与えることもあるでしょう。
2-1.インプラント複数本の治療の場合の流れ
ここでは、インプラントを複数本埋入する際の治療の流れをご紹介します。
1.カウンセリング
まずは問診を行い、患者様から現在の口腔内の状態、治療の要望、既往歴、薬の服用の有無、治療への不安や疑問などについてお話を伺います。
2.治療前の精密検査や診断
レントゲンやCT撮影、口腔内の検査などを行い、治療計画に必要な資料取りを行います。
3.治療計画の説明
精密検査を元に歯科医師が治療計画を立てます。治療の流れや費用、治療期間、手術のリスクなどについて患者様に丁寧にお話しします。
4.インプラント埋入手術
複数本のインプラントを同時に埋入します。本数が多い場合や患者様の負担を軽減するために埋入手術を2回に分けて行うこともあります。
5.待機期間
インプラントと骨が結合するのには、約3ヶ月~6ヶ月の待機期間が必要です。本数が多い場合は、治療箇所によって傷口の治りや骨の結合の状態が異なることもあるため、通常の待機期間よりも長くなることも考えられるでしょう。
6.人工歯の装着
インプラントと骨の結合が確認できたら、人工歯を装着し、治療が完了します。
治療の流れは患者様の口腔内や治療内容によって異なるため、歯科医師に確認しましょう。
2-5.オーバーデンチャーの場合は要相談
ここまでの説明は全て、一本単位でのインプラント治療の流れです。インプラント版総入れ歯とも言える「オーバーデンチャー」の場合は、少し治療の流れが異なります。
オーバーデンチャーでは、先に特殊なインプラント体を顎の骨に埋め込みます。磁石などでくっつける方式なので、通常のインプラントとは治療内容が異なることがお分かりいただけるでしょう。総入れ歯の方や、歯を全て抜いた上でオーバーデンチャーにするという方以外はなかなかこの方式を選ぶ患者様はいません。
そもそもオーバーデンチャーに対応しているかどうかも、歯科医院によって異なります。オーバーデンチャーを前提にインプラント治療を考えている場合は、問合せの時点でオーバーデンチャーに対応しているかどうかを聞いてみると良いでしょう。
オーバーデンチャーに関する詳しい内容は、こちらの記事で解説しています。
3.インプラント治療は外科手術を伴うため歯科医院選びが重要
大前提として、インプラント治療は虫歯や歯周病の治療とは異なります。インプラント治療は歯茎を切開し、顎の骨に穴を開けて、そこに金属を埋め込む外科手術が必要です。歯を削って被せ物をしたり、歯茎の腫れを治療したりするだけではありません。手術を伴う以上、インプラント治療には高度な専門知識と技術力が求められるのです。
ではどのようにインプラント治療を受ける歯科医院を選べばいいのでしょうか。重要なポイントを解説します。
3-1.専門医に依頼すること
現在の歯科医師の世界では、それぞれの専門分野で開業医になるケースが少なくありません。インプラントも同様で、歯科医院の中にはインプラント治療を専門にした歯科医院も存在します。
先述の通りインプラントは高度な専門知識と技術力が求められる、非常に難しい医療の領域です。インプラント治療は、実績のない歯科医院よりも、実績が豊富で専門性の高い歯科医師を選びましょう。
注目したいのはインプラントの治療実績です。患者様の口の状態は人それぞれ。難しい状態であったとしても、最善の手を尽くして治療ができている歯科医師は、それだけ信用できると考えていいでしょう。特に外科手術を伴うインプラント治療に関しては、ホームページなどを確認し、どのような実績を持っているのかを事前に確認しておくことをおすすめします。
3-2.価格だけで選ばない
インプラント治療は一本40万円が相場となっており、非常に高額です。保険も適用されないため全額自費負担。可能であれば安く済ませたいという気持ちもわからなくもないです。
しかしインプラントは体の中でも特に重要な口の中に、外科手術によって埋め込むもの。価格だけで決めるのは非常に危険です。高額であればいいという意味ではなく、値段の安いインプラントには必ず裏があると思っておいた方がいいでしょう。
事実「格安インプラント」と呼ばれるものの中には、インプラント治療の実績が少ない歯科医師が手術に携わったことが原因でトラブルになったというケースも珍しくありません。保険が使えず安く済ませたい気持ちは横に置き、信頼できて治療をしてくれるであろう歯科医師を見つけるのが第一優先です。
格安インプラントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
4.インプラント治療にあるよくある悩み
インプラント治療の流れをざっくりですが解説してきました。ここからはインプラント治療に関する疑問や悩みについて、一問一答形式でお答えしていきます。
4-1.インプラント治療ができない人はいますか?
インプラント治療ができない人は残念ながらいます。以下の条件に当てはまる方は、歯科医院によっては断られる可能性があります。
- 重度の糖尿病を抱えている
- 重度の高血圧を抱えている
- 虚血性心疾患がある
- 喘息を持っている
- 妊娠している
- 骨粗鬆症と診断された
あくまで一例ではあるものの、上記の持病や状態の患者様に関してはインプラント治療をお断りする場合もあります。
ただし薬によって持病のコントロールができる、持病の主治医からインプラント治療を受けてもいいと許可が出た場合には、インプラント治療を実施することも。最終的には歯科医師の判断になりますが、インプラント治療を希望しているのであればまずは相談してみるといいでしょう。
4-2.インプラント治療にかかる費用はいくらぐらいですか?
インプラント治療は本数によって費用が変わります。インプラントの平均相場は一本あたり30~40万円です。本数が増えれば増えるほど治療費は高くなるので、慎重に検討することをおすすめします。
またインプラント治療の費用は、手術の回数や事前検査の段階で別途処置が必要と言われた場合にはプラスアルファの費用がかかります。保険が適用されないため、かかった治療費は全額自費負担なので注意が必要です。
なおオーバーデンチャーの場合、全ての歯を一本ずつ治療するわけではないので、本数に対しての価格がそれなりに低く設定されています。とは言え高額であることに変わりはないので、本当に受けるかどうかを含めて、まずは歯科医師に相談すると良いでしょう。
インプラント治療にかかる費用を詳しく知りたい人は、こちらの記事を参考にしてください。
4-3.インプラント治療にかかる時間(期間)はどのくらいですか?
先の費用の内容とやや重複しますが、治療の内容によってかかる時間は違います。2回法よりも1回法の方が治療終了までの時間は短いですし、事前検査後の処置の有無でも治療終了までの期間は異なります。特に何の異常もなく、2回法で手術を行った場合、目安として3ヶ月~半年を見ておくといいでしょう。
また、インプラント体と顎の骨の結合具合によっても治療期間が異なります。こればかりは個人差なので、治療を担当する歯科医師の判断次第としか言いようがありません。このように一概にどれぐらいの時間がかかるのかというのは、はっきり言うことができません。
参考として詳しく知りたい方は、こちらの記事をご一読ください。
4-4.インプラント手術のあと何日休めばいいですか?
インプラント手術後は、最低でも手術当日は仕事や学校を休み、安静に過ごすことが大切です。というのも、手術自体は約1~2時間程度で終わりますが、全身や口腔内の状態に一時的な不調が出る可能性があるからです。
また、術後は傷口の腫れや痛み、出血が数日から1週間ほど続くことがあるため、無理をせず2~3日程度はなるべく安静にすることで回復がスムーズになります。特に体力を要する仕事の場合は、事前に担当の歯科医師に相談し、個々の体調や仕事内容に応じた適切な休養期間についてアドバイスを受けるのがおすすめです。
4-5.抜歯してからインプラントを入れられるまで何ヶ月かかりますか?
抜歯後は傷口や骨の回復を待つ必要があるため、インプラントを埋入するまでには約3ヶ月~6ヶ月程度期間を空けなければなりません。
この治療法は「抜歯待時埋入法」といわれ、傷口や骨の回復を待つことで細菌感染のリスク抑制やインプラント埋入時の安定性を得られるメリットがあります。
なお、抜歯した後のインプラント治療には、抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時埋入法」も存在します。それぞれのメリットやデメリットを理解したうえで、治療法については歯科医師と相談して決めましょう。
4-6.術後にインプラントが外れたら再手術は無料ですか?
インプラントには、インプラントメーカーが設けたメーカー保証期間があります。概ね10年前後で、この期間内に脱落や破損があった場合、無料での再手術が可能です。なかなか10年以内に脱落や破損があるということはありませんが、万が一の場合非常に助かるシステムです。
ただしこの補償を受けるためには、定期メンテナンスを受けておく必要があります。そもそもこの保証期間は、メーカーが推奨している使い方をしていたにも関わらずインプラントに不備があった場合に、メーカーが保証する制度です。患者様がルールを守っていないにもかかわらず保証だけ適用して欲しいというのはできません。必ず定期メンテナンスを受けておきましょう。
4-7.メンテナンスは必須ですか?
インプラント治療後のメンテナンスは必須です。インプラントそのものは虫歯になることはありませんが、その代わり「インプラント歯周炎」という特有の病気にかかりやすくなります。この病気は、インプラントに付着した食べかすや歯垢に歯周病菌が集まり、そこからインプラントや自然歯を支えている歯茎に作用します。
インプラント歯周炎は患者様だけでは気づきにくく、歯科医師による定期メンテナンスによって発見されるケースがほとんど。インプラント歯周炎にかかるとインプラントが脱落してしまう可能性もあるので、必ず定期メンテナンスを受けるようにしてください。
メンテナンスの内容については、こちらの記事を参考にしてください。
5.インプラント治療は信頼できる歯科医院で
インプラント治療は非常に高度な外科手術です。そのため実績の少ない歯科医師に依頼すると、後でトラブルに見舞われる可能性も考えられます。信頼できる歯科医院での治療をおすすめします。
当院の院長高田は、学生時代からインプラントの勉強をし実務経験を積んできました。現在でも年間800本のインプラント治療の実績があり、海外の博士との学術交流を持っています。インプラント治療をお考えで信頼できる歯科医院をお探しの方は、ぜひ一度当院までお問い合わせください。
6.インプラント治療の流れを把握しておこう
インプラント治療は非常に長い期間行われます。自身の想定している期間で治療は終わりそうか、どの段階で何を行うのかをしっかり把握しておき、インプラント治療に臨むようにしましょう。
もちろん事前検査の段階で、予定外のことが起こる可能性も考えられます。インプラント治療を受ける際には余裕をもったスケジュール立てをしましょう。
関連記事:インプラント治療の流れが丸わかり!1回法や2回法、治療期間や費用もご紹介
※本コラムはあくまで一般的な情報として説明しております。高田歯科ではコラム内容で触れてはおりますがあえて対応していない内容もございますが、ご来院いただく患者様に合わせて最適なインプラント提案をさせていただいておりますので、まずは相談ください。
カテゴリー:インプラント&歯科ブログ 投稿日:2022年1月7日